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戦国異伝供書

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第十四話 北陸へその九

「倒せぬしな」
「幕府はともかくとして」
 林は幕府が兵を挙げても人が集まらないと見て述べた。
「本願寺になると」
「あの石山御坊じゃ」
「攻め落とすのは難しいですな」
「四方を川に囲まれ壁も石垣も高い」
 平手も一度あえて摂津まで行っていて見ているのだ、その石山御坊を。
「岐阜城や観音寺城よりもな」
「堅固ですな」
「まさに天下の要害じゃ」
 石山御坊はというのだ。
「だからじゃ」
「攻め落とすのは容易でありませぬな」
「そして武田、上杉、毛利、北条。どの家もじゃ」
「何万もの兵を出せる家で」
「手強い」
 文句なしにというのだ。
「やはりな」
「左様ですな」
「だからな、一度に相手にするとな」
「当家にしましても」
「どう戦うべきか」
「それが問題ですな」
「どうにもな」
「ここはです」
 また羽柴が言ってきた。
「一つ一つです」
「幕府も本願寺もか」
「諸大名も」
 平手にも話すのだった。
「全てです」
「一つ一つか」
「倒していくしか」
「ないか」
「そうかと」
「そうじゃな。一度に戦うなぞな」
「本願寺も諸大名もです」
 何処もというのだ。
「あまりにも強く」
「一度に相手にすることはな」
「したら負けまする」
 羽柴ははっきりと述べた。
「当家が」
「だからか」
「はい、一つ一つです」
「倒していくべきか」
「そうかと」
「そうか、全ての勢力を一つ一つか」
「確実にです」
 間違っても一度に相手にせずというのだ。
「倒していくべきかと」
「そういえば武田、上杉との戦もな」
「一度に相手はしておりませぬ」
「一つ一つであったな」
「戦いましたし」
 それでというのだ。
「若しもです」
「一度に兵を挙げてきたならな」
「そうするしかないかと」
「左様か。しかし猿よ」
 平手は羽柴の話をここまで聞いて述べた。
「お主相変わらずな」
「相変わらずといいますと」
「知恵が回るのう」
 こう言うのだった。
「見事じゃ」
「そう言って頂けますか」
「やはりな」
「考えるとですか」
「それしかない」
 敵の勢力が一斉に蜂起してもというのだ。
「当家としてはな」
「一度に相手はどうしてもです」
「出来ぬからのう」
「ですから」
 それでというのだ。
「各個にです」
「敵はか」
「倒していくべきかと。まあ公方様そして本願寺を倒せば」 
 後はというのだ。 
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