ドリトル先生と奇麗な薔薇園
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第八幕その七
「再現出来ないのですが」
「そうだね、それならね」
「何か解決案がありますか?」
「僕にそのことで相談に来てくれたんだよね」
「はい、先日のお話のこともありまして」
植物園の薔薇園のそれです。
「ですから」
「それで、だね」
「演劇部の顧問の先生ともお話をしていますが」
「そちらの先生はどう言ってるのかな」
「はい、先生は実はです」
その先生のお話はといいますと。
「ここは抽象的にしようとです」
「言っているんだね」
「はい、あえて凝らずに」
「あれだね、ドイツの歌劇でも多い」
「ええと、確か」
ここで悠木さんが言うことはといいますと。
「ワーグナーの作品でよくある」
「リヒャルト=ワーグナーのね」
ドイツを代表する音楽家です、その作品はバイロイトという場所にある歌劇場で専門的に上演されています。
「ああいった感じでだね」
「そうしていこうかとです」
「そうだね、お金の問題はね」
「どうしてもありますから」
「それを忘れてはどうしようもないから」
本当にお金は大事です、このことを放置したり忘れたりしては作品は動くことも何もあったものではありません。
それで、です。先生も言うのです。
「だからだね」
「はい、今本当にです」
「お金のこととも相談して」
「考えていますが」
「僕hとしてへ」
先生は悠木さんに穏やかなお顔で答えました。
「先生のお考えでね」
「いいとですか」
「うん、そちらの顧問の先生のね」
「抽象的なもので」
「そう、現代風といえばあれだけれど」
「舞台をあえて簡素にした」
「そうしたものでいいと思うよ、ベルサイユ宮殿なんてね」
それこそというのです。
「物凄い豪奢な場所でね」
「再現するとなるとですね」
「物凄いお金がかかるからね」
「そうですよね」
「ベルサイユの薔薇は前にも上演してるのかな」
先生は悠木さんにこのことも尋ねました。
「どうなのかな」
「はい、していますが」
「そうなんだ」
「はい、二十年位前だそうです」
「もう僕達がこの大学に来るずっと前だね」
「その頃のことですが」
それでもというのです。
「上演しています」
「それじゃあその時は」
「はい、どうもその時もです」
「抽象的だったんだね」
「そうでした」
「そうだね、よく見れば宝塚の上演もね」
ベルサイユのそれもです。
「舞台は抽象的な場合も多いね」
「そういえばそうですね」
「だからね、ここはね」
「もう抽象的でいいですか」
「お金のことを考えると難しいから」
ベルサイユ宮殿の再現等はお金がかかるというのです。
「だから先生のお考えでいいと思うよ」
「そうですか」
「うん、ただね」
「ただ?」
「いや、主人公オスカルは薔薇といっても白薔薇でね」
登場人物のことをお話した先生でした。
「そしてマリー=アントワネットは赤薔薇だそうだから」
「ベルサイユの薔薇の中で」
「そこはイメージすべきかな」
「薔薇をですか」
「タイトルにもあるしね」
「成程、それはですね」
「僕がちょっと思ったことだよ」
こう悠木さんに言うのでした。
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