ドリトル先生と奇麗な薔薇園
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第八幕その八
「今ね」
「植物学者でもある先生のですね」
「そうなるね」
「そうですね、では」
「僕は演劇や芸術の論文も書くけれど」
こちらの論文もしっかりと書いている先生です。
「けれど専門家かというと」
「そうじゃないですか」
「演出家でも監督でも役者でもないよ」
専門家ではないというのです。
「舞台を観ることは好きでもね」
「それでもですか」
「うん、専門家ではないからね」
「アドバイスだけですか」
「うん、ただね」
「お花をですか」
「効果的に使ったら」
それが出来ればというのです。
「抽象的でお金をかけないものでもね」
「いい演出が出来ますか」
「そうじゃないかな」
「それじゃあ」
悠木さんは先生の言葉に頷きました、そしてです。
そのお話を聞いてからローズティーを一口飲んで言いました。
「そういえばマリー=アントワネットはカーネーションとも関係がありましたね」
「うん、そうだったね」
「それにジャガイモのお花をあしらったドレスを着たり」
「フランスにジャガイモを普及させる為にね」
これはフランスの人達がジャガイモを食べてお腹一杯になる為のことでした。
「そうもしているよ」
「お花と縁が結構ありますね」
「当時のフランスはね、それにね」
「それに?」
「ベルサイユの薔薇の後の作品だけれど」
それでもとです、先生は前置きしてお話しました。
「エロイカがあるね」
「同じ作者さんの作品でしたね」
「そう、ナポレオンを主人公にしたね」
イギリス人である先生にとってはイギリスがとても苦しめられた強敵です、最後は勝つことが出来たにしろ。
そうしたことも考えつつです、先生は悠木さんにお話しました。
「あの作品もあったね」
「ベルサイユの薔薇にもちらりと出ますね」
「そう、そしてナポレオンもだね」
「お花の逸話がありますか」
「皇后のジョセフィーヌも薔薇が好きでね」
ナポレオンがこよなく愛したこの人もです。
「そして菫が好きでナポレオンもね」
「菫が好きですか」
「何しろ菫が象徴となっていた位だよ」
そのお花がというのです。
「菫伍長と言われていた位で」
「そうだったんですね」
「とにかくね。お花をね」
これをというのです。
「効果的に使うとね」
「いいですね」
「うん、そう思うよ」
「わかりました」
悠木さんは先生のそのお言葉に頷きました。
「先生にお話してみます」
「そうしてくれると嬉しいよ」
「そうさせてもらいます」
悠木さんは先生に笑顔で応えました、そのうえでローズティーを飲み終えてから研究室を後にしました。その後で。
動物の皆は先生にこんなことを言いました。
「菫だったんだ」
「ナポレオンは菫が好きだったんだ」
「そうだったんだね」
「そうなんだ、それで本当に象徴になっていてね」
菫がナポレオンのです。
「後で王政が復古した時に菫はフランスでは避けられていた位なんだ」
「そうだったんだ」
「そんなに菫と縁がある人だったんだ」
「派手好きなイメージがある人だけれど」
「軍服もあんなに青くて派手にしていたのに」
「ははは、軍服を言うと我が国もだね」
先生は皆に笑って返しました。
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