さばさば
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第二章
「来年ことそはね」
「ああ、阪神が日本一だな」
「カープに決まってるでしょ」
兄妹でもそこは譲らない、だが二人共飲むものを飲み終えるとそれぞれの部屋に戻って勉強してから寝た。
翌日千佳はごく普通に起きて食べて身支度を整えて登校した。そうして教室に入るとクラスメイト達に聞かれた。
「大丈夫?」
「落ち込んでない?」
「カープ負けたけれど」
「怒ってない?」
「残念よ」
千佳はクラスメイト達に自分の気持ちを素直に述べた。
「今年こそはって思ったのにね」
「ソフトバンク強かったから」
「だからね」
「巨人を成敗した時はやったって思ったわ」
千佳はクライマックスシリーズの話もした。
「この調子で西武かソフトバンクかって思ったら」
「ソフトバンク強かったわね」
「あのチームやっぱり強いわ」
「選手凄いのばかりだし」
「勝負強いし」
「だから負けたわ」
このことを素直に認めていた。
「だからまた来年よ」
「来年ね」
「来年また頑張る」
「それだけなのね」
「ええ、それにはね」
ここでだ、千佳はその目を真剣なものにさせた。そのうえでクラスメイトにこのことを話すのだった。
「丸さんが必要よ」
「あの人ね」
「フリーエージェントよね」
「あの人がいてくれるかどうか」
「それが問題よね」
「新井さんっていう柱がいなくなるのよ」
精神的支柱がというのだ。
「それで主砲で守備もいい丸さんがいなくなると」
「痛いわよね」
「カープにとって」
「それはね」
「辛いわよね」
「だからよ、理想は残留よ」
それだとだ、千佳は言い切った。
「それが第一よ、絶対にね」
「残留よね」
「残留して欲しいわよね、広島ファンにしてみれば」
「勿論千佳ちゃんにとっても」
「そうよね」
「ええ、間違っても巨人なんかに行ったら」
ここでだ、千佳の目の色が変わった。
これまで黒かった目が真っ赤になった、そして黒い魔闘気を身体全体に覆わせそれを撒き散らしながら言うのだった。
「そう思うだけでね」
「わかったから落ち着いて」
「千佳ちゃん暗黒モードに入ってるわよ」
「千佳ちゃんの巨人嫌いはわかってるから」
「落ち着いてね」
「そのことは考えないでね」
「考えるだけで」
実際にとだ、千佳自身答えた。
「もうね」
「それだけでなのね」
「怒りを感じる」
「そうだっていうのよね」
「ええ、あんなところにはね」
それこそというのだ。
「行って欲しくないわ。というかね」
「というか?」
「というかっていうと」
「丸さんにはロッテも声かけてるけれど」
千佳はこのことについても語った。
「こちらはね」
「別になの」
「いいの?」
「残留じゃなくても」
「そうなの」
「そりゃ残留が最高よ」
カープファンとしてはというのだ。
「私にしても。けれどね」
「丸さんがどうしてもっていうならなのね」
「ロッテでもいい」
「そう言うのね」
「メジャーに行ってもね」
前田の話もした。
「仕方ないなって思えるわ」
「そっちもいいのね」
「残留でなくても」
「そうなのね」
「何度も言うけれど残留が理想よ」
そして最高だというのだ。
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