勇者番長ダイバンチョウ
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第26話 激戦開幕!喧嘩相手は未来からやってきた その2
前書き
最近リアルで忙しく中々思うように投稿できない。そんな現状に悩みつつも更新しています。
それは、はやてが轟宅で食事をして泡を吹いてぶっ倒れた時よりほんの少しだけ遡る事になる。
番と同じタイミングで訪れた細身の少年が身内と間違えて別の少女を連れて行ってしまったところから今回は見ていく事になる。
「ほらほら、こっちこっち! 早く行こうよ力君!」
「分かった分かった! だからそんなに引っ張らないで下さいよ美智さん!」
細身の少年こと【南 力】は先ほどとは一転して美智に腕を引っ張られて先導される感じになっていた。
「ねぇねぇ、歩きながらでも良いからさぁ、教えてよ。力君の事色々とさぁ」
「そりゃ良いっすけど、良いんすか? 連れの人放っておいて?」
「良いの良いの! 番ったら、今日は私結構気合入れてお洒落してきたのに全く気付かない上に人違いするんだもん。私だって怒る時は怒るんだもん」
力の心配を他所に美智は不機嫌そうに頬を膨らませていた。
尚、人違いの事については美智が早めに暴露したのと力が案外物分かりの良い少年だったお陰ですんなりと打ち解けられたそうだ。
「まぁまぁ、美智ちゃん落ち着いて落ち着いて、ね!」
「しょうがないなぁ。その代わり、今日は色々と付き合ってね。力君」
(マジっすか? 俺元の時代に帰らないといけないんだけどなぁ)
頭を抱えたい気持ちをぐっと抑えながらも、力は仕方なく美智の憂さ晴らしに付き合う事となった。
「まずは買い物でしょ。それからお昼ご飯食べて映画見て、後ゲームセンターにも行って・・・う~ん、今日は忙しくて目が回っちゃうねぇ」
「いやはや、全く以て仰る通りで」
「さ、早く行くよ力君。時間は貴重なんだから急がないとね」
はやてとはまた違った性格を持つ美智に力はすっかりきりきり舞いだった。
何時もはやての猛攻撃を食らっている力とは言え、過去の時代を生きる美智のアグレッシブさには面を食らってしまっている。
そんな力の心情など美智自身には何処吹く風なようで、力の手を引きながら目的地へと急ぐ。
「力君はこの時代の食べ物とかに興味ある?」
「え? まぁ、あるっちゃぁあるかな?」
「よろしい、それでは特別に私が美味しいお店に案内してあげちゃう!」
美智に引っ張られる形で力が訪れたのは、レストランでもなく食堂でもなく、喫茶店であった。
「き、喫茶店・・・」
喫茶店を前にして思わず力は身構えた。だが、今ここは20年前。流石に過去にまであいつらが襲いに来る事はないだろう。
「どうしたの力君?」
「いや、どうも喫茶店にはあんま良い思いでがなくてさぁ」
「ふぅん、まぁしょうがないよね。力君あんまり強そうに見えないし」
「え?」
「だって、力君凄く細いじゃない。そんなガリガリな体じゃ舐められちゃうよ。男だったらもっと美味しい物食べて大きくならなきゃね」
「いや、一応俺ちゃんと飯食ってるんだよ。金欠になったら野鼠とか野草とか食べたりするんだけどさ」
もし、美智が普通の女子であれば、先の力の金欠時の食生活を聞けば忽ち力を不快な目で見た事だろう。
だが、今力の隣に居るのは普段から番の食生活を目の当たりにしてきた豪傑と名高い美智。
その程度の事で驚く事など美智では有り得ない事。
「へぇ、力君も野鼠や野草を食べるんだ。何だか番と気が合いそうだね」
「へ? 美智ちゃん、もしかして番って人も野鼠とか野草とか食べてるの?」
「うん。でもね、番の家だと野鼠でもご馳走なんだって。だから普段はパンの耳とキャベツの芯ばっかり食べてるんだよ」
