ソードアート・オンライン〜Another story〜
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マザーズ・ロザリオ編
第263話 文化祭Ⅲ 楽しい? お化け屋敷
前書き
~一言~
ふぁーー! 今回も速めに投稿出来て良かったですぅ!!
コメントをしていただける人が増えて、テンションが上がったから! でしょうか?? ……………い、いえいえ、催促~ とかじゃないですよ?? 苦笑 ずっとくださってる読者様もいますし…… そーいうのは、アレかなぁ、と思ってますし……。
それに何より いつも、いつまでも速め投稿 約束出来ないと思いますので………… 涙涙 特にもうちょっとしたら メチャ忙しくなるのです……… 悶絶
それはそーと、今回のお話。元ネタはコミック版のホロウ・リアリゼーションですねw ちょっと安直でしたが、あの話好きなんですよ~w
あ、後作中では描写なしですが、お化け屋敷での一番怖い部屋は、現実の映画である『リ〇グ』や『着信ア〇』系を考えてました。
……その話、作者じーくwにとってもトラウマ級ですから、レーナちゃん がどーなっちゃうか、火を見るより明らかなので、お蔵入りです ( ´艸`)
そしてそして、文化祭のお話はこれにて終了です。お化け屋敷に出てた マシン……ってもうお分かりでしょうか? 勿論 《アレ》でございまするw
最後に、この小説を見てくださってありがとうございます!! これからも、ガンバリマス!
じーくw
文化祭で一緒に回った。笑顔が絶えなかったのは言うまでもなく、レイナもリュウキも心から文化祭と言うものを満喫した。リュウキにとって初めての文化祭と言う事もあり、ひとつひとつの反応が新鮮でレイナにとっても新たな心持ちだった。
そして文化祭。
ここのは規模がそれなりに大きく、クオリティもそれに比例して高い。やはり次世代の学校のモデルケースである、と言う事を改めて実感できると言うものだった。要所要所に高精度のAIを存分に使った機能の数々があり、案内板の表示には、まるでSAO時代に幾度となくみたクリスタル・スフィアを使って表示を可視化させている所だってあった。
元々、キリトのメカトロニクス・コースと言った様に、様々な分野のコースに分かれて学習をしている為、それらの応用版を皆盛大にこの文化祭で活かしているのだろう。
「ふわぁぁ……、やっぱりすごいねー。リュウキ君、ここって現実世界だよね? ね?」
「んー……えいっ、と」
「ふぇっ……?」
リュウキはレイナの頬を笑いながら 抓むと、ゆっくりと引っ張った。先程の喫茶店でのやり取りのお返し、と言った意味も多少なりあるだろう。
そして、勿論 滅茶苦茶優しくしてくれているからか、レイナはちっとも痛くないんだけど、リュウキの笑顔を、ここまでの至近距離見たらそれどころではなかったかもしれない。
そして 粗方満足した様で、ぱっ とリュウキは手を放すと改めて聞く。
「ここは現実、だろう?」
「え、えへへへ……。うんっ! でもね……」
レイナはニコリと笑ってはいるのだが、頬をぷくっ と膨らませた。
「いきなりびっくりしたんだよー? リュウキ君っ!」
膨らませたのは一瞬だけだった。直ぐに表情が綻ぶ。柔らかくなった。
「ふふ。それに私はねー、その確認の仕方より、こっちの方が好きっ!」
ぴょんっ、とレイナはリュウキに飛び込む。その腕をとって身体を密着させた。
其々互いの匂い、温もり、鼓動……。確かにALOやSAOでも感じられる事は感じられたが、やはり情報量では圧倒的にまだまだ現実世界の方が勝っている。
