許されない罪、救われる心
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131部分:第十二話 家族その四
第十二話 家族その四
「それでだけれど」
「何?」
「わかったわよね。これで」
今度の言葉はこうしたものだった。
「いじめが」
「・・・・・・ええ」
如月は弥生のその言葉にこくりと頷いた。そしてだった。
こう彼女に返した。
「本当に」
「前にいじめられていたって言っていたの。覚えてる?」
「一学期の時だったわね」
「その時。辛かったわよね」
このことを弥生に尋ね返した。
「そうよね」
「ええ、それは」
その時のことを思い出しながらの返答である。
「とても」
「それでも。如月は」
「自分が。それを」
「いじめらるのがどんなに辛いかわかってたのに」
「けれどしてしまって」
「あの時私は思ったの」
その如月の目を見ながらの言葉だった。今の彼女の目にはもう強い光はない。醜いものも反発するものもだ。そこにはなかった。
そしてだ。弥生は言った。
「責められてる時。自業自得だって」
「いじめは悪いことだから」
「だからね。最初はそう思っていたわ」
「やっぱり。そうなのね」
「ただ」
「ただ?」
「今は違うわ」
そうだというのである。
「今はね」
「そうなの」
「ええ、違うわ」
こう話してであった。
「それはね。あまりにも酷かったから」
「それでなの」
「あれも。いじめだから」
岩清水のその糾弾がだというのである。
「それもかなり酷い」
「いじめ・・・・・・」
「いじめという言葉じゃ済まないかも知れない」
そこまでだというのだった。
「それどころか。さらに酷いものだったから」
「・・・・・・・・・」
「最初は絶交したままのつもりだったけれど如月を見捨てられなかったの」
そうだったと。彼女に話した。
「それでだったの」
「そうだったの」
「けれど。わかったわよね」
また如月に尋ねた。
「もうこれで」
「ええ」
弥生のその言葉にだ。こくりと頷いた。
「わかった・・・・・・」
「誰よりもわかったわよね」
もう一度尋ねる弥生だった。念押しの様にだ。
「そうよね」」
「うん・・・・・・」
また涙を流してだ。そのうえで頷いた。
「いじめられるのがどんなに辛いかわかってたのに私・・・・・・」
「それがわかったのは私もね」
「弥生も?」
「わかったわ。だって」
如月のそのやつれた顔を見る。そして手もだ。
彼女が知っている如月の手ではなかった。何処までも痩せたものだった。
その手を見てだ。彼女はまた言った。
「こんなになって。死にたいとか思ったわよね」
「ええ」
弥生の今の言葉にも力なく頷いた。
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