(お、俺より悲惨な食生活してる人が居たんだ・・・ちょっぴり嬉しいような同情するべきなのか)
他にも積もる話はあるだろうが、何はともあれ折角過去の来たのだし、どうせだから過去の料理を味わってみよう。
そう、心持を切り替えつつ、美智のお墨付きとされる喫茶店の中へと入った。
「あぁっ!!」
「おぉっ!!」
入った途端、店内に居た不良達の視線が力と美智へと向けられる。
相当凄まじい目力だった。
力の居た時代ではまずお目に掛かれない程の目力が注がれる。
「う~ん、流石過去の不良少年たち。目力がはんぱない」
「未来だとあれくらいの目力とか出せないの?」
「いやいや、ないない。未来はもっとマイルドな目力だから」
美智の問いをまっこから否定する力。すると、店内の不良達が続々と立ち上がり、二人に向かってきた。
「おうおう、真昼間から見せつけてくれるじゃねぇかよぉ」
「俺らに対する当てつけかぁ? おぅゴラァ!」
「てめぇみてぇなもやしが彼女連れとか生意気にも程があるぞボケがぁ!」
力は、余りの光景に驚きで一杯だった。
仮に此処が力の居た時代であれば、まず自分に喧嘩を売るなんて有り得ない。
それは、力に喧嘩を売る事が何を意味しているのか分かっているからだ。
だが、此処は過去の時代。流石の力の悪名も過去の時代では無名も同然の事だった。
何よりも、自分の事がもやしと言われた事に、力は改めて自分の腕を見入る。
「なぁ、俺ってそんなにやせ細って見える?」
「うん、とっても心配になっちゃう位に痩せて見えるよ」
「元の時代に戻ったらもうちっと肉を食べるようにしよっと」
「無視してんじゃねぇよこのもやしがぁぁっ!!」
明らかに目の前の不良など眼中にないとばかりに無視していた力に対し、不良の一人が拳を振り上げて来た。
けれどまぁ、力にしてみれば不良の渾身の一撃など蚊が刺した程度であろうし、何より動きが遅すぎて逆に当たるのが難しいと言った感想を感じていた。
「はいはい、悪いけど俺無暗に喧嘩するほど血の気が多い訳じゃないから」
そう言って不良の拳を軽く逸らしてそのまま不良達の間を歩き、近くのテーブルへと腰かける。
「ん? 何だこのテーブル!? 真ん中にゲーム画面がある」
「え? 普通喫茶店ってそうじゃないの?」
「マジっすか!? しかもこれスペースイノベーダーじゃん! 超懐かしい!」
「懐かしい? それ出たのつい最近だけど?」
首を傾げる美智を他所に力は迷うことなく小銭を投入しゲームをやり始める。
当然、不良達はガン無視のままで。
「こ、このもやし野郎! もう勘弁できねぇ!」
「待て! こいつ、すげぇゲームテクだぞ!」
「本当だ! しかも裏テクと噂されてるあの名古屋打ちやレインボー打ちを軽々とやってやがる!」
さっきまでの沸点は何処へやら。不良達もすっかり力のゲームプレイに夢中になっていた。
そんな視線など気にする事もなく力は楽々画面内のエイリアン達を蹴散らしていく。
「凄いね力君。結構やりこんでたの?」
「まぁ、似た様な事を何時もやってるからさ。エイリアン退治ならお手の物ってね」
現実でエイリアン退治を生業(?)としている力にとって空想のエイリアン退治など鼻歌交じりに行えて当然の所業と言えた。
不良達や美智の見ている画面で次々と屍を晒していくエイリアン軍。何だか逆にエイリアン軍の方が可哀そうに思えてしまうのはプレイしているのが力だからなのだろうか。
もしそうだったら今回は挑んだ相手が悪かったと諦めて貰うしかない。
入口の扉が開かれた。また誰かが来店したのだろう。
不良達の視線が来店者へと向けられる。
