許されない罪、救われる心
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124部分:第十一話 迎えその十三
第十一話 迎えその十三
「何があっても」
「じゃあね」
葉月は微笑んだ。その顔で弥生に話した。
「行って来て」
「有り難う」
こうして弥生は如月の家に通うのだった。その間岩清水達は病院、そして他の三人の家の前に同志達を集めデモを繰り返していた。
三人の家も荒らされだ。家族の絆も壊れ三人共自分の部屋でもう動けなくなっていた。
「も、もう許して・・・・・・」
「何でこんなことに・・・・・・」
「死にたい・・・・・・」
こう言ってベッドの傍で蹲るだけだった。碌に食べられなくなりだ。がたがたと震えてそのうえで自分の部屋で閉じ篭るだけになっていた。
如月の傷は次第に癒えてきた。その中でだ。
師走は水無に対してあることを話した。
「もうそろそろだね」
「そろそろですか」
「ええ、そろそろ退院の時だね」
そうだというのである。
「だからどうかな、もう」
「それは難しいですね」
「難しいかい」
「はい、難しいです」
そうだと言う水無だった。
「今退院してもあの娘はまた糾弾されます」
「責められるか」
「あれだけ傷ついてますし。それでこれ以上の目に遭ったら」
「危ないか」
「死んでもおかしくないです」
精神的にというのだ。
「それか壊れるか」
「そうだね。今のままではね」
「ですからまだ」
退院には賛成できないというのだった。
「あの娘は病院に」
「じゃあ院長には僕から言っておこうか」
「そうして下さい。あの娘はまだ病院の中にいるべきです」
「院長としてはもう出したいんだ」
「もうですか」
「うん、もうね」
そうだというのである。
「理由はね」
「邪魔だからですね」
水無はすぐに察して言葉を返した。
「だからですか」
「糾弾の団体はいつも来るし」
その岩清水達である。
「そのせいでね」
「けれどあの娘はまだ」
「退院させられないね」
「はい」
その通りだという水無だった。
「もう少し。入院してもらわないと」
「僕もそう思うよ。じゃあね」
「院長先生にお話しますか?」
「するよ。じゃあね」
「御願いします」
こうしてだった。二人は何とか如月を入院させた。それが彼女の為になると思っているからだ。それで如月は病院に止まり続けた。
しかし二人の他には誰も近付きはしない。陰口を聞くばかりだった。
そのことが辛くなった時もある。その時だった。
「あの」
「あの?」
ベッドの中に半身を起こしてそこから枕元に座っている水無に対して問うのだった。
「看護士さんも先生も」
「ええ」
「こうして私のお世話をしていて」
「それがどうかしたの?」
「何か言われませんか?」
こう彼女に問うたのだった。
「私、評判悪いですけれど」
「そんなことはないわよ」
水無は微笑んで嘘を言った。彼女の為にだ。
「全然ね」
「本当ですか?」
「本当よ」
また嘘を言ってみせた。
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