魔法少女リリカルなのは 平凡な日常を望む転生者
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第53話 死のロードなんて吹っ飛ばせ
「ああああああああ!!」
テレビを見ていた、ライが騒ぎ始める。
その姿はタOガースの帽子とユニホームを着込み、両手にはメガホンを持って、テレビの前に敷いてある小さなレジャーシートの上で騒いでいた。
『入った〜!藤河、渾身の153キロのストレートをバックスクリーンに運ばれた!!タOガースこれで5連敗です』
ちなみに騒いでいた原因はこれだ。
「くっそ、ベイOターズめ、雑魚のくせに……………」
わなわなと震えながら物騒な事を呟くライ。
ちなみに今は8月。
タOガースにとってはいわゆる『死のロード』に直面しており、それが連敗の原因だったりする。
ちなみに死のロードとは、タOガースの本拠地、甲子園球場は夏になると高校野球に使われることになり、その間本拠地で試合が出来なくなる。
そのため、遠征が多くなり、いつも以上に疲労が貯まる事になる。
それが響き、連敗することで、いつしかこの時期は『死のロード』と呼ばれるようになった。
「ライお姉ちゃん、また負けちゃったね…………」
「残念………」
「何だよ〜今日こそ連敗脱出だと思ったのに………」
そう言ったのはキャロとルーテシア、セイン。彼女らもライと同じようにユニホームと帽子をかぶっている。当然両手にはメガホンを。
「本当だよ!!久しぶりのテレビ中継だったのに………」
最近、視聴率が取れないせいか、野球中継がめっきり減った。
そのせいで、ライは負けるといつも以上に機嫌が悪くなる。
「もういい!寝る!!」
レジャーシートをたたんで、怒りながら自分の部屋に入っていくライ。
これが負けた時のいつもの光景だ。
ちなみに勝つと、深夜まで起きていて、スポーツニュースを見るのが勝った日だ。
「でも本当に残念だったね」
「まさか、あそこでホームラン打つとは…………」
「何でこうついていないのかな………」
チビッ子2人とセインは、ライの影響ですっかり野球の事を覚えてしまった。
今ではすっかりタOガースファンだ。
そのせいでイーOルスファンの俺は更に肩身が狭くなってしまった………
唯一の救いはイーOルスがパリーグだってことだな。
まあそんなこんなで、家は一部で結構野球に熱かった。
次の日……………
「レイ、野球見に行こう!!」
いきなりそんな事を言い始めるライ。
「見に行くのはいいけど、チケットは?」
「フッフッフ、これを見ろ!!」
そこにはタOガース対ジャOアンツ外野席指定席と書かれていたチケットが5枚あった。
「いつの間に………」
「結構前に申し込んでおいたんだ!」
「……………金は?」
「夜美から借りた」
「確か夜美はお金を貸したとき利子付けてなかったか?」
「付けてたよ。期限までに返せなかったら50%プラスって言われた」
何そのぼったくり………
「大丈夫かよライ?」
「大丈夫、期限までに返せばいいだけだから」
本当に大丈夫なのか……………?
