許されない罪、救われる心
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16部分:第二話 部活からその八
第二話 部活からその八
「もうね。こんなこと」
「いじめとかしてるつもりじゃなかったんだよ」
「私も。ただ嫌な奴だから」
「それで無視しただけなのに」
「それがいじめなんだって」
そうだったとだ。また三人に話した。
「だから。もう止めようね」
「そうだな。あいつに声かけような」
「そうしよう、仲直りというかね」
「無視したりするの。止めようね」
四人で言い合った。そうしてだ。
ジャージに着替えてそのうえで部活に出る。しかしここで。
「あんた達ね」
「えっ、部長」
「何かあったんですか?」
「何かも何もないわよ。あのね」
怒った顔でだ。四人に対して言ってきたのだ。普段は温厚で曲がったことはしない人格者として知られる部長がだ。怒ってきたのだ。
「椎葉さんに何も教えてないの?」
「何もって」
「一体」
「どうしたんですか?」
「ラクロス部とかラクロスのこと何も教えてないのよね」
こうだ。四人に対して言ってきたのである。
「何してるのよ」
「ええと、何って」
「転校してきてすぐですし」
「ですから」
「そういう問題じゃないでしょ。同じクラスで同じ部だったら何でも細かく教える」
部長はあくまで常識から話していた。しかしであった。
それは今の四人にはだ。素直にそう聞こえないものだった。
そうしてだ。唖然としながら部長の話を聞いていた。
「それが友達でしょ。クラスメイトじゃないの?」
「す、すいません」
「つい」
「ついじゃないわよ」
温厚な部長だがこうしたことには厳しい。だからこそ怒っているのだ。
「いい?ちゃんと教えてあげるのよ」
「はあ」
「クラスメイトで同じ部活の人なら余計に大切にする。ラクロスはね」
ここからは部長の持論だった。
「一人でするものじゃないでしょ」
「はい」
「その通りです」
「皆でするものよ。しかもグラウンドに出ている人間だけじゃなくて」
ここからも部長の持論だった。
「全員でするものよ。控え選手も応援も全部でね」
それでなのだった。四人が神無に対して何も教えていなかったことを怒ったのだ。だが部長は四人が彼女を無視していたことは知らなかった。
しかしだ。四人はそれは知っていた。当時者だからこそだ。それが大きな、かつ絶対の違いとなって大きな歪みとなってしまうのだった。
「そうでしょ。わかったらラクロスのこともうちの部活のことも詳しく教えてあげて。あの娘がうちの部活のマネージャーだから余計にね」
ここまで言って四人から離れた。しかしだった。
叱られた四人はだ。仲直りやいじめへの嫌悪とかいった感情は消し飛んでしまっていた。そしてだ。如月が唇を滲ませて言った。
「まさか」
「そうよね、あいつよね」
「あいつちくったのよ」
文月と霜月がすぐに如月のその言葉に続いた。
「絶対ね」
「そうよ、間違いないわ」
「そうじゃないと部長だって絶対に言わないし」
「そうよね」
部長が気付いたとは考えないのだった。今の彼女達は周りが見えなくなっていた。そしてその為にそう考えられなかったのである。
「折角仲直りしてやろうって思ったのに」
「声かけてやろうと思ったのに」
二人は口を歪ませて言った。
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