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戦国異伝供書

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第十四話 北陸へその十

「諸大名を」
「そうなるか」
「武田、上杉、毛利、北条と」
「諸大名を倒してか」
「ことを進めるべきかと」
「ふむ、流石じゃな」
 平手は羽柴に顔を向けてそうしてこう言った。
「危うい状況だが落ち着いて考えておるのう」
「いやいや、これでも焦っておりますぞ」
「そうは見えぬが」
「当家の置かれている状況は危ういです」
「それでか」
「はい、あえて落ち着いて」
「そしてか」
「考えているのです」
 そうだというのだ。
「何とか落ち着きを保つ為に茶を飲みつつ」
「そうしてか」
「やはり茶はよいですな」
 こうも言う羽柴だった。
「飲むと気持ちが落ち着き頭も冴えます」
「それはその通りじゃが」
「それがしが落ち着いておると」
「そしてよい考えを出すのう」
「あえてそうなる様にです」
「務めておるのか」
「近頃その為にも茶をよく飲みまする。安くもなってきましたし」
 これまで非常に高いものであった茶がというのだ。
「それもよいことにして母上にも馳走して」
「そなたのお母上にもか」
「そうしております」
「今もお母上を大事にしておるか」
「これまでそれがしを育ててくれました故」
「それでか」
「そうしておりまする」
「よいことじゃ、親孝行はするものじゃ」 
 平手も羽柴のそのことをよしとした。
「というかお主も小竹もじゃな」
「はい、二人共です」
「親孝行は忘れておらぬか」
「左様です」
 この場におらぬ秀長のことも話すのだった。
「そうしておりまする」
「徳を積むことじゃな、そうすればな」
「よいこともありますな」
「そうじゃ、若しかして」
 こうも言った平手だった。
「お主によいことがあるやもな」
「まさか」
「うむ、お主子宝が欲しいな」
「そういつも願っておりまする」
 実際にとだ、羽柴も答えた。
「まことに。ですが」
「中々出来ぬな」
「それで困っておりますが」
「それもな」
「徳を積めばですか」
「神仏が見ておられてな」
 そうしてというのだ。
「徳もあるやもな」
「そうであればよいですな」
 羽柴もこう応えた。
「それがしも」
「必ずあるわ、それで話を戻すが」
「はい、殿にもお話しますか」
「是非な、今は戦の中休みであろう」
 そうした状況だというのだ。
「そしてな」
「時が来れば」
「また大戦じゃ、そして今度の戦では」
「まさにですな」
 明智がここでまた平手に応えた。 
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