後日、ライが夜美に泣きついている所を見ることになるがまだ先のことである。
「で、いつなんだ?」
「今日」
「は?」
「「「「うわぁ〜」」」」
4人(ライ、セイン、ルーテシア、キャロ)が初めて見る後楽園ドームに感動していた。
あの後、残り3人(セイン、ルーテシア、キャロ)も行く気満々で直ぐに準備し終わり、大分煽られた。
どうやら言い忘れていたのは俺だけらしく、俺以外みんな知っていたみたいだ。
何故俺に言わなかったと聞いたら、「今日まで忘れてたよ〜」って軽いノリで言われた。
俺って一家の大黒柱なのに…………
そんなわけで……………
「マジで来ちまったな…………」
本当に来ちゃいました。
時間もまだ3時ごろなのでナイターだから間に合うんだけど、もっと余裕を持って来たかった…………
というか、ここに来るまでにかなり苦労した………
二時間前……………
「あ〜!!勝手にどこかに行くなって!!」
勝手にふらつくなってあれほど言っておいたのに………
東京駅の地下鉄へ乗り換えの途中の事だ。
ライとセインがまたもや勝手にどこかに行ってしまった………
人も多いから一回はぐれたら合流するのにかなり時間がかかるだろうからやめてくれと言っておいたが、まるで意味が無かった。
「悪い、あいつら連れてくるから二人共ここから動かないでくれ」
そう言って手をつないでいたキャロとルーテシアに自販機の所にいるように言ってライ達を捕まえに行った。
それほど離れてない場所にいたため、簡単に捕まえられたけど…………
「お、お兄ちゃ〜ん!!」
今度はキャロが人ごみに飲まれてしまった。
「キャロ〜!!お前ら、ここから動くなよ!!」
そう言って俺はダッシュでキャロを救出しに走った……………
やっとの思いでキャロを救出した俺だったが、帰ってくると、今度は別の問題に差し掛かった。
「あれ、ルーは?」
「ルー?確かここに…………」
そう言ってライが指差した所には、誰もいない。
「…………ライ?」
「セ、セインは見てなかった!?」
「えっ!?私も見てないけど…………」
マジか!?もしかしてリアル迷子かルーテシア。
一体何処に行ったんだ?
そんな時……………
ピンポンパンポーン。
『お客様にお知らせがあります。有栖零治様、有栖零治様、お連れ様がお待ちです。至急緑の窓口までお越しください』
……………駅でもアナウンスあるんだな。
ってそうじゃない!!
「俺、迎えに行ってくるから絶対にここから動くんじゃないぞ!!今度はぐれたら帰るからな!!」
俺はそう言って、慌ててルーを迎えに行った。
そして今に至る…………
今日ほど星、夜美、フェリアが恋しいと思った事はないと思う…………
「ねえ、早く入ろう!!」
暫く回想に浸ってた俺をライが我に返らせ、俺達は中に入った。
「さあ、応援するぞ!!」
入って直ぐに女子トイレに入った4人は、家で野球を見ていた格好、タOガースのユニホーム、帽子を着ていた。
両手には既にメガホンを持っており、完全に応援モードだ。
それは別にいいんだけど………
「「「「六O〜おろしに〜さあ〜そう〜と〜」」」」
ジャOアンツファンが多いこの地点で歌うのはやめてくれ…………
あっちのおっさんの視線が痛いよ…………
そんな感じで、俺の胃は終始キリキリしていた。
「やっと着いたな」
席自体はタOガースファンに囲まれた外野席。
ここなら歌おうが好きにしていいんだが…………
「「「「……………」」」」
「どうしたんだよ?」
「歌ってて疲れた………」
何しに来たんだこいつら……………
席に座って、だれている4人。
「はぁ………取り敢えず飲み物と何か食べ物買ってくるから、何がいい?」
「あっ、私も行きます」
キャロが立ち上がり、俺の隣にやってくる。
「僕コーラ」
「私オレンジジュース」
「豆乳…………」
「ルーちゃん、流石に豆乳は無いと思います…………」
ルーテシアは何故か豆乳にハマってしまい、大抵豆乳を飲んでいる。
「じゃあ、セインと一緒でいい」
「分かった、食い物はテキトーに買ってくるから文句無しな」
そう言って俺はキャロを連れて売店へ向かった。
「あちゃあ、人がいっぱいだな…………」
売店の前には行列が出来ていた。
恐らく試合前に買う算段なのだろう。
「キャロ、少し並ぶ……………ってキャロ………」
キャロはいつの間にかその隣の売店に行っていた。
「どうしたんだ、キャロ?」
「これ……………」
そう言って指を指したのは、今巷で流行りの野球カードゲームのカードだった。
ゲームセンターにあるゲーム機器に読み込ませ、使うものだ。
どうやらこれは球場限定みたいで、他では買えないらしい。
しかし…………
「これ、ジャOアンツの選手だけじゃないのか?」
「うん、そうみたい……………」
シュンとするキャロ。
どうにかしてあげたいけど、こればっかりはな…………
「そんなに悲しむなよ、限定じゃなくて普通のも売ってるからそれを買おう」
「いいんですか?」
「ああ、それくらい何でもないよ。それでどれがいい?」
「あっ、え〜っと…………」
慌ててカードパックの中を漁るキャロ。
俺も昔はよくやったもんだな……………
「お兄ちゃん、これにします!!」
どうやら決めたようだ。
せめてタOガースの選手位は出て欲しいんだけど…………
「…………………あっ!?」
そう言ってキャロは1枚のカードをじぃっと見ている。
「何か当たったか?」
「はい!!ピッチャーの藤河です!!」
おおっ、タOガースの守護神、藤河か!
しかもキラキラが半端ない。恐らく一番レア度が高いやつだろう………
「見てください、ステータスも凄く高いです!!」
そう言われて見てみると確かに高い。
E〜Sのステータスでスタミナ以外全てA以上だ。
他のカードと比べても全然違う。
「良かったな、キャロ」
「はい!!」
キャロにしては珍しくぴょんぴょん跳ねながら全身を使って喜んでいる。
まあ、直ぐに恥ずかしくなったのか、顔を赤くしてやめたけど…………
「それじゃあジュースを買ってさっさと戻るか。キャロ、無くさないようにしっかり持っとけよ」
「はい」
俺とキャロは前より減った行列に並び、飲み物などを買った。
「ただいま」
「遅いよ〜!!」
着いた瞬間文句を言ったライだが、直ぐに目線はグラウンドへ向く。
ちょうど、今タOガースがシートノックをしていた。
「上手…………」
「綺麗だね!」
「僕だってあれくらいは…………」
プロと競うなよライ…………
「お兄ちゃん、ハイ」
「ありがとうキャロ」
そんな3人とは別に、俺とキャロは買ってきたホットドックを仲良く食べてました。
「プレーボール!!」
時間も6時になり、試合が始まった。
「頑張れー!!タOガースー!!」
初っ端からメガホンで応援するライ。
一生懸命なのは見て明らかだ。
「せめて、今日は勝って欲しいな…………」
そんなことを呟き、俺も久しぶりの野球を楽しむことにした。
試合は2対1とタOガースがリードで進んでいった。
「ううっ……………」
昨日と似たような展開。
9回でツーアウトランナー2,3塁。
一発が出たらサヨナラって場面だ。
さっき、キャロが当てた藤河がマウンドに上がっている。
明らかにボール先行でどうも調子が悪そうだ……………
「ボール!!」
これでカウントは1ストライク2ボール。
「頑張って……………」
隣を見ると、キャロがさっきのカードを握り締めている。
「キャロ…………」
「ボール!」
これで1ストライク3ボール。
「頑張れ!負けるな!!」
「頑張れ藤河!!」
「負けるな………!!」
キャロ以外の3人も一生懸命応援している。
「ストライク!!」
これで追い込んだ。
しかし、さっきまで150キロを下回っていたストレートが151キロと本来のスピードに戻っている。
……………声援が届いた!?
「いけー!!藤河!!」
キャロが今までで一番大きい声で応援した。
そして、最後の一球。
ズバーーーン!!
「ストライク!!バッターアウト!!」
本日最速154キロのストレートで藤河がバッターを三振に取って、タOガースは連敗を5でストップした。
「いや〜本当に良かった!!」
「そうだね、やっと連敗脱出出来たね!ここから巻き返せば充分首位を狙えるね!!」
「ルーの声援のおかげ!」
「いいから静かに食べろよ………」
俺達は近くにあったラーメン屋で遅めの夕食を食べていた。
「よかったな、藤河がしっかり抑えられて」
「はい!!最後のストレート、とっても速かったです!!」
箸を持ちながら嬉しそうに言うキャロ。
ずいぶんご機嫌だ。
他のみんなもタOガースが勝ってテンションが大盛り上がり。
不機嫌で帰る事にならなくて本当に良かった。
だけど……………
「こうなるんだよな……………」
電車で帰る途中俺以外みんな寝てしまった。
幸い、東京駅からコッチに帰ってくるまでは乗り換えをしないので問題ないが、ちゃんと起きて歩いてくれるかなコイツら………………
「すぅすぅ…………」
「くぅ…………」
「むにゃむにゃ………」
「くーくー…………」
「まあ、勝って良かったな、タOガースファン」
4人の寝顔はとても満足していた。
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