東方幻想探偵
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2.W爆誕/little rabbitなレーザー
それは幻想入りするための算段を立てるため、紫さんを呼んでの夕食の時だった。
「ああ?下見?」
「ええ。一刻だけ来てみない?数時間だけになっちゃうけど」
紫さんは一度どんな場所なのかきてみないか?という。それに神奈子が便乗して、それもいいな、と言い始めたのだ。
「確かに人から聞くのと実際に見てみるのでは違うものだからな」
とこんな具合にノリノリなのだ。そして早苗も。
「幻想郷ですかぁ。ゾクゾクしますねぇ」
とスイッチが入ってしまい、諏訪子もきっと行ってくればいいんじゃない?と場に合わせて言うだろう。
俺か?俺は嫌だよ。せっかくの休日がなくなる。もしくは夜という一日の疲れをいやす時間が削れる。
「それじゃあ、下見には丞一と早苗が行くってことで」
「ちょっと待てーい!俺は行くなんて言ってないぞ。それに俺が行っている間にドーパントが現れたらどうするんだ」
「その時は蓮子ちゃんにでも来てもらうさ」
「それに丞一もいれば何かと安心だしさ」
何か言い訳を探していると、クイッと袖を引っ張られた。早苗だった。目を輝かせるどころか、目が星になってる。
「丞一さん!幻想郷、気になります!」
八方塞がり。四面楚歌とはまさにのことだ。どうしようか悩んでいると。紫さんからある言葉が発せられた。
「じゃあ丞一。あなたにも利益があるのなら来るのね」
その一言が俺の決断を決定づけた瞬間だった。
そして一週間後の黄昏時。
俺と早苗は紫さんの能力───紫さんはスキマと呼んでいた───で幻想郷の紫さんの友人のところへ向かうはずだったのだ。
「おい!紫さん!どういうことだ!何かスキマくぐったら早苗いないんですけど!?」
ケータイで即刻紫さんに悪態をついた。
『どうやらこっちで不備があったみたいなのよ。彼女は私の友人と一緒よ』
ってことははぐれたのは俺の方かよ。
『今どんなところにいるのかしら?』
「竹藪だな。……ん?紫さん、おかしいぞ。この月?ここに来る前に俺も月は見てきたが、今日は満月じゃないはずだ。…………おい?おい!紫さん!」
プー、プーとケータイからは聞こえ、すでに事切れていた。
「………いきなり新天地で迷子かよ。はあ」
顔を上げ空を仰ぐ。見上げると漆黒の空には月が上がりきっていた。こんな明かりのない場所で現在地を特定できたのも月明かりのおかげだろう。
「こんな真夜中じゃ、調査もままならねーしなぁ」
これは下見ではない。下見だとしたら確実に断ってる。これは事件捜査の一環なのだ。そう、それは一週間前にさかのぼる。
『ガイアメモリについて知りたくはないかしら』
『『っ!?』』
そうこの言葉には思わず早苗も反応してしまうほどにとびきりのインパクトを誇っていた。
『どういうことだ』
『こっち、幻想郷でも。ガイアメモリによる超常現象事件が相次いでいるのよ。しかもたちの悪いことに弱小妖怪や人間しか襲わないんだから』
私を襲ってくれれば返り討ちなんだけれどね~、と困ったような顔をしていたが、おそらくめんどくさそうな顔の間違いだ。
『てっきり、幻想入りしたものが裏で流通してるのかと思ってたけれど』
『俺はむしろそっちから流れてきたのかと、そう思っていたんだが』
『おそらくあなたの考えで正しいわ。だって現代よりも幻想郷での事件の件数が多いんだもの』
『と言っても物語に写すほどの物ではないがな』メメタァ!
『それは言わないお約束よ。んん!つまり、丞一。あなたには幻想郷に来てもらって、原因の調査、そしてあなたの意見を聞かせてほしいの。というわけで頼んだわよ』
「回想終了っと。さて、これからどうしたものか」
「あー、ちょっとそこのあんた」
天が呼ぶ!地が呼ぶ!人が呼ぶ!誰かが俺を呼ぶ声がする!冗談はさておきあたりを見渡すが誰もいない。
あれ?これももしかして幽霊か?幽霊ktkr。
「おいこっちこっち」
残念。目の前にいたよ。腰ぐらいまでの高さしかないけど。しかし俺よなぜ気づかない。
「小学生はもう寝てる時間だぞ?」
「小学生がなんだかは知らないが。自分は因幡の兎なんだ。少なくともあんたよりは歳は上だよ」
これがいわゆる合法ロリと言うものか。これが変態の国ジパング!
