デジモンアドベンチャー Miracle Light
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
ディアボロモンの逆襲 中編
前書き
オメガモンVSディアボロモン
お台場中学のパソコン室に1人残った光子郎は、仲間達から次々送られてくるクラモンの処理に追われていた。
クラモンだから送信出来るけれど、進化してデータの容量が増えたらまずい事になる。
なるべく攻撃を与えないよう、慎重に行動していかねばならない。
現在は東京湾の上空写真を映し出している画面にテントモンが映ったウィンドウが現れた。
ネット内の動向の方を頼んでいる光子郎のパートナーデジモンのテントモンからのメッセージだ。
「光子郎はん、クラモンの奴まだまだそっちに出て行きよりまっせ!!」
「……太一さん達は、既にネット内に侵入してます。」
テントモンに答えると言うより、自分の考えを纏めるように光子郎は呟く。
「敵の目的は、オメガモン、マグナモン、ラジエルモン、バンチョースティングモンのはず……そのうち1体のオメガモンが向かったのに…未だにクラモンを現実世界に送るなんて…」
オメガモン達への復讐がディアボロモンが復活した理由なのは間違いない。
だったら何故、クラモンの送信が止まらないのか?
敵の目的は、他にあると言うのだろうか……?
「……何故だ」
嫌な予感が、光子郎の頭にこびりついて離れようとしない。
しばらくして、芽心から連絡が来た。
「どうしました芽心さん。」
「す、すみません。メイちゃんがクラモンを攻撃しちゃったんです。」
「ええっ、クラモンを攻撃した!?」
携帯を耳と肩の間に挟み、両手はキーボードを叩きながら芽心からの報告に光子郎が叫ぶ。
電話の向こうの芽心が言うには、電車内で現れたクラモンを捕まえようと…もしかしたらメイクーモンの猫としての本能が電車内をわらわらと動くクラモンに刺激されたからかは分からないが、クラモンに攻撃を加えてしまったらしい。
現在メイクーモンはワームモンに説教されており、クラモンは芽心と賢が全部回収したのだが。
「すみませんでした。でもどうしてかクラモンは進化しなかったんです」
「……進化しない?」
クラモンが進化しなかった理由が分からない。
3年前の事件であれほどの進化速度と暴れっぷりを見せたクラモンが刺激を受けて進化しないことに。
しかし、光子郎に深く考えている暇は無かった。
テントモンから、再びメッセージが届いたのだ。
「光子郎はん、太一はん達もうすぐマザーに接触しはります!」
正直、何人か残ってもらえば良かったと軽く後悔した光子郎であった。
「うわあっ!!」
ネット内で、アグモンの間の抜けた悲鳴が上がった。
ネット内を移動する彼の顔面に現実世界に向かうクラモンの1匹が衝突しただけだった。
「アグモン、気をつけて!!」
「ああ、びっくりした……」
ガブモンが注意を促す中、アグモンは最初の位置に犬掻きで戻ると、太一が現実世界を目指すクラモンの群れを振り向きながら呟く。
「こいつら、俺達無視して何しようってんだ?」
「望月達に任せたんだろ。俺達は大元を倒すだけだ」
「……ああ」
頷き、太一は上部に掲げられている無数の掲示板のようなものを見上げた。
現実世界で、光子郎が太一達をディアボロモンの巣に誘導してくれているのだ。
「行くぞ!!」
2人のデジヴァイスがそれぞれ進化の光を放ち、アグモンとガブモンがその光に包まれる。
2匹はウォーグレイモンとメタルガルルモンの頭部に姿を変え、太一とヤマトがパートナーの上に乗り、一気にディアボロモンの元に。
再びネットの世界に降臨したオメガモンの肩に騎乗し、2人はディアボロモンの潜む場所に突入した。
バトルフィールドは前回の戦いよりも遥かに広い場所だった。
ディアボロモンからの先制攻撃を警戒していたが、そんな事はなく、唯一の障害物であるクラモン達も2人とオメガモンを気にも留めない。
無数のクラモン達が飛び交う中、彼らはその空間の奥に小さな点…ディアボロモンを見つけ、ディアボロモンもこちらに気付き、オメガモンの姿を認識した瞬間に嘲笑った。
それが合図かのようにクラモン達もオメガモンに凄まじい勢いで向かってきた。
「……何だってんだ、こりゃあ!?」
先程まではこちらを見もしなかったのに、クラモン達は唐突に動き出し、オメガモンの周囲に群がる。
あまりの数に視界が遮られ、ディアボロモンの姿が見えなくなる。
オメガモンは左手にグレイソードを出現させ、横薙ぎに一閃するが、クラモン達は瞬時に散らばることでその斬撃をあっさりとかわした。
