ドリトル先生と奇麗な薔薇園
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第八幕その六
「そうして」
「座っていいですか」
「うん、いいよ」
悠木さんに笑顔で言います。
「そうしてね」
「そしてですか」
「お茶も出すから。丁度ね」
笑顔でさらに言う先生でした。
「ローズティーもあるしね」
「ベルサイユの薔薇だからですか」
「そう、薔薇のね」
「お茶ですか」
「それを出させてもらうよ」
「すいません」
「お礼はいいよ、とにかくね」
先生は悠木さんに研究室のテーブルに座ってもらってからさらに言うのでした。ローズティーは動物の皆が用意しています。
「ベルサイユの薔薇は」
「漫画ですね」
「うん、日本のね」
「舞台のことなので」
部活のというのです。
「皆でお話をして」
「そしてだね」
「はい、この作品にしようとなったのですが」
「それで稽古をしていたんだね」
「この前の稽古では別の作品でしたが」
「ベルサイユの薔薇もなんだ」
「上演することになっていまして」
それでというのです。
「稽古もはじめたのですが」
「迷っているのかな」
「はい、何かこうです」
悠木さんは困っているお顔で先生に言いました、ここでローズティーが出ました。
「ベルサイユの薔薇らしい」
「そうしたことがなんだ」
「出せない感じがしまして」
「悩んでるんやな」
「何かです」
「もっとベルサイユのだね」
「あの豪奢な感じを出せたらと」
悠木さんは真剣に考えるお顔で言うのでした。
「考えているのですが」
「ううん、どうしてもね」
先生は悠木さんに答えました。
「難しいところがあるね、舞台だと」
「そうですね、漫画ではです」
「ベルサイユ宮殿を描いているからね」
その背景にです。
「だからベルサイユにいるって感じがするけれど」
「そうですよね」
「けれどね」
「それが、ですね」
「うん、宝塚でもね」
ベルサイユの薔薇を上演しているこちらではです。
「見事に舞台に再現しているね」
「そうですね」
「うん、けれどね」
「大学の舞台では」
「お金の事情でね」
「どうしても出来ないです」
「衣装はあるよね」
そちらはとです、先生は悠木さんに答えました。
「そうだよね」
「はい、歌劇部との共有ですが」
「当時の貴族の衣装もあるからね」
「軍服もあります」
オスカルが着ているあの豪奢なものもというのです。
「そちらは大丈夫ですが」
「それでもだね」
「肝心の舞台ですが」
「それだね、宮殿をだね」
「はい、それがです」
どうしてもというのです。
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