許されない罪、救われる心
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130部分:第十二話 家族その三
第十二話 家族その三
その彼女にだ。弥生がまた声をかけてきた。
「ねえ」
「うん」
「子供の頃からよくこうしてお風呂に入ったわよね」
「そうよね」
「覚えてるわよね、このこと」
「忘れる筈がないわ」
如月はまた彼女に答えた。
「だって」
「そうよね。ずっとこうしてきたから」
「ええ。いつもこうして一緒にお風呂に入って」
「いたわよね。幼稚園の時から」
「それで今も」
その今もだった。こうしていることを実感していた。
「こうしてね」
「そうよ。温かいでしょ」
「ええ」
「お風呂も一人で入るよりね」
「二人で」
「そう、その方が温かいから」
だからだというのだった。
「こうしてね」
「そうね。それじゃあ」
「ええ、それじゃあ」
「お風呂からあがったら」
如月はそこからのことをもう考えていた。それで言ったのであった。
「今度は」
「寝ましょう」
「ええ」
「温かい場所から温かい場所にね」
弥生はその温かいという言葉を強調して言った。如月にその温かさを実感してもらう為にだ。彼女にあえて言ったのである。その心に届くように。
「行こうね」
「うん・・・・・・」
如月は弥生のその言葉にこくりと頷いた。そうしてだった。
二人で風呂を出て身体を拭き合って服を着て。それからベッドに入る。
二人横に並んで顔を見合わせてベッドの中にいてだ。如月は目の前に、すぐ傍にいる弥生の顔を見ながらそのうえで彼女に問うた。
「ねえ」
「何?」
「退院する日、わかってたの」
「聞いたの」
そうだったというのだった。
「病院の人にね」
「そうしてくれたの」
「だから待ってたのよ」
「ずっと」
「少しね」
この辺りは誤魔化した弥生だった。如月にもこのことはわかった。
「少しだけね」
「そうなの」
如月はあえてそういうことにした。
「有り難う」
「だから御礼はいいのよ」
弥生はその如月に微笑んで返した。
「それはね」
「うん、じゃあ」
「寝よう」
その微笑みをそのままにして如月に言った。
「ゆっくりとね」
「そうね。それじゃあ」
「こうするのも久し振りだけれど」
「一緒に寝るのも。幼稚園の時からだったわよね」
「そうよね。私達本当の姉妹みたいでね」
「けれど姉妹じゃなくて」
如月が言うとだった。弥生が返してきた。
「友達でね」
「うん、友達よね私達」
心で確かめると。余計に嬉しく感じたのだった。
「本当に」
「もう何があっても傍にいるから」
こう言ってであった。
如月にだ。こうも尋ねてきた。
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