まるで手応えがない。
「くそっ、ディアボロモンを…マザーを狙うんだ!!」
ヤマトの声に、オメガモンは右手にガルルキャノンを出現させ、その砲口を真上のディアボロモンに向けると何の躊躇いもなく発射する。
しかし、放たれた冷気弾はクラモンの群れが作り出した分厚い層に阻まれ、冷気は愚か、衝撃もディアボロモンに届かない。
そんなオメガモンの姿を見てディアボロモンが首を突き出しながら嘲笑う。
3年前は無数のディアボロモンを瞬殺した攻撃も、世界中のメールに籠められた力を失った今のオメガモンの力ではクラモンが盾になっただけで簡単に無効化されてしまう。
それだけではなく、敵は綿密に計画を練り、オメガモンの戦い方を完全にインプットしているために状況はオメガモンに不利だった。
「まずい!!」
光子郎もたった二度の攻撃で、こちらの不利を悟ってしまった。
思わず机に手を突いて立ち上がり、椅子を倒した光子郎にテントモンが慌ただしい言葉を掛ける。
「光子郎はん、タケルはんとヒカリはんから、太一はん達を救援に向かうっちゅうメッセージと芽心はんが大輔はんを迎えに行くっちゅうメッセージが!!」
「……分かりました。タケル君達にお願いしますと伝えておいて下さい…落ち着け、考えるんだ。」
焦って好機を見逃すなんてディアボロモン相手にしてはいけない。
オメガモンを、仲間を信じるのだ。
「それでは賢君…後はお願いします。太一さん達の救援にはタケル君達が向かったようなので」
「分かりました。大輔をお願いしますよ芽心さん」
賢にクラモンの回収を任せて、芽心は大輔を迎えに向かったのであった。
ハチ公前から追いかけていた一匹のクラモンはどこかへ姿を眩ましてしまい、賢とワームモンは無言でスクリーンを見上げていたのだが。
「おや?」
途中でスクリーンに映ったエンジェモン達の姿を見た。
ネットの中では、多少の自由が利くためにパートナーを肩に乗せられるくらい巨大化したエンジェモンとエンジェウーモンは、オメガモンの元を目指して一気に飛び立った。
「お兄ちゃーんっ!!」
現れた2体の天使を見て、ディアボロモンが球体の中から上半身を出す。
瞬間、その胸の砲口から無数のエネルギー弾が2体に向けて発射された。
「兄さーんっ!!」
エンジェモンとエンジェウーモンは軽やかにそれらをかわしながらオメガモンの元に向かおうとする。
それにオメガモンが振り向き、太一とヤマトが驚きの声を上げた。
「タケル!!」
「ヒカリ!!」
2体は俊敏な動きでディアボロモンの攻撃を避け続けるものの、次第に攻撃は2体に命中し始め、エンジェモン達の姿はタケルとヒカリごと爆煙に包まれた。
「これは…」
家のパソコンで様子を見ていた大輔が顔を顰める。
自分も加勢すべきだろうかと思ったが…。
「ちょっと大輔ー。サボってないで手伝ってよー」
自分が加勢に迎えない元凶のマダオのジュンが現れた。
「あのな、姉貴。何で俺が姉貴の部屋の片付けしなきゃいけねえんだよ!?自分の部屋の片付けくらい自分で…」
「弟でしょー?私だって必要最低限の物しか駄目って言われて堪えてんだから甘やかしてよ」
「調子に乗るなこのマダオーーーーー!!!ブイモン・ファイナル・アターーーックッ!!!!」
全身全霊の頭突きをジュンに叩き込んでブイモンはジュンを強制的に視界から消し去った。
大輔は溜め息を吐いて部屋から出ると、芽心が息を切らして入ってきた。
「お、お邪魔しま…す…」
芽心の後ろにはメイクラックモンがいることから途中で降りて走ってきたのだろう。
飲み物を渡すと、それを一気に飲み干した。
「事情は大体分かってますよ。ディアボロモンですね」
「は、はい…大輔君の力も必要だと思うんです」
「勿論です。京に頼んで…ネットにゲートを開いてもらうか」
それが結果的にディアボロモンを助けることになるとは大輔と芽心は思いもしなかった。
そしてネットの中では豪雨の如く降り注いでくるエネルギー弾をエンジェモンとエンジェウーモンはギリギリの所でかわす。
ディアボロモンの実力ならばとっくの昔に成熟期のエンジェモンや完全体のエンジェウーモンなど撃墜されているはずだが、何故か彼らとオメガモンは辛うじて無傷でいられた。
無論、その代わりこちらの攻撃も許されないのだが、しかしこれでは、自分からエネルギーを消費していっているようなものだ。
「(時間を稼いで、一体ディアボロモンに何の得があるんだ?)」
タケルの頭に浮かんだその疑問を口に出す前に、流れ弾を受けないように散らばっていたクラモン達に新たな動きがあった。
クラモン達は自分達でいくつもの層を作り始めた時、ディアボロモンがピクリと顔を持ち上げた。
壁に張り付いていたクラモン達の視線が、一斉に真上に向けられる。
その先には、つい今し方出現した、ネットと現実世界を繋ぐ無数のゲートが。
「ビンゴ!!」
ディアボロモンには全く聞き覚えの無い声が響いた。
その声の主…京こそが大輔からの頼みでゲートを開いた張本人であり、またディアボロモンにとって嬉しい誤算を与えてくれた恩人でもあった。
後者は、本人には不本意極まりないだろうが。
ディアボロモンが戸惑ったように視線を巡らせ、大きな隙を見せた。
当然それを見逃すはずもなく、エンジェモンとエンジェウーモンは飛び立った。
「エンジェウーモン!!」
「ええ!オメガモーンっ!!」
2体はクラモンの層を打ち破り、球体からディアボロモンを引き摺り出した。
ヒカリが太一に笑顔を向ける。
「お兄ちゃん!!」
「分かった!!」
オメガモンもまたディアボロモンの元へ突っ込み、その勢いを殺さぬままグレイソードを敵の体に突き刺し、縫い止めた。
そしてタケルがヤマトに振り向く。
「兄さん!!」
「おう!!」
動けないディアボロモンの体にオメガモンはガルルキャノンを押し付けた。
エンジェモンとエンジェウーモンが両脇に逃れた瞬間、2体の間で強烈な冷気と衝撃が迸る。
だがこの時をディアボロモンは待っていた。
ディアボロモンの体は煙を吹き出しながら地面に墜落していき、代わりにディアボロモンを構成していたクラモン達が動き出す。
ディアボロモンの作戦は、驚くほど素早く開始されていった。
無数のクラモン達は先程、京が開いたゲートに入っていき、即座に全てのゲートは“切断”という表示に切り替わったのだ。
それと同時進行で、オメガモン達が残されたネット内は暗闇に包まれていく。
引き戻す時間も与えられず、クラモン達は現実世界に逃れた。
「ゲートが……!!」
「閉じられていく……」
残された太一達はただ閉じ込められたという事実を理解するしかなかった。
「これは…まずったな…」
パソコンの画面に映る切断の文字に大輔と芽心は焦る。
「ど、どうしましょう…?」
「ネットに関しては太一さん達が何とかしてくれることを祈って、俺達は現実世界に現れたクラモン達を迎え撃ちます。おい、京…」
「どうしよう大輔ー!?私が開けたゲートでクラモンが大量に出てきちゃったーーー!!!」
電話に出た京の声はパニクっていた。
まあ、仕方のないことだと大輔は思う。
結果的にとは言えディアボロモンを助けてしまったのだから。
「落ち着け京、さっきのことは気にするんじゃねえ。俺のせいでもある。だから今は後悔するより次の行動に移るぞ。街中で戦うのは正直避けたいから…東京湾にクラモンを誘導してくれねえか?あそこなら広いから俺達も思う存分戦えるぞ」
「大輔…」
「1度や2度の失敗で諦めるんじゃねえぞ。この世界には俺達の大切な物が沢山あるんだ。あんな奴に奪われる訳にはいかねえ。頼むぜ天才ハッカー」
「………OK!!クラモン達を東京湾に誘導させるわ…大輔達も急いで!!」
「ああ、頼むぜ!!芽心さん、東京湾に行きましょう」
「はい!!」
大輔達も本宮家を飛び出して、東京湾に向かうのであった。
そして東京の電光掲示板をジャックした京が、クラモンにメッセージを送り、東京湾に誘導させたのだ。
そして京、賢、伊織が東京湾に到着すると、海が広がっているはずのそこは、数えるのも馬鹿らしくなるほどのクラモン達に埋め尽くされていた。
波音の代わりにクラモン達の声が聞こえ、波の動きの代わりにクラモン達が蠢くなど、それはあまりにも現実離れした光景であった。
突如、クラモン達が天に昇り、いくつかのクラモンの柱を作り出していた。
大輔達の到着を待ちながら、京達は天に昇っていくクラモンを厳しい表情で見つめていた。
「……とうとう、ディアボロモンに……」
「……違う」
「ディアボロモンとは違う何かになろうとしています」
伊織と賢の呟きに答えるかのように、クラモンの塊は一瞬で別の存在に変化した。
東京湾の上空に浮かぶのは、巨大なデジタマである。
「……デジタマ」
ディアボロモン以上の災厄を内に秘め、災厄を内包したデジタマは静かに浮かんでいた。
「何が、生まれるんだ……?」
デジタマはゆっくりと降下してくる。
それを見た賢は何となく悟った。
「……孵る…ディアボロモン以上の怪物が」
賢の言葉に答えるかのようにデジタマが孵化し、デジタマに内包されたディアボロモン以上の怪物が東京湾に姿を現した。
ページ上へ戻る