言葉では言い表せない、数値では まだ決して再現できない程の膨大な情報量が瞬時に脳内に入ってくるのが判る……、と難しく考えそうだったリュウキは、頭を軽く振って、現実のレイナも、仮想世界のレイナも同じだと強く思って、笑った。
「間違いなく現実……だね? リュウキ君はどう?」
「そうだな。現実だ。間違いなく。……それに、オレもこっちが良い。……ん」
「あはっ。私もだよ」
互いに互いを抱き寄せる。
この場に誰もいなくて良かった……と思ったのは、それから数分後の事だった。……隠れて見られていたかもしれないが、とりあえず 2人は気付いてないので良しとしよう。
お互いが忙しい身だった筈だ。
レイナは家庭の事情で、リュウキは自身の仕事で。
現実世界ではそれぞれの事情で、今の様に中々触れ合えなかったと思う。仮想世界ででは確かに皆で沢山遊んだ。突貫でボス攻略までしてしまったり、仲間内だけでなく多種族を巻き込んだ盛大なパーティーも開いた。 楽しかったと言うのは嘘偽りない気持ちだが、2人きりの時間、と言うのが多かったワケではないだろう。森の家で一緒に過ごした時間も……。
ひょっとしたら、レイナは 彼女たちより少なかったかもしれない。必ず誰か他の人がいたかもしれない。今思い返せば不憫に感じる所が多々あるものの、本人が今幸せそうだからそれも良しとしよう。
その後は沢山見て回った。
途中で合流したりしてしまったが……、それまでに、リュウキと沢山楽しめたから、とレイナは納得。……自分で自分を納得させた。
それは兎も角一部ではあるが紹介しよう。
体育館を贅沢に使った《高難易度・迷宮ラビリンス》。
十数年間連続金賞受賞の超優秀な学校の吹奏楽部を招き、その演奏をBGMに繰り広げられる《社交ダンス》
本格的な雰囲気が何処となく流れて、的中率がやばい!(らしい)《占いの館》
………etc
体育館の迷路は、SAO-ALO-GGO と数多の仮想世界を踏破し続け、幾度となく突破し続けてきた自分達。その自信がレイナにもあり、自他ともに認めていたから、先ずはソロコース、と言う事で レイナが先に意気揚々と足を踏み入れたのだが……、蓋を開けてみれば、どの仮想世界にも負けずと劣らない物凄い迷路だった。
迷いの森を彷彿させるのか、左手の法則を利用して どうにか頑張ったのだけど、時間オーバーになってしまった。
リュウキはネタバレ……と言った様に ここの仕掛けについては知っていたから、踏破は問題なし。当初はレイナは少々悔しそうにしてたが、知っていたことを聞くと、今度は『ずっるーい!』 と頬を膨らませたりしていた。
知っている事と踏破できる事はまた別なのだが、『リュウキくんなら それだけでもじゅーぶんでしょ?』と言われたりしていた。
この迷宮の肝は とある試作型マシンにある。その開発部門にて、色々と貢献しているリュウキだから、試作品を提供して頂く事が出来たりする。勿論、お客の満足度やその他諸々のデータの提供して、互いにとって益があったりするのも当然。色んな所に引っ張りだこなリュウキの手を借りれている時点で、企業側は全く惜しまない姿勢を示している、と言うのも相変わらずである。
社交ダンスの場では、プロダンサーを実際に呼び、実演してもらう形で実際に体験もすると言うものだ。勿論衣装関係はばっちり用意して貰って、ダンスのパートナーは当然ながらレイナはリュウキとだ。
『私と踊っていただけますか?』
手を差し出されるリュウキ。
ダンスの経験はないのだが、どんな事でも挑戦。新たな事を覚えるのはリュウキは好ましい。その相手がレイナであれば尚更だろう。
いつの間にか 来ていたシノンやシリカ、リズ、アスナやキリト。次は自分~ と手を上げて乗り込んできた。それだけ形になっていて優雅に見えたからだろう。
最終的には全員と一緒に踊って良い汗をかけた。
そして占いの館……。
勿論占ってもらうのは将来の事。
所謂、相性占いということだ。2人で占ってもらって、その結果で色々な賞品がもらえたりする。簡単な賞品だったり、豪華な賞品だったり……。つまり相性が良ければ良い程 良いものがゲット出来る、と言う事だ。
ここにも当然! ながら沢山の乙女達が我さきにと集まり、クラインも嗅ぎつけてきて一悶着。エギルはただただ笑っていた。アスナやレイナの肩のプロープからは『ボクもしてみたいなー』や『……私も』と言った声が上がり、それに少し遅れて聞えてきたのは『私もパパやママ、お兄さんやお姉さんと一緒に占って欲しいですっ!』と是非とも叶えて上げたいと心から思う少女達の声も聞こえたりしていた。
さてさて、その占いの結果がどうだったのかは……、其々の個人情報の観点から黙して語らずとしておこう。何れまた似た様なイベントがあれば……語られるかもしれない。
そしてそして…… これら以外にも沢山回ったが、次の場所が一番本日印象が強く、一番……ある意味大変だった出し物。造りは他と同じ。非常に凝った作りをしていて、某大型遊園地も真っ青な出来。謎を解いていきゴールに到達すればクリアと言うアトラクション。
それは某姉妹が最も苦手とするジャンル。
「えっへっへ~ どーすんの? 2人とも」
「う、うぅ…… わ、判っていってるでしょ? リズっ!」
「リズさん、酷いよぉ……」
リズの挑発もこの時ばかりはなかなか乗れないのがアスナとレイナ。
そう、ここまで説明すればもうお分かりだろう。つまり『お化け屋敷』である。
似たモノ姉妹なアスナとレイナは、共にお化けが大の苦手だ。自棄になったりして頑張って突入する! と言った感じで何度か足を踏み入れたりはしているのだが、決まって最後は後悔する。大大後悔する。最早お約束か! とツッコミ入れたいくらいにだ。
入り口の時点で顔が真っ青になってしまう2人だった。
「ん……、お化け屋敷~学校の怪談~、か」
「リュウの字も興味津々ってトコか。レイナちゃんを守ってやれよ? しっかり」
「……まずレイナが入るかどうかわからないだろ?」
クラインにそう返すリュウキ。顔を真っ青にさせてるレイナやアスナを見て、『さぁ、入ろうか』とはなかなか言えるものじゃない。リュウキなら言えるだろ? と思いがちだが、リュウキは しっかりと空気を読んだ上でのSだ。
今はリズに色々やられてるし、何より追い打ちをかける様な空気ではない、と判断した様だ。
「それにしても随分とまぁ、ベタな名だな」
「シンプルイズベストだ、クライン。色々と情報を集めてみたが……、相当ヤバめらしいぜ」
にやり、と笑って言うエギル。そのあくどい笑みこそが怖いと思うのだが、この中で最年長大人なエギルがそこまで評するとなると、それなりに身震いするものがあるのだろう。
子供達もそれなりに多い文化祭だが、その倍以上は学生から大人。それにちゃんとコース分けをしている様で、子供には子供仕様なお化け屋敷へと早変わりするとの事だ。
因みに子供が背伸びして、大人なお化け屋敷コースを選んでしまったら……その数秒後に響くのは大号泣、泣き声である。
「情報を集めるって……、クエか何かと勘違いしてないか? エギル」
「あー、まぁ 良いじゃねぇか。期待に応えてしっかり情報収集したんだからよ。それにしても、試作型とは言え最新のウェアラブル・マルチデバイスか。やっぱリュウキの顔の広さは半端じゃねぇな」
「ん……。それ以上にここの学生たちの向上心、意欲が凄いとも言えるな。先方も満足度が常に高評価続出だ。でも なければ、そう簡単に仲介はしないよ。責任や信用にかかわるからな」
「確かに。それもそうだな」
企業への紹介。学校側と企業側の間に入り、色々と行っているリュウキ。幾つかの紹介と成果の積み重ね。それはリュウキの力ではなく紛れもなくここの学生たちの実力。それがあっての幅の広がり、世界の広がりだ。
「このデバイスは、アミュスフィアに対抗する……と謳っていて、まだまだテスト、改良を重ねて、年内には発売予定らしい。正式な名とデザインはまだ決まってないが、先行体験と思ってくれて良いと思うぞ」
リュウキがひょいと取り出したのは、イヤホンマイクの様な形をしている物。
まだ、リュウキの言う通り名は決まっておらず、アミュスフィアとは決定的に違うのは、これはフルダイブ機能を完全廃止し、その代わりに組み込んだのはAR(拡張現実)機能。あの事件もあって、まだまだVRに抵抗感が世間では広がっているが、これは覚醒状態で使用できる故に安全性は勿論の事利便性も高い為、非常に期待されている代物だ。
「AR《拡張現実》か。……ま、そうでもしないと、このサイズの教室でお化け屋敷って限界があると思うし、脅かそう、怖がらせよう、と思ったら そっち方面になるわな。子供たちも沢山いるから VRじゃ中々手が出にくいと思うし」
「ああ。だが、その完成度、体感はVR技術に迫ると言って良い。評価も上々だからな」
「ふーん……。それは少しだけ楽しみだ」
キリトも最先端の技術には当然ながら興味津々の様子だ。
ただ、1つ懸念があるのは、VRとARの違い。仮想世界と現実世界の違いについてだ。身体を動かす以上、仮想世界と違ってモノを言うのは、紛れもなく自分の体力。脳内の強さ、精神力が最大級に活かされるVRとは畑違いも良い所だから、それとなく不安もあるのだ。
つまり――また、色々と差を付けられる、かもしれないと言う所。
「お兄ちゃんも運動不足だー、って言われてるしね? これでフィットネスって言うのも面白いかもしれないよ?」
「う……」
リーファがキリトにズバリと言う。……完全な図星である。
「ま、まー、それよりもさ! 入ってみないか??」
話題を変えようと、キリトがくいっ、と指をさしてそう言うけれど、当然ながら1秒も経たず返答が2人の姉妹からくる
「イヤーーー!!」
「ヤダーーー!!」
左右からきーんっ! とステレオで拒否されてしまった。
耳鳴りがする様で、キリトの耳はそれなりにダメージを被った様だ。
「やれやれ……。でも、ARってちょっと興味あったのよね。……現実世界でも、もっと強くなれるかもしれないから」
そのデバイスを手にするシノン。
仮想世界で力を手にし、軈て現実へとその力が―――と思い戦い続けてきた。
もう、以前の様な事はないが、やっぱり強さはシノンも欲しい。
……彼に追いつけるくらいの強さが。
「私と入ってみる? リュウキ」
「ん?」
シノンがくいっ とリュウキの袖口を引っ張った。
「え、ええ……っ!? な、なら、なら…… わた、わたし、も あ、あぅぅ……」
まさかのシノンの発言に思い切り動揺するのはレイナだ。
でも、このシチュエーションには身に覚えがある。物凄くある。
そう――GGOであった大型アップデート。そして、あのイベント。
楽しくなかった……とは言えない。最後はハッピーエンドだったし、小さな女の子を助ける事も出来た。笑顔でお別れをした。……その部分だけは思い出として心に残ってるけれど、大部分は正直思い出したくない気持ちでいっぱいだ。
「……思い出す?」
「うー……、シノンさんのいじわる……っ シノンさんもやっぱりSだよぉ……」
にこっ と笑うシノンにどことなくリュウキを感じるのは気のせいじゃないだろう。横でリュウキも何処となく笑っていたから。
「ふふ、ごめんごめん。冗談よ。……でも、ARを体感してみたいって思う気持ちは冗談じゃないのよ。最先端の技術にも触れてみたいってすごく思ってる。VRとはまた違った世界……。ちょっとワクワクしてる、って気持ちの方が大きいわ」
いじめモードっぽかったシノンだが、真剣な目をしているのが分かって、シノンの気持ちも判って 落ち着く事が出来たレイナは少しだけ表情を緩めた。
そして、ここでも1人、葛藤している者がいる。
「うぅ……レイ。 わ、私も興味は、あるけど…… お、おばけぇ……」
アスナも色々と興味自体はある様だが、先ほどから言う様に お化けは大の苦手な姉妹。最後の一歩がなかなか踏み出せない様子だ。
「えっへっへー アースナっ、それに レーナも。私が優しくエスコートしたげるからさー?」
「ひゃあぁぁっ!」
「わぁぁぁぁっ!」
後ろからがばっ! と抱き着かれてさぁ、大変。一気に背筋がぴんっ! と伸びきってしまってる姉妹。
「あっはっはっは♪ 2人とも驚き過ぎだって。まだ入り口じゃん? クエストスタートさえしてないのよんっ」
「り、リズさぁん。あんまり過ぎですよぉ……」
明らかに楽しんでるリズを見て、苦言を呈するシリカ。
勿論シリカもオカルト系、つまり お化け屋敷などは無理な部類だ。だからアスナやレイナの気持ちがよく判る。……でも、やっぱり怖いと言う気持ちが一番強いから、なるべく飛び火しない様に……とそそくさと距離を不自然気味にとってたりもしていた。
「リュウキはどうする? 私は入ってみたいんだけど……、で、でも ほら。1人じゃつまらないし、リュウキが関わってるのは判ってるから、色々と説明とかしてくれれば、有り難い……けど」
「ん……」
ここぞとばかりグイグイと攻めてくるシノン。
先程までは レイナに花を持たせた形になっていた。今回、脱落するのなら そこを頂く構えだ。……そして 勿論、早い者勝ちと言うつもりは無い。
最初のウェイター、執事なリュウキのもてなしを少なからず堪能出来た事もあるから ちょっとゆとりが生まれていたりもする。
因みに、リュウキはレイナの時の様なSッ気心が一瞬だけシノンに対して芽生えかけた。何処となくだが 少々感じられたから。1人じゃ行きにくいのでは? と。だが ひとりででも行ける様な感じも同じ以上にしたのだ。求めているのが説明、と言っているところを見ても。
だから、ここでのからかいは封印。……元より、シノン相手に通じるとは思えてなかったから、と言った理由もある。
それがシノンにとって良かったのか悪かったのかは 誰にも判らない。
「……そうだな。ここで使われてる試作マシンについては オレも多少関わりを持っているし、頼まれて監督の様な事も少々していた。アトラクションにして、一般公開もしている以上、ある程度の説明、チュートリアルは設けてあると思うが、実際に一緒にいてやって見せた方が分かりやすいか」
「でしょ? だからお願い。エスコートして貰えるととても助かる」
「ああ、判った。良いよ」
どんどん先に進むのを見て、意を決したのはレイナ。
リュウキ自身も、純粋な頼まれごとを熟してる~ と言う印象だけど、やっぱりもやもや感が拭えないレイナ。だから、意を決した。
「わ、わたしも行くからっ!!」
ぴょんっ と飛びつく様にリュウキの所へとジャンプ。丁度傍にシノンもいる。
「ふふ。あの時の事……思い出すわね」
「うぅ……、こ、今回も守ってよぉ? シノンさーんっ!」
「はいはい」
ひしっ、と抱き着くレイナ。その背中をぽんぽんっ、と軽く撫でてあげるシノン。
まるで姉妹の様に見えるのは気のせいじゃないだろう。
「あまり無茶はしないようにな? いつもオレがレイナに言われているが、今回ばかりはオレが言うよ」
「わ、判ってるよー。だから、リューキくんも私の事、守ってよぉ……?」
「……ふふ。仰せのままに、でございます。お嬢様」
すっ、と綺麗なお辞儀。それを見たリズは。
「あーあ、まーた パーフェクト執事になっちゃったね。綺堂のおじいさん仕込みの」
「……良いですよね」
羨ましいったらありゃしない、と言わんばかりだった。勿論シリカも同じ意見。
「うぅ…… み、みんな行くの……? レイも……?」
「アスナはどうする? ……止めとくか?」
「うー……、キリト君は私の事守ってくれるって言ってくれないんだ……」
「そ、そんな事ないぞ! よし! 滅茶苦茶守ってやる!! 幽霊だろうが悪霊だろうが、ぜーーんぶやっつけてやるって!」
キリトが気合を入れた。色々と負けてられない、と言う気持ちがあるが、少々聞き捨てならない台詞があったので、エギルが横からそっと割って入る。
「あー、キリト? やっつけるってお前、ここお化け屋敷だぞ。クエじゃあるまいし、暴力禁止、おさわり禁止が普通だぞ?」
クラスの皆の出し物。お化けの類を作って開催しているお化け屋敷。そこで、キリトが守ると称して二刀流でも引っ提げて暴れでもすれば、普通に出禁だ。現実世界でそれ御法度、である。
「あ、そ、それもそうだったな……」
「そ、そんなぁ…… されるがままになっちゃうじゃない……」
キリトは納得し、アスナは更に怯える。
そこへリュウキがやってきた。
「一応入る前に少し説明をしておくよ。当然エギルの言う通り暴力禁止……ってこれは当たり前だが、クエって感覚は間違っちゃいないよ。後は入ってみてのお楽しみだ」
リュウキはそう言うと、『先に行ってるぞ』と言い残してシノンとレイナとで入っていく。レイナはアスナにぶんぶん、と大きく手を振っていた。『が、がんばってくるから!!』と叫びながら。
妹が頑張ってるのに、姉の自分が頑張らないでどうするのか、と一念発起だ。ここにはキリトを狙ってる疑惑の高いリズもいたりするから、レイナ同様の危機感も生まれた模様。
次は自分達の番だ、と言う事でキリト達も入る事にしたのだった。
因みにメンバーは、キリト、アスナ、リズ、シリカの四人。
男メンバーのクラインとエギルは、好き好んで野郎同士でお化け屋敷なんか……と言う事で外で待機する事になったのだった。
がらっ、とお化け屋敷の扉を潜り、受付で専用のマシンを借りる。
イヤホンタイプで、それを耳に装着し、パワースイッチを押すと……、あっという間に外観が変わった。現実ででもそれなりに装飾している扉に、妖気? の様なおどろおどろしいオーラが漂い始める。
「これがAR…… 拡張現実ってヤツなのね」
「ああ。最近では色々な所に応用もする為に、テストプレイも設けられている。例えばフィットネスジム。ただ、ルームランナーで走るだけじゃ味気ない、って事で、何かに追われている様な展開にしたりだな。……それと飲食店ででもあるぞ。外観を客に応じて変化させる。山や川、海と言った大自然の中や、果てしない宇宙空間を演出したり、とかなかな。食事面でもカロリー計算、身体データに応じたアドバイス等、幅広く展開していってるよ」
「へぇ……次世代のって感じね。主流になっていきそうな予感がこの時点でしてるわ」
「う、うぅ…… どーせならお化け屋敷~ じゃなくって、そっち方面だけにしてくれたら良いのに………」
リュウキの説明を聞いて色々と納得するシノンと、納得はするんだけど、眼前に広がってる映像が頭から離れないレイナ。
「はは……、ほらレイナ。一番左側の扉はどうだ?」
「ふぇ……? ひだ、り?」
レイナはシノンにぴたっ、と引っ付いたまま、じっ と扉を見た。どこかコミカルな感じで、愛嬌のあるドクロ人形の頭が三つぶら下がってる扉だった。
《学校のお化け(笑)屋敷コース》 推奨年齢12歳以上。
と書かれていた。
雰囲気も他とは全然違う。
特に――
《学校の怪談―………血の惨劇コース》 推奨年齢18歳以上。
に比べたら天地の差。1度見比べただけで、レイナはぶんぶんと縦に首を振った。
「ふふ。まぁ 私達はまだ18は来てないんだし、行けるのは2つだけなんだけど……」
「あそこで! あのこーすでお願いっっ。一番易しいので!!」
「判ってる判ってる」
と言う事で、当然 レイナの希望が通り 一番優しいコースを選んだのだった。
そこでのチュートリアルが行われ バトル要素も含まれているらしく 自分達のHPも画面左上にしっかりと表示された。これが0になったら……。
「ふ、ふぇぇぇ…… の、のろわれ、ちゃうの……? えいち、ぴー なくなったら、のろいころされちゃうの……?」
「ほらほら、落ち着いてレイナ。ただゲームオーバーって事でしょ? 賞品とかお預けになっちゃうって事」
「あ、あぅぅ……」
恐る恐る足を進めていくレイナ。
リュウキはただただ笑っていた。Sな心を刺激されたのかな? と思う様な行動を。 そっとレイナの後ろに近づいて言って、声をかけようとしたのだが、あちら側の出現の方が早かった。
「あ、あわわわわ……! いやーーー おばけーーー!」
「ぶっっ!?」
勢いよくバックステップ、と言うか仰け反った為、レイナの頭がリュウキの口許にHIT。鼻にでもあたってたら、鼻血が出そうな勢い。歯は大丈夫そうだ。 でもこれは、リュウキの自業自得である。
そして出てきたのは、ガイコツのお化け。……ボロボロの学ランを身に纏い、骨になってるのに、ばっちり決まってるリーゼントが特徴的なもの。恐ろしい、と言うよりは コミカルな感じがする。
『がっこーに入りたきゃ―、オレを倒してから入るんだなーー! ふんが―――!』
と言いながら襲い掛かってきた。
「ひゃあああっっ」
「武器、とかあるの??」
レイナを落ち着かせようと、抱きしめながら、それでいて対処法を求めてシノンはリュウキに訊いた。
「いや、武器は無いんだ。ここを作った人らの趣味かな?」
けほけほっ、と口許をハンカチで拭いながら説明をするリュウキ。
「ほら、不良と言うかヤンキーと言うか、少々古い世代のって感じだろう?」
「あー……確かにね」
「だから、こういう感じに、な!」
リュウキは、襲い掛かってくるヤンキー幽霊のパンチを掻い潜り、ばしっ! とその頬に一撃を入れた。ARだから、実際に当ててるのではないのだが、リュウキには感触もあり、周りにもしっかり見えている為、本当に殴った様にしか見えなかった所が凄い。
一撃受けて、敵側のHPが削られて……。
『おーおー、やるってんだなー! やってやらーーー!』
と頭に目視できる四つ角を沢山つけて、また襲い掛かってきた。
「やるって……、そっちから言ってきたし、攻めてきたんでしょ?」
「まぁ、そう言うな……。こういう仕様だから」
「これって絶対クラスの先生とかが提案したのよね……? 世代とか考えて」
はぁ、と呆れ顔のシノン。 その胸に顔を埋めてるレイナ。
そしてリュウキは戦闘開始。
ポカポカと殴り合いが始まる。
本当にコニカルで、ダメージ音、衝撃音も、ぜーんぶが言葉で可視化される。立ち込める砂煙まで。
最後は、リュウキの右ストレートがカウンター気味に頬にHIT。今日一番の『どぉぉぉんっ!』と言う擬音が大きく2人の頭上に表示されて……、ヤンキー幽霊は大の字に倒れた。
『へ、へへ…… なかなか、いいパンチ、してんじゃねーか。おめーがもうちょっと来るのが早かったら、、良いダチになれたかもしんねぇよなぁ……』
「あー