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許されない罪、救われる心

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102部分:第十話 襲撃の後でその一


第十話 襲撃の後でその一

                 第十話  襲撃の後で
 神無は家でだ。大柄で精悍な顔の青年に声をかけられていた。彼女の兄である椎葉極月だ。大学では柔道部のエースである。
 その彼がだ。強張った顔で妹に問うていた。その手には携帯がある。
「おい、これは何だ」
「えっ、これって・・・・・・」
「これ御前だな」
 彼女がトイレでいじめられているその現場の映像だ。無論岩清水が流したものである。それを兄も見てしまったのであった。
「御前で間違いないな」
「それは・・・・・・」
「それでこいつ等か」 
 極月は今度は怒りに満ちた顔になっていた。
「こいつ等が御前をか」
「それは。その」
「言わなくてもいい」
 妹にこれ以上は言わせなかった。
「この連中の名前や住所はもう書いてある。何とでもなるさ」
「兄さん・・・・・・」
「この連中絶対に許さないからな」
 声もまた同じだった。怒りに満ちていた。
「何があってもな」
「・・・・・・・・・」
 彼女の兄も知ったのだった。そしてだ。四人は相変わらず学校で糾弾を受け続けていた。家に帰ればそこにデモ隊がいる。そうして連日連夜責められ続けていた。
 その学校でだ。今日も岩清水が叫んでいた。
「皆、悪はまだ残っている」
「そうね」
「まだ学校に来てるのかよ」
「登校拒否になれよ!」
「それでも引き摺り出してここまで連れて来てあげるわよ!」
 皆四人を笑顔で友達と言っていた。しかし今ではだ。四人を憎しみと怒りに満ちた顔で見据えてだ。机を蹴ったりものを投げ付けてきたりしながらそのうえで責める。四人は自分達の机に座ってうずくまるだけだがそれでも容赦されることはなかった。
 そしてだ。岩清水は言うのだった。
「皆、もう悪は学校に来なくてもね」
「そうだよね」
「糾弾できるし」
「さっさと学校に来なくなればいいのに」
「来るなってのよ」
「じゃあこうしよう」
 ここでまた言うのであった。そしてだ。
 如月の机の目の前、彼女の目の前にだ。わざと花瓶を置いてみせたのだった。その落書きとゴミに満ちた机の上にだ。
「もう悪は消えたよ」
「ああ、いなくなったよな」
「この学校からね」
「二度とね」
「わからないようだったらわからせてあげればいいし」
 今度の言葉はこうしたものだった。
「そうすればいいしね」
「わからせる?」
「どうやって?」
「どうやってするの?」
「まずは席を立ってもらって」
 彼がこう言うとだった。男子のうちで最も身体が大きいのが出て来てだ。いきなり如月達を次々に横から蹴飛ばした。そのうえで席から出させる。四人は机や椅子ごと吹き飛びその場に叩き付けられる。だがもう何も抵抗せず何も言うことができなくなっていた。花瓶は岩清水が事前に取っていた。何が起こるのかを待っていた様にだ。
 岩清水はその有様を平然と見ながらだ。皆に四人がかつて神無をいじめていた場面を携帯で見せながらそのうえで言うのだった。
「それでね。こうして」
「机と椅子は元に戻すの」
「そうなの」
「うん、こうしてね」 
 自分から四人の机や椅子を元に戻してであった。そして。
 そこに接着剤を塗っていく。そうするのだった。
「こうしてね」
「ああ、それ椎葉にやってたしな」
「やったことは自分も受けないとね」
「じゃあそこに座らせるか」
「そうよね」
 その接着剤の場面を携帯にも流す。それで皆の怒りを増幅させる。そのうえでやっていきであった。
 
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