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レーヴァティン

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第六十九話 西に向かいその二

「そうしような」
「これからね」
「すぐに出発するか、十一人目のいるセビーリアまでな」
「セビーリアに行くには」
 ここで夕子がその道について話した。
「このローマの港からです」
「船で行くんだよな」
「はい、セビーリアは港町ですので」
 だからだというのだ。
「船で行くことが最善です」
「そうだよな、ローマにも港があるしな」
「ですから」
 その港からというのだ。
「セビーリアまで行きますか」
「そうするか、ただな」
「拠点のことですか」
「ちょっと最後の話するな」
 屋敷を斡旋してくれた業者と、というのだ。
「そっちはすぐに終わるからな」
「そのお話が終われば」
「ああ、それでな」
 そのうえでと言うのだった。
「船に乗るか」
「そうしますか」
「是非な、ただな」
 ここでこう言った久志だった。
「奥さんが来るまで待つことはな」
「しないですか」
「そうしたら遅れてな」
 そしてというのだ。
「セビーリアに行っても相手が何処か行くとかな」
「そうなりかねかいからですか」
「だからな」
 それでというのだ。
「ここはな」
「あまり、ですか」
「ああ、それはな」
 どうにもというのだ。
「しないでな」
「最後のお話が終われば」
「すぐに船に乗ろうな」
「奥さんのことは」
「気になるけれどな」
 それでもというのだ。
「今はな」
「奥さんにはお会いせずに」
「単身赴任の気持ちだよ」
 久志は笑ってこうも言った、この時の笑顔は少し苦笑いだった。
「正直な」
「単身赴任ですか」
「経験ないけれどな」
「それでもですか」
「奥さん家に置いて冒険してるからな」 
 即ち外に長期で家を空けているからだというのだ。
「こんなのだろうな、単身赴任の気持ちってのは」
「若し私が単身赴任なら」
 ここで留奈が久志にこんなことを言った。
「女の子を家に連れ込んでいるわ」
「女の子かよ」
「男だったら浮気になるでしょ」
 だがそれが女、留奈にとって同性ならというのだ。
「だからなのよ」
「同性愛か」
「浮気するよりレズの方がましでしょ」
「じゃあ俺だと相手が男だとか」
「浮気にならないわよ」
 久志の場合もそうなるというのだ。
「だからお勧めよ」
「違うんじゃないか?」
 留奈その論理にだ、久志は首を傾げさせてどうかという顔で答えた。
「それは」
「そうかしら」
「ちょっとな」
 口調にもその考えは出ていた。
「また違うだろ」
「私はそう思うけれどね」
「同性愛だと浮気じゃないか」
「だからいいのよ」
「そんなものか」
「ええ。ただ久志っちの奥さんはわからないけれどね」
「別に浮気するタイプには見えないな」
 久志は自分のこちらの世界の妻をこう見ていた、そしてこのことは彼にとっては幸いなことにその通りだった。 
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