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見える世界は、私にとって・・・

作者:ミルラ
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第一章
  惑い、断ち切り

 
前書き
「嫌いなの……? 」

欺く者は、来訪者に問う。 

 
深淵の森。

昔は木漏れ日が暖かく、美しい森林だった。

降り注ぐ太陽の光は生命を育み、輝く森林は生物を魅了した。

しかし、魔女が姿を此処に眩ませてからは、濃い霧が覆うおぞましい森へと化した。

深淵の森は、来訪者に問う。ありとあらゆる問いを。

答えなんて無い。最奥へ進む者達を嫌うから。

答えを見つけ出せない人間に、選ばれる道は二つ。

永遠に迷うか、殺されるか。

森は求める。答えを導き出す人間を。

最奥に佇む支配者と言葉を交わすに、相応しい人間を。



「魔女」と出会うに、相応しい者を。



視界を遮る霧が、森を暗く、恐ろしく見せる。

深淵の森の入口でエレトは立ち止まり、顔を上げる。

暗く、深い、深淵。普通の者であったら、躊躇うだろう。

しかしエレトは、恐れを見せない。寧ろ、目を細めて見ていた。

そして、躊躇いも無く足を踏み入れると、濃い霧の中へと消えていった。



霧に覆われた森は、日光を浴びていない。

それなのにも関わらず、木々には葉が生い茂り、草木は地面を覆っている。

しかし、葉の色も草木も、昔の穏やかな緑では無い深緑一色だった。

そんな森を、エレトは前へ前へと歩く。


しかし、ある程度歩いた所で、ふと歩みを止めた。

すかさず耳を澄ませる。

風も無いのにザワザワと揺れる木々。その音と共にある「声」が聞こえた。

『来訪者? 来訪者? 』

『アァ、来訪者。コレデ何人目ダロウカ』

『初メマシテ。深淵ヘヨウコソ』

『ワザワザ、迷イニ来テクレタンダネ』

子供の様な声は、嘲笑うかの様に言葉を投げ掛ける。

エレトは目を閉じると、静かに開く。

「迷いに来た? 馬鹿馬鹿しい。
俺はエレト。魔女を倒し、故郷に平和をもたらす為に来た。
姿を現せ。一瞬で終わらせる」

エレトがそう言うと、沈黙が訪れた。

しかし、直ぐさま嘲笑う声が響く。

『オ馬鹿サン。オ馬鹿サン。本当ニ分カッテナイネ』

『オ馬鹿サン、問イヲ君ニ言ウヨ。答エテミセテ』

嘲笑う声が止み、道が現れる。

霧が、木々が、横に動き、エレトに道を空ける。

エレトは不機嫌そうな表情になると、開かれた道を歩み出した。



歩いていると、突然視界が広がる。

眩しい光が視界を包み、エレトは片手で目を覆う。

光が止み手を退けると、そこは一つの家だの中った。

エレトは、鏡に映る少年をじっと見つめる。

間違い無く、過去のエレトだった。



「お兄ちゃん」

少年の姿になったエレトに、小さな少女が抱き付く。

横目で見ると、少女は抱き付いたまま顔を上げた。

「お兄ちゃん、ユニと遊ぼっ! ユニ、お兄ちゃんと遊びたい! 」

輝く様な笑顔で、少女……ユニが言う。

エレトはユニに何も言わず、目を閉じる。

目の前にいるのは、病で無くなったユニ。

その大切だった妹が、元気にエレトの手を引いて家から出ようとしている。

手を握られている感覚は本物で、目の前にいるのは幻じゃない。

このまま家から出れば、青い空の下、両親が笑顔で待っているのだろう。



だが、

エレトは、動かなかった。

それどころか、睨むかの様にユニを見つめる。

エレトの異様な目付きに気付いたユニは、弾かれる様にエレトから離れる。

「……お兄ちゃん? 」

冗談だと思っているのか、ユニが笑顔で呼ぶ。

しかし、何も喋らずにいると、その顔から笑みが消えていく。

「……お兄ちゃん、どうしたの? 怖いよ……
ユニ、何か悪い事した? ユニの事、嫌いになったの? 」

ユニ顔から血の気が引いて、震え始める。

「嫌いなの……? 」



「……あぁ、俺は「今、目の前にいるお前」が嫌いだ」

「……何で? 」

ユニはエレトが放つ威圧が恐ろしいのか、涙目で聞いてくる。

無力な子羊の様なユニに、エレトは静かに言った。




「この家から俺を出し、心から殺そうとしているからな」




直後。

先程まで涙目だったユニの顔が、不気味な程に歪み、笑う。

『ソレガ答エ? 答エナノ? 』

ユニの口からあの嘲笑う声が聞こえたその時、




エレトは、側にあった剣を鞘から引き抜き、

不気味に笑うユニを、容赦無く両断した。

真っ二つに割れたユニの体が、生々しい音を立てて床に崩れ落ちる。

床が血で染まるのをエレトはずっと見つめていた。




自分の視界が、霧で覆われるまで。 
 

 
後書き
書きました。深淵の森攻略。
最後の部分は、人によっては残酷です。多分。
ちなみに、エレト以外の来訪者も同じような物を見ますが、
惑わされなかったのはエレトが初めてです。理由は次で少し分かりますよ。

次回に、期待です! 
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