レーヴァティン
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第六十九話 西に向かいその三
「ただ寂しいと食うタイプか」
「そっちの方に行く人なの」
「飲んでな」
こちらもありそうだというのだ。
「だからひょっとしたらな」
「再会の時は」
「太ってるかもな」
こうなっていることを危惧する久志だった。
「それは覚悟しておくか」
「可愛い感じの人だったけれどな」
正は彼が覚えているハンナの話をした。
「けれどな」
「人間太ったり痩せたりだからな」
「だからか」
「奥さんもひょっとしたらな」
自分の『単身赴任』が長いからだとだ、久志は冗談半分本気半分でハンナのことを心配してそのうえで話した。
「太ってるかもな」
「それで太ってたらどうするんだ?」
「そう言われてもな」
どうにもと返した久志だった。
「痩せて欲しいけれどな」
「それでもか」
「まあ太っていないことを祈るさ」
「食っていてもか」
「カロリーの少ないもの食っててな」
一人だと食欲に走るタイプにしてもというのだ。
「清楚可憐なままでいて欲しいな」
「そのことを祈ってるんだな」
「ああ」
その通りだと返した。
「俺もな」
「それは切実だな」
「ああ、しかしな」
「しかし?」
「奥さんに会うのはまだ先だな」
「セビーリアに行くからか」
「後のことは任せるさ、業者さんとかにな」
屋敷のことを話している彼等にというのだ。
「それで十二人目まで仲間にしてな」
「このローマ戻った時にか」
「再会だな。しかし単身赴任ってのはな」
久志はここでまたこのことについて話した。
「あれはな」
「どうにもか」
「ああ、仕事なら仕方ないにしても家族のことはな」
つまりハンナのことをというのだ。
「思い出すな」
「完全に旦那さんの言葉だね」
剛は久志のその言葉を聞いて思わず笑みになって言った。
「今のは」
「そうか、やっぱりな」
「自分で認めるんだ」
「ああ、言ってすぐに思ったよ」
久志自身そうだった、実際に。
「これはな」
「あれだよね」
「ああ、もうな」
「完全に単身赴任の旦那さんだね」
「そうだよな、じゃあ早いうちにな」
「十二人全員仲間にして」
「そしてな」
そのうえでとだ、久志は剛にも言った。
「ローマを拠点にしてな」
「そうしてだね」
「しっかり戦える様にするか」
「そうするんだね」
「ああ、こっちの世界でな」
こうすると言うのだった。
「マイホームパパとしてな」
「そこでそう言うんだ」
「人間やっぱり家があるのがよくてな」
それでとだ、久志は剛にさらに話した。
「そしてな」
「さらにあるんだ」
「ああ、その家に帰ることが出来て仕事が出来たらな」
「ベストだね」
「旗揚げしても戦とかあってローマを出る時が多くてもな」
「今は完全に単身赴任だから」
「まだいいだろうからな」
家を離れているという面ではというのだ。
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