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許されない罪、救われる心

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175部分:第十六話 向かうものその六


第十六話 向かうものその六

「だからね。消毒しよう」
「ああ、消毒だ!」
「汚い奴等を消毒しろ!」
「絶対に許すな!」
「どす黒い奴等を消毒してやれ!」
 四人を囲んで糾弾していく。四人は恐怖のあまり足がすくんで動けない。そして言葉もだ。出せなくなってしまっていたのだ。
 そのモップが来た。岩清水からそれぞれの手に渡される。それでだった。
「じゃあ今から」
「消毒だ!」
「徹底的にやってやるからな!」
「覚悟しろ!」
「そ、そんな・・・・・・」
 足がすくんで動けない如月はだ。周りからの言葉と目に見えるその状況にだ。蒼白になってしまっている。当然他の三人も同じだ。
「このままだと」
「まずいよ、これ」
「どうしよう」
「あ、足がどうしても動かないけれど」
 四人共がたがた震えるだけである。どうしようもなくなっていた。
 しかし弥生がいてくれた。その彼女がだ。
 四人に対してだ。こう言うのだった。
「安心して」
「ここでも?」
「そうなの?」
「そう、安心して」
 こう四人に言うのである。
「そんなことさせないから」
「けれど」
「皆もう」
 四人はだ。震える声で彼女に言葉を返す。
「こんな状況だと」
「それでもよ」
 弥生の言葉は四人のそれとは正反対に毅然としていた。そうして言うのだった。
「言ったわよね、何度も」
「何度も?」
「そう、守るって」
 こう告げたのである。
「四人共ね」
「弥生・・・・・・」
「だから任せて」
 ここでもまた言う弥生だった。
「ここはね」
「有り難う・・・・・・」
 今の四人にはその心が何よりも嬉しかった。しかしである。
 岩清水はだ。その弥生に対してだ。こう言うのだった。
「関係ないじゃない」
「関係ないって?」
「そう、今村さんには関係ないじゃない」
 弥生の名字を言っての言葉だった。
「この四人とはね。だからどいて欲しいんだけれど」
「関係あるわ」
 弥生はその岩清水を見据えてぴしゃりとした口調で返した。
「私はね。関係あるわ」
「あるって?どうして?」
「友達だからよ」
 岩清水を見据えたまま。また言う彼女だった。
「だからよ。関係あるわ」
「友達って」
「如月も。他の娘達も」
 弥生はさらに言った。
「友達よ。関係なくはないわ」
「変なこと言うね。その四人が何をしたのか知ってるよね」
「ええ、知ってるわ」
「じゃあどうしてそんなことを言うのかな」
 岩清水は冷静そのものの表情で言う。だが、だった。弥生はその顔、とりわけ目の奥にだ。普通の者が持てないまでの残虐で邪なものがあるのを見た。それは最早人の域を超えているものだった。
 
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