「俺は、………通りすがりの探偵だ。ある事件を追ってる。少し話を聞かせてくれないかね?幸運の兎さん?」
「ほう?自分のことは知ってるわけ?なら話は早い」
「ここのところ、何かおかしなこととか起きてないか?」
「おかしなことって何だよ?」
「おかしなことはおかしなことだろ?例えば変な化け物が現れたり、月がおかしくなってたり」
「………月が、何だって?」
「何って。今真上にある、っ!」
目の前の兎さんからいきなり蹴りが飛んできた。それも敵意がこもってる鋭い一撃だった。
「何のつもりだ?」
「………チッ、外したか。さすがはちまたで有名な仮面ライダーだな」
「?仮面ライダー?何のことだ」
「ここまできてシラ切んなよ。とにかくあんたの足止めをするようにえーりんに言われてるんでね」
そう言うと兎さんは蛍光色のドライバーを腰に巻いた。
(ロストドライバー、じゃない?)
『BAKUSOU BIKE!』
「爆走バイク!?」
ガシャットからの音声と同時に兎の後ろにレースゲームのタイトルのようなディスプレイが現れる。さらにそこからトロフィーが周囲に展開された。
爆走バイクといえばレースゲームのレースゲームでも屈指の名作と名高いシリーズだ。俺もやってるし。
「変身」
『ガシャット!レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム?アイムアカメンライダー!!』
そこには二等身姿のマスコットのような戦士に変わっていた。しかし、元の身長とあまり変わってないようだ。
しかし、それ以上のカルチャーショックが俺を襲った。
姿形が違えど俺のもう一つの姿の面影が目の前のそれにはあった。
「っしゃあ!ノリノリでいくぜ!」
二等身!?え?なに?それで戦うの?
しかし、目の前の存在はその格好とは裏腹に素早く軽快の動き見せてきた。
「うお!?」
怖!?二等身なのに!?
俺も攻撃をかわしながらロストドライバーを装着。メモリのスイッチを押す。
『Joker!』
「変身!」
『Joker!』
変身後すぐさま身を翻し、後ろ回し蹴りを繰り出すも二等身の頭上を通り過ぎていった。ヤバい。小さくて攻撃当てにくい。
「よっ!はっ!」
「ぐぁ!?ちっ!」
逆に向こうの攻撃は思い切り腹にクリーンヒットしていく。やだこれ怖い。
でも、
「コツはつかんだっ!オラァ!」
ローキックの要領です蹴り下ろす。
これがバットを折るローキックだ、ってな。
「ったぁ!やろー!」
しばらくこの攻防は続いた。互いのパンチを、キックを。防ぎ、躱し、いなす。
「へへ!やるじゃないの、仮面ライダー」
「なんなんだよ。その仮面ライダーっての」
「はあ?何言って、……オタク名前は」
「俺か?俺は慶条丞一。しがないの探偵、」
ウサギからの一方的な誤解が解け、事態の収拾つきそうになったその時だった。
『Virus!』
聞きなれたウィスパーボイスが竹藪の中に響く。
すると、オレンジ色のノイズのような粒子が一定の場所に集まていた。
「!?笑えねえな」
「ああ、笑えねえ。なんだよあのメモリ。なんか化け物が形成されてってるんだけど」
そして粒子が凝固すると、バイクの排気音が鳴ると目の前に閃光が走った。
「ぐあ!な、なんだ?まったく見えなかったっ!」
「うお!?あぶねっ!」
見えない一撃により吹き飛ばされてしまった。兎は無事なようだ。
ようやく止まり、そこにいたものに俺は驚きを隠せなかった。
「風になるぜえぇぇぇ!!」
人気レースゲーム『爆走バイク』に出てくるライバルレーサー『モータス』だった。
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