許されない罪、救われる心
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17部分:第二話 部活からその九
第二話 部活からその九
「もうさ、そんな奴だったらさ」
「容赦する必要ないんじゃないの?」
二人はこう如月と長月に対して提案してきた。
「それならね」
「どう?」
「ああ、そうだよな」
長月が先に頷いた。
「あいつがそんなことするんならな」
「如月はどう?」
「どう考えてるの?」
如月はもう怒りで弥生の言葉と彼女にした約束を忘れてしまっていた。彼女もまた神無が部長に告げ口したと考えたからである。
「徹底的にやってやらない?」
「こうなったら」
「そうね」
そしてだった。目を怒らせて頷いたのだった。
「それだったら徹底的にね」
「向こうがその気ならね」
「遠慮することないし」
「ああ、そんな奴だったらな」
二人に長月も続いた。
「もう何でもやってやろうぜ」
「それでどうするの?」
「何してやる?」
二人は早速何をするかを長月に問うた。
「もう無視だけじゃなくて色々としない?」
「効果のあるやつね」
「それだったらよ」
そしてだ。長月は言うのだった。
「あいつの机に花瓶置いてやるとかな」
「あっ、それいいね」
「かなり効くよね」
文月と霜月は長月のその提案に笑顔で応えた。
「それじゃあそれやってやる?」
「朝早くか放課後遅くに教室に行ってね」
「それなら私お花と花瓶用意するから」
如月は自分から言った。三人の話を聞いているうちに気が乗ってきたのである。
「それでどうかしら」
「ああ、それじゃあ私達もね」
「一緒にね」
「やってやろうぜ。ただしな」
長月は笑いながら話してきた。
「これで終わりじゃないからな」
「そうよね。花瓶だけじゃなくてね」
「もっとやってやろうね」
「色々とな」
彼女達は楽しそうに話す。しかし気付いてはいなかった。その顔が醜く歪もうとしていることにだ。鏡があっても気付かないことだった。
「じゃあ部活が終わったら教室に戻って」
「それでお花と花瓶用意してね」
「あいつの机の上に置いて」
「明日の朝が楽しみよね」
醜くなっていたのは如月も同じだった。その笑みは彼女が今まで浮かべたことのない、そうした見るに値しないまでに醜いものだった。
「明日がね」
「そうね、どんな顔するかしら」
「楽しみよね」
「まずはそれからだからな」
長月も醜い笑顔で言った。どす黒くなり禍々しくねじれたその笑顔でだ。
「花瓶の次は何する?」
「そうね。ロッカーとか下駄箱とかね」
「色々あるわね」
そんな話をしながら部活の練習をしていた。そして次の日の朝だった。
朝教室でだ。神無は自分の席の前で愕然となっていた。机の上に花瓶が置かれていたのである。そしてその花瓶には白い花がさしてあった。
「おい、誰だよこんなことしたの」
「タチ悪いだろ」
「ねえ」
クラスの面々もそれを見てひそひそと話す。
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