「おぅ、真昼間から色気がねぇなぁクソガキ共。どうせサボるんだったら女の5人や6人位侍らせておけやぁ」
間延びしただらけた感じの声でそんな事を言ってきたのはこれまたすっかり年期の入ったコートを羽織った中年の男性だった。
瞼は半分降りてて少し眠そうな感じをしている。だが、そんな中年男性を見た不良達の態度がガラリと変化をしたのはこの時だった。
「あ、駒木さん!」
「「ちゃっす! 駒木さん」」
「止せ止せ。俺は不良じゃねぇんだ。それよりも、腹減ったから何か食わせて・・・うん?」
ふと、駒木の視線が力に向けられる。力もまた、駒木の視線に気づき振り向く。そして驚きの余り椅子から転げ落ちだす。
「げげぇっ! さ、佐津田のおっちゃん!? 随分老けたなぁ」
「誰だよ佐津田って? にしても・・・お前ここらへんじゃ見ねぇ顔だな。他所から来た旅行者か?」
顎に手を当てながら力の事を眺める駒木。一方で、力にとっては元居た時代で散々自分の事を追い掛け回した刑事にどことなく似ているこの男に一抹の不安を抱いていた。
「駒木さん、こいつの事知ってるんすか?」
「いや、この町に居るガキともは大体把握しているんだが、こいつみたいなハイカラな恰好した奴なんざ初めて見るぞ」
(ハイカラって・・・これでも結構地味な色合いなんだけどなぁ)
普段から着こなしている力の私服も、20年も過去だと案外ハイカラな恰好に見えてしまうようだ。
「まぁ良い。それより飯だ飯。腹が減っちゃ高得点だせねぇからな」
そう言って駒木の座ったテーブルには【デグダグ】とタイトルが出ているアクションゲームが置かれていた。
その筐体に駒木は迷うことなく小銭を投入し、プレイを始める。
「おぉい! オム焼きそばとウーロン茶。焼きそばは大盛りで頼むな」
プレイしながら厨房に居るであろう店主に向かい注文を叫ぶ。すると、厨房の方から「あいよっ」と言う声が響く。
なるほど、過去の喫茶店ってのはゲームをしながら料理を食べる場所だったんだ。
イノベーダーをプレイしながら力は確信した。
その直後に盛大に唸りを挙げる力の腹の虫。
「力君、もしかしてお腹空いてたの?」
「なんだ小僧。すきっ腹でやってたって面白くねぇだろう。おい、追加でこのハイカラな兄ちゃんにもオム焼きそばを特盛で頼まぁ。勘定は俺持ちで良いからよ」
再度注文し、そして再び店主の返事が響く。
「い、良いんすか?」
「遠慮すんな。大体お前ガキの癖になんて細い体してんだ! 男ならガッツリ食ってガッツリ鍛えてもっとでかくなれ! でねぇと女にもてねぇぞ」
「いや、俺別にもてなくて良いんで。寧ろもてなくて良いです」
「馬鹿野郎! 何枯れ腐った事抜かしてんだ!」
突如として凄い剣幕で怒られてしまった力。その後も駒木の説教は続いた。
「良いか小僧。世の中にはなぁ【男がスケベでなければ世に栄なし】とまで言われてるんだぞ! まぁ、まだ学生の身分で〇〇〇〇やれとは言わん。せいぜいチュー位に留めておけ。それ以上の事をやりたいんだったら卒業してからだ。卒業したら思う存分〇〇〇〇だろうが子作りだろうが好きなだけやれ。ただし責任をとれる範囲でだぞ!」
「ちょちょちょちょーーー! おっさん、それ以上はストップゥゥゥ!! それ以上やばい発言が続くとバンされちゃうから! どっかのお偉いさんに物凄い怒られちゃうから!」
力の半ばメタい発言が飛び出す。良い子と良い作者の皆さまは世の中のルール及び小説界のルールはきちんと守りましょう。
「お待ちどぉ。ウーロン茶にオム焼きそば大盛りと特盛りね」
「ま、積もる話は飯の後でだ。とにかく今は食え。そんで食った分だけでかくなれ」
「は、はぁ・・・」
流石の力も見ず知らずの人間からおごられると言う行為には些か抵抗があるのか少しだけ申し訳ない気持ちを持ちつつ出された料理を食べてみる。
その瞬間、口の中を中心としてそれに連なるように刺激が喉から内臓、上へは脳の隅々にまで衝撃が電流となって駆け巡った。
「美味ぇ! これ凄ぇ美味ぇ!」
「おやおや、若いのに世辞が上手いじゃないか。そう言って貰えると作ったこっちも嬉しいよ」
「ガハハッ! ガキの癖に口が達者じゃねぇか。ま、お前の言う通り此処の飯は美味いから良く仕事サボって来るんだけどな」
「サボって? そう言えば駒木さんは仕事何やってんすか?」
「ん、俺か? 見ての通り刑事だ。最も4課所属の少年課だけどな」
焼きそばを啜りながら力はふと考えた。
確か、元の時代で何時も自分を追い掛け回していた佐津田刑事は捜査1課所属のベテラン刑事だった筈。
まぁ、自分の事を捕まえる事に躍起になりまくったせいで最近では1課内でも若干肩身が狭い思いをしていると言うのを風の噂で聞いたのを思い出す。
しかし、だからと言って同情して捕まる気など毛頭ない。
仮にカツ丼を奢ってくれるのであれば考えても良いがーーー
「駒木さんがこの町に居るお陰で俺らは大助かりしてんだぜ」
「そうそう、気軽に悩みを聞いてくれたり、時には飯とかも奢ってくれるしさ」
「良いな~~。俺んとこの刑事なんて俺と目が会った瞬間「逮捕だぁぁ!」って言って追い掛け回して来るんだからさぁ。しかも飯も奢ってくんないし」
「んだそりゃ。禄でもねぇ刑事だな。刑事の風上にも置けねぇ」
「って、そう言う駒木さんだって人の事言えた義理じゃないでしょうが。今回の支払いだって、どうせ署の経費とかで落とすつもりなんでしょ?」
「まぁな。まぁそのせいで最近上の連中が何かとうっせぇが俺はまぁ気にしてないがな」
嫌、其処は気にした方が良いのでは?
自分のとこに居る刑事とはあまりにも違いすぎるそれに力も内心ツッコミを入れざるを得なかった。
「って、そんな事したら最悪クビにされちゃんじゃないの? 駒木のおっちゃん」
「その辺は心配いらねぇよもやし。何せこの駒木さんにかかりゃ強盗犯だろうが殺人犯だろうが海外マフィアだろうが100%検挙しちまう凄腕刑事だからな」
「ついこないだなんて裏取引してる暴力団数十人を一人で豚箱にぶち込んだしな」
「その前なんて武装した銀行強盗相手に素手で逮捕とかしちまうんだ。駒木さんをクビになんかしたらこの町は犯罪都市になっちまうよ」
さりげなくまた「もやし」と言われたが、それが気にならない程駒木の武勇伝が凄まじく思えた。
仮な話、この刑事を某国のテロリストの居る拠点に向かわせれば即日でテロリストが全員豚箱送りにされそう。
等と、食事と雑談で店内が賑やかになっていた丁度その時、再度店内入口が開かれる。
現れたのは年若い青年であった。
配属間もないのだろうか皺一つない真新しい制服を身に纏った初々しさが其処から感じ取れた。
「ここに居たんですか、探しましたよ駒木さん」
「おぉ、やっと来たか。お前も飯食うか?」
「ーーーーー!!!」
青年に対し、駒木はこちらに手招きする。力や美智もその青年の方を見る。
そして、力は驚愕した。
「と・・・父さん!?」
其処に居たのは、力が幼い頃に死別した筈の父親が其処にいた。
記憶の中の姿とは違い若々しい姿ではあるが、だとしても力には分かった。
今、目の前に立っているのは紛れもなく、若い頃の力の父親なのだと。
その3へつづく
後書き
ダグオンAs本編だと既に故人となっている力君のパパンの登場でした。
過去ネタやるんだからやってみたかったのでやっちゃいました。
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