許されない罪、救われる心
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30部分:第三話 歪んでいく心その八
第三話 歪んでいく心その八
「まだ早いとかって思ってたし」
「中学生じゃね。どうしてもね」
「そうよね」
「だからよ。それで」
如月はまた二人に答えた。
「友達みたいなものだったわ」
「友達ねえ」
「それじゃあ私達と同じ感じだったの?」
「うん、そうなの」
実際にそうだと答えた如月だった。
「付き合ってるって言えるものじゃなかったかも」
「そうだったの」
「やっぱり」
「中学校の時はよかったわよね」
こんなことも言う如月だった。
「皆一緒で楽しかったし」
「気楽だったしね」
「本当に」
「陸上部よかったよな」
実は四人は中学の時も同じ部活だったのだ。陸上部にいてそこで楽しい時間を過ごしていたのである。彼女達の青春はこの頃もであったのだ。
「あの時に戻れたらな」
「本当にね」
如月は長月のその言葉に頷いた。
「そう思うわ」
「今はあいつがいるし」
「むかつくわよね」
「あの頃は本当によかったけれど」
「一人いるだけでね」
四人は口々に言っていく。
「こんなに気分が違うなんてね」
「そう、だからね」
文月が歪みきった顔で話す。
「あいつがもういられないようにしようよ」
「いられないって?」
「だから。いられないようにまでしてやるのよ」
こう霜月に対しても言う。
「学校にね」
「学校になの」
「転校させるまで追い詰めてやるのよ」
その歪みはさらに続く。
「そしてやるのよ」
「ああ、それいいわね」
霜月もであった。歪んだ顔で頷いた。
「あいつがいなくなれば中学校の時みたいになるからね」
「だよな。あいつさえいなければな」
長月も二人に続いて頷く。
「うち等また楽しくやっていけるしな」
「そうよね。それじゃあもっともっとやってやろう」
如月も同じだった。やはりその顔は歪みきっている。しかも自分達ではその歪みには気付かない。何一つとして気付くことはなかった。
「あいつにね」
「明日からね」
「そうしてやろうよ」
「絶対にな」
三人は如月のその言葉に頷いた。そうしてであった。
「それで楽しい高校生活にするのよ」
「あいつを追い出してね」
「やってやろうぜ」
こんな話をして歪みきった顔で頷き合う。それがこの時の彼女達だった。
本人達は気付かない。そうして次の日の朝。
如月は学校に向かおうとする。その時だった。
「さて、と」
「ああ、また見るのね」
「うん」
明るい顔で母の言葉に頷く。彼女は制服に着替え身支度を整えた後で家のリビングに向かった。そしてそこで多くの賞状や写真を見るのだった。
見ればその賞状はどれも彼女の名前が書かれている。幼稚園の頃から中学校に至るまで絵や書道のコンクールでの入賞、それに陸上部でのものもある。それに彼女と家族や友人達が映っている写真もであった。
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