許されない罪、救われる心
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123部分:第十一話 迎えその十二
第十一話 迎えその十二
そうしてだ。二人はテレビを観ながら話す。
「タモリも息が長いですね」
「そうよね、本当にね」
「もう六十超えてるんじゃ」
「そうかもね。長い人だから」
そんな話をしながらだった。テレビを観たのだった。
テレビを観るのも久し振りだった。それを楽しむのもだ。楽しみそのうえで時間を過ごした。しかしまだ心は暗いままであり続けた、
そしてだ。その間ずっとだ。誰も来なかった。
そのことは如月も気にしていた。しかしである。
弥生はだ。学校で葉月に話した。
「あの娘の家に行ってきたわ」
「どうだった?」
「酷かったわ」
首を横に振っての言葉だった。
「とてもね」
「そんなになんだ」
「もう滅茶苦茶に荒らされて」
このことも話す。
「それに」
「それに?」
「写真、如月がずっと大事にしていた写真もアルバムも全部引き裂かれてて」
「それまさか」
「ええ、そうよ」
その通りだというのだった。
「彼等が」
「そうだったんだ」
「また、お家に行って来るから」
弥生は思いがある顔で述べた。
「今日にでも」
「行くんだ」
「時間があれば行ってるから、最近」
そうしているというのだ。最近はだ。
「その写真とかアルバムとか」
「なおしてるんだ」
「絶交って言ったわ。それでも」
「友達なんだね」
「如月は友達よ」
神無に話したことを葉月にも話した。
「私にとって。かけがえのない娘なのよ」
「また。そう思えるようになったんだね」
「やっぱり、放っておけない」
目を顰めさせての言葉ではあった。
「あの娘があのまま。酷いことになり続けるのは見ていられない」
「城崎さんの自業自得でも」
「最初はそう思っていたわ」
また葉月に話した。
「けれど今は」
「違うんだね」
「ええ。もうあのまま放っていられないから」
だからだというのだった。
「また行って来るわ」
「わかったよ。それじゃあね」
「反対しないのね」
「僕が反対しても行くよね」
その弥生にこう告げたのだった。
「そうするよね、やっぱり」
「ええ」
その通りだった。今の弥生はだ。そう考えていた。迷いもなかった。
「どうしても」
「だからだよ。反対はしないよ」
「有り難う」
「僕はまだ迷ってる」
葉月は俯き気味になり考える顔で述べた。
「まだね。どうするかね」
「そうなのね」
「けれど君はもう迷わないんだね」
「ええ、もうね」
その通りだと話した。
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