デジモンアドベンチャー Miracle Light
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ディアボロモンの逆襲 後編
デジタマから生まれたものは、その体のサイズだけを見れば大したことは無かった。
真っ二つに割れたデジタマのサイズと比べれば遥かに小さいそれは、轟音と共に海の上に着地し、デジモンは水蜘蛛のように水上に立っていた。
見た目は、ディアボロモンとは全く異なる蜘蛛のような姿であり、6本の足は昆虫に似て細く、その巨体を支えるには些か頼りない気もするが、尻尾の先にはサソリを思わせる鋭い刃があり、狂暴そうな顔と鋭くびっしりと生え揃った牙がその印象を覆して余りある。
沈黙が場を満たし、怪物…アーマゲモンは産声を上げるかのように頭を持ち上げて咆哮した。
その咆哮のみで全ての存在が震え上がる。
次の瞬間、唐突にデジタルゲートが開いて凄まじい熱量を持った閃光がアーマゲモンの横を通り過ぎた。
そこにアーマゲモンが振り返ると、そこにはエンジェウーモンが開いたゲートによって現実世界に現れたオメガモンの姿があった。
「……帰ってきた」
オメガモンが纏っていたマントを翻し、アーマゲモンに鋭い視線を向ける。
そしてアーマゲモンは本能に刻まれたマザーの記憶の中にいた敵の姿を認めて歓喜に再び吠える。
そして東京湾に向かう大輔と芽心はメイクラックモンに乗せてもらっていた。
「このペースだともう少しくらいかかりそうですね」
「はい、でもこれが迷惑をかけずに出せる速度ですから」
途中で丈らしき人物と擦れ違った気がするが、気にしないでおこう。
東京湾ではアーマゲモンの放った光弾がオメガモンを狙い撃ちした。
しかしオメガモンはそれらを鮮やかにかわしつつ、水飛沫を上げてアーマゲモンの視界を遮り、アーマゲモンの頭上に移動する。
そして逆さまの状態でお返しとばかりにガルルキャノンを敵に向け、ガルルキャノンから冷気弾が放たれた。
絶対零度の冷気弾はアーマゲモンの体に直撃し、アーマゲモンの体と周囲の海水を瞬く間に凍りつかせてしまう。
オメガモンは落下しながら華麗に宙返りしつつ、攻撃の手を緩めず攻撃していく。
冷気弾の冷気により、東京湾に巨大な氷塊が出来上がり、オメガモンはガルルキャノンを構えたまま、アーマゲモンを閉じ込めた氷塊を見つめる。
普通のデジモンなら例え究極体と言えど、ただでは済まない状態だが、アーマゲモンは普通のデジモンの物差しで測れる存在ではない。
氷塊の中が僅かに蠢き、氷塊に罅が入った。
それを見たオメガモンが動揺するが、それはアーマゲモンに隙を曝すことになる。
動きを止めたオメガモンにアーマゲモンは必殺技の光弾を発射し、氷塊を粉砕するのと同時にオメガモンに直撃させ、あまりの破壊力にレインボーブリッジに叩きつけられてから攻撃を受けたことにようやく理解した。
「……何だよ、勝負にならないじゃん」
誰かのあまりにも悪意の無い言葉が、呆然とオメガモンを見つめる太一とヤマトの心を抉る。
何とか起き上がることが出来たオメガモンに向かって再びアーマゲモンが光弾を放ってきたが、それを海上を飛び回ることでそれを回避するオメガモン。
オメガモンはその猛攻撃を辛くもかわすが、アーマゲモンの攻撃はまるで絨毯爆撃である。
絶え間ない光弾を撃ち込まれ、その度に大きな水柱を生み出していき、先の一撃は何とか耐えたものの、次に命中したら終わりである。
このままでは埒が明かないと判断したオメガモンは一気に敵の攻撃範囲から脱け出し、アーマゲモン目掛けて直進する。
そして勢いをそのままに、出現させたグレイソードを前に突き出すとアーマゲモンの鼻先に炎を纏った剣が突き刺さる。
アーマゲモンはオメガモンを弾き飛ばそうと頭を振り回したが、オメガモンはそれを耐えつつ、今度はガルルキャノンをアーマゲモンの口内に突っ込んだ。
そしてそのまま、アーマゲモンの口内に絶対零度の冷気弾を連射した。
皮膚が硬い生物には、内部への攻撃が有効であるのはまず間違っていない。
しかしそれは相手がまともな存在であればの話だ。
アーマゲモンが口内に溜め込んでいたエネルギーの熱量が冷気弾の冷気を容易く無力化してしまい、オメガモンの視界が光に埋め尽くされた瞬間、オメガモンの体は宙を舞って太一とヤマトの目の前に落下した。
「……オメガモン!!」
太一の声に霞んだ意識でオメガモンは何とか身を起こしたが、立ち上がった瞬間にウォーグレイモンとメタルガルルモンの頭が地面の上に落ちた。
オメガモンの武器であり、オメガモンを構成する一部であるそれらは、何も言わない。
そしてオメガモンは虚ろな瞳を真上に向けていたが、瞳にあった微かな光が消えた。
「そんな……!!」
「負けた…」
伊織と共に戦いの行方を見守っていた京と賢は思わず声を洩らし。
「オメガモンが……!!」
「……いや!!」
戦いの邪魔にならないように現実世界に戻っていたタケルは愕然とした表情でオメガモンを見つめ、ヒカリは小さな悲鳴を上げて後退る。
「光子郎はん、しっかりしなはれ!!」
光子郎はパートナーに叱咤されるも、椅子から立ち上がる事は出来ない。
全てが静止したような東京湾のある場所に光の柱が立った。
誰もがその光に目を見開く中、光から現れた大輔とブイモンはアーマゲモンを見つめ、そして奇怪なオブジェと化しているオメガモンを見つめた。
「あれがあのディアボロモンか。随分ととんでもねえ化け物になっちまったな」
「大輔君、ブイモン…勝てますか?」
「俺達だけじゃ、どう足掻いても勝てませんね」
オメガモンが負けた以上、唯一の希望はマグナモンXな訳だが、オメガモンが完敗した相手にマグナモンXが勝てる可能性はほぼないだろう。
「そ、そんな…」
「まあ、慌てるな。今のままじゃ勝てないってだけだ。安心しろ」
勝てないと断言された芽心はショックを受けるものの、ブイモンがそう言うと前進する。
「悪い、仲間が危ないんだ。通してくれ」
道を塞ぐ人々に真摯に語りかける大輔に人々は悟る。
これは遊びでは、娯楽ではない戦いなのだという事を。
そして、この状況をひっくり返す事の出来る人物は、目の前にいるのだと。
最初は1人の少年が何も言わず大輔のために後退し、その動きに促されたように他の人々も退いてくれた。
大輔とブイモンが戦場に進むまでの道が出来た。
「サンキュー」
「行っけえ!!」
大輔が笑みを浮かべて礼を謂うと1人の少年が拳を突き上げ、他の人々も大輔にエールを送ってくれた。
そしてようやく大輔とブイモンはアーマゲモンに相対することが出来た。
【大輔(君・さん)…】
大輔の仲間達があらゆる場所で大輔とブイモンとアーマゲモンを見つめる。
もう大輔とブイモンに任せるしかなかった。
大輔は左手にD-3と右手に奇跡のデジメンタルを持つと、デジメンタルを一気に前に突き出した。
「デジメンタルアップ」
「ブイモンアーマー進化、マグナモン。マグナモンX進化、マグナモンX」
あらゆる戦いの重要な場面で活躍した黄金の聖騎士が東京湾に降臨した。
誰もが唾を飲んで見つめる中、マグナモンXは閉じていた目を見開き、右腕を天に翳した。
「この戦いを見ている全てのみんな!俺に力を貸してくれ!!」
「あっ!?」
太一達の元に向かおうとした芽心のデジヴァイスから光が放たれ、マグナモンXの元に向かう。
アーマゲモンの失敗は前回のように世界にこの様子を見せていたことだ。
そのおかげで世界中の人々がこの光景を知ることになった。
ある者はデジヴァイス、ある者は携帯などの液晶から光が放出され、マグナモンXに吸収されていく。
アーマゲモンはそれを阻止しようとするが、バンチョースティングモンBMが真横から光弾を弾き飛ばした。
「賢!!」
「急ぐんだ大輔!!」
「よし、オメガモンの力も借りるぜ!!」
バンチョースティングモンBMがアーマゲモンの気を引いてくれているうちにマグナモンXはオメガモンの方に振り返る。
「僕達の力を…使ってくれ」
「みんなの…希望の力を…」
アグモンとガブモンも残った力を振り絞ってマグナモンXに託し、マグナモンXに全てを任せる。
「行くぞ!!」
絶対防御状態でアーマゲモンに突っ込み、アーマゲモンの攻撃を無効化しながら取り込んだ力を全て拳に収束させてアーマゲモンに叩き込む。
拳はアーマゲモンの体を簡単に貫き、先程のオメガモンの時同様に弾き飛ばそうとするが、それよりもマグナモンXの行動が速い。
「エクストリーム・ジハード!!!」
拳に収束させたエネルギーを一気に解き放ち、アーマゲモンを内部から粉砕し、アーマゲモンを構成するクラモンを一瞬で消し飛ばした。
【やったあっ!!】
それを見た全員が歓声を上げた。
こうしてアーマゲモンとの戦いは幕を閉じた。
後書き
元気玉作戦で瞬殺。
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