レーヴァティン
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第七十一話 南の港町その一
第七十一話 南の港町
久志達はセビーリアの港に着いた、淳二は船から降り立つと港町を見回してそうしてこんなことを言った。
「これで潮の匂いがしたらね」
「そうだよね」
剛は淳二の言いたいことを察して述べた。
「海の港町だよね」
「そんな感じだよね」
「雰囲気がね」
見れば木の波止場が幾つもありそこには多くの帆船が停まっている、剛もその港の中を見回しつつ話した。
「そうだよね」
「うん、ここにいたら」
「いたら?」
「何かそのまま船に乗って」
そしてと言う淳二だった。
「新大陸まで行きたくなるね」
「コロンブスみたいにかな」
「それかインドまで行って」
淳二はこうも言った。
「それで胡椒を持って帰ってね」
「大儲けだね」
「そういうこともしたくなるんだね」
「大航海時代みたいにね」
「船を使って新発見か大儲け」
「そうしたくなるよ」
「それはいいわね、ただね」
清音は二人の話を聞いて言った。
「この島でもあるけれど船での冒険も危険よ」
「嵐とか津波とか」
「そういうのでだね」
「あと海路を見失ったら」
その時はというと。
「漂流してそうして」
「船の上で全員餓え死にだね」
「そうなっちゃうね」
「実際それでかなり死んでるから」
嵐や津波で船が沈んだり漂流してだ。
「大航海時代だってね」
「胡椒一つ手に入れるにしても」
淳二が言ってきた。
「もう一か八かっていう位の」
「そう、賭けだったのよ」
それも己の命を懸けた、だ。
「シンドバットの冒険みたいにね」
「そうだよね、それで胡椒を必死に持って帰って売ってたんだね」
「胡椒は金一粒で」
当時の欧州ではそう呼ばれていた、大航海時代に多くの犠牲を払ってそうして手に入れていったのである。
「お肉を食べるならね」
「やっぱり胡椒がないとね」
「匂い消しに味付けにね」
「保存も効く様になるし」
「胡椒は欠かせなかったのよ」
少なくとも香辛料はそうだった、だが欧州は気候が寒冷な為に香辛料を植えても育たなかったのだ。
「そしてその胡椒を手に入れる為に」
「物凄く沢山の人が死んだ」
「そうなるから」
だからだというのだ。
「大航海時代は夢があってもね」
「危険と隣り合わせの時代だったんだね」
「コロンブスもそうだったしね」
「あの人もかなり苦労したしね」
大西洋の往復、それにだ。
「帆船での遠出となると」
「文字通り死を覚悟してよ」
「行くものだったね」
「そうよ、マゼランなんかかなりだったし」
世界一周をしたこの人物の航海はというのだ。
「五隻あった船が二隻になって」
「乗組員もかなり死んでね」
「マゼラン自身も死んでるから」
原住民との戦闘の結果だ、それも乗組員達に見捨てられてという実に無残なものであった。
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