さばさば

「けれどメジャーで大きく羽ばたいてくれるなら」
「それもよし」
「それはいいのね」
「メジャーも」
「ええ、あと兄貴さんや新井さんみたいに阪神に行っても」
　千佳はこのケースについても話した。
「残念って思うけれど」
「まだいいのね」
「許せるのね」
「千佳ちゃん的には」
「巨人だけは駄目よ」
　これが千佳の偽らざる本音だった。
「あそこに行くとなるとね」
「それだけで腹が立つ」
「巨人には行って欲しくない」
「そうなのね」
「出来れば巨人は最下位であって欲しいわ」　
　千佳の偽らざる本音である。
「万年でね」
「まあそれは私達もだけれどね」
「私達もそう思うけれどね」
「阪神ファンとしては」
「やっぱりね」
「ええ、何が補強よ」
　ここでまた暗黒モードに入る千佳だった。
「それよりも若手育てたらって思うわ」
「いや、巨人のフロントそんな発想ないから」
「あそこお金を使うことしか考えてないから」
「選手の育成とか考えてもいないわよ」
「ドラフト上位の選手しか出さないしね」
　生え抜きの扱いはそうだというのだ。
「あそこが選手育てるとかね」
「まずないわよ」
「もう二十年以上そうじゃない」
「他のチームから選手掠め取るだけで」
「お金使うだけだから」
　それだけのチームだというのだ、尚巨人の選手強奪の悪事は古くは別所の頃からだ。伝統的な邪悪なのだ。
「育成とかね」
「もうないわよ」
「それでその選手が衰えたらまた強奪」
「それも繰り返しじゃない」
「巨人は言うなら北朝鮮よ」
　千佳は暗黒モードではなくなったが憮然として言った。
「日本のね、だからね」
「それでなのね」
「丸さんにも行って欲しくない」
「拉致された様なものだから」
「だからなのね」
「リメンバー江藤よ」
　千佳はここでこの言葉を出した。
「だからね」
「絶対になのね」
「丸さんは巨人に行って欲しくない」
「最高は残留で」
「どうしてもっていうのならロッテね」
「ええ、こうなったらね」
　千佳は意を決した顔で言った。
「今度の日曜朝早くから広島に行ってね」
「行くの？厳島神社」
「それであそこにお参りしてなの」
「丸さんの残留お願いするの」
「そうするわ」
　既に意を決している言葉だった。
「前も行ったけれどね」
「優勝した後で行ってたわね、そういえば」
「クライマックスと日本シリーズの優勝」
「千佳ちゃんその時も行ってたわね」
「それで今回もなの」
「ええ、行くわ」
　こう言って実際にだった、千佳は次の週の日曜日に朝早く起きることにした。それで母にも言うのだった。