見える世界は、私にとって・・・
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第二章
本当の心
前書き
「……見え透いた嘘を付くんだな」
再会は、「予想外」を引き起こす。
目の前を覆った霧が晴れると、そこは深淵の森となっていた。
しかし、先程までと違い、奥へと続く一本道が露となっている。
森は認めたのだろう。エレトが魔女に会うに相応しい者だと。
だとしたら、この一本道を辿れば、先に待つのは破滅の光。
罠かもしれない。再び心を惑わせようとしているのかもしれない。
そんな疑いを持っていたにも関わらず、エレトは前へと歩み始めた。
たとえ先に待つものが何であろうと、エレトの信念は揺るがない。
孤高の剣士に、躊躇いなど無いのだ。
一体、どれ程歩いただろうか。
延々と続く同じ景色に、エレトは少し溜め息を付く。
もしかしたら全く時間が掛かっていないかもしれない。もしかしたら、かなりの時間が掛かっているかもしれない。
もう終わっても良いだろうと思った矢先、突然視界が開けた。
辿り着いた場所は、中央に巨大樹が生えた、木々に覆われた平たい地。
深淵の森とは思えない鮮やかな草木が生えており、地面は白い花で覆われている。
空を覆う木々からは、暖かな木漏れ日が差し込んでいる。
夢の世界と疑ってしまう程に、その場所は美しかった。
予想外の景色に、エレトは戸惑う。
本当に、此処にあの残酷な魔女がいるのだろうか?
「まさか私のいる場所がこんなに美しいとは、思って無かっただろ? 」
頭上から声が聞こえ、咄嗟に顔を上げる。あの聞き覚えのある声だった。
巨大樹の枝に腰掛けている、背中まで伸びている真っ白な髪の女性。
金色の筋が入った白いローブを着て、真っ白なブーツを履いた足をユラユラ動かしている。
この精霊の様な輝きを持った女性こそ、破滅の光を司るあの「魔女」なのだろう。
エレトは魔女を睨み、静かに剣を鞘から引き抜く。
「お前が……破滅の光を司り、人間を無差別に殺す魔女だな? 」
エレトの言葉を聞いた魔女は、深紅の瞳を糸の様に細め、ニヤリと笑った。
「あぁ、あの時の人間か……よく忘れなかったな」
「忘れる訳が無い。お前が俺にあの時を刻み付けたからな」
エレトは持つ剣の先を魔女に向け、構える。
それを見た魔女は笑みを消し、呆れるかの様に溜め息を付いた。
「まさか……此処で私と戦うつもりか?
戦うと言うなら、此処では無い所でやらせてもらうからな」
「此処での戦闘は、自分にとっては不利だからか?」
「…………此処は私の思い出の地だ。
赤の他人に怪我されるのは気に食わない。まぁ、誰であろうと気に食わないけどな。
魔女にとっての宝物を汚せば……お前なんて一瞬で煙にしてやるよ」
魔女のあまりにも信じられない発言に疑問を抱いたエレトは、剣を鞘に納めた。
「……お? どうした? 私の威圧を前に戦意喪失でもしたのか? 」
ケラケラと笑う魔女を前に、エレトは静かに、呟く様に言った。
「お前は……そんな事言っておいても尚、破滅を望むのか? 」
直後、魔女が驚いた様子で目を見開き、ユラユラと動かす足を止めた。
「破滅の光なんて呼ばれている奴が、場所を気にする筈が無い。
無差別に人を殺すのにだって、理由があるんだろ? 」
少しの間、沈黙が訪れる。
しかし、その沈黙は、魔女の笑う声によって破られた。
「ははっ……ははははっ……何だよ、お前…………
私は魔女だ。破滅の光だ。人間を殺して何が悪い?
……あぁ、もういい。気が滅入った。
お前、この森から出ていけ。そして二度と戻って来るな。殺さないでおいてやる」
「答えろ」
「はぁ? 答えなんか無い。人間が憎いから殺すんだ。
理不尽で、自分勝手で、どうしようも無い人間が嫌いだ、嫌いだ」
魔女は苛立ったのか、枝に足を置いて立ち上がる。
しかし、エレトは怯むこと無く、魔女を睨み続けている。
「……見え透いた嘘を付くんだな」
この言葉が空間に響いた直後、魔女から閃光が走り、景色は一瞬にして光に呑み込まれた。
「五月蝿い……お前、私の何が分かるんだよ。
生きていた私を知っていたとでも言うのか? あ? 知らないだろ? 知ったかの様に口をきくな!
クソッ……もうお前とは逢いたくない。じゃあな」
真っ白に染まった景色に、その言葉は吸い込まれていった。
後書き
はい、かなり遅くなっての更新です。
戦わずに終わらせてしまった・・・なにやってんだ自分・・・
で、でも、後から沢山あるので、何とかなりますよね。多分。
次回に、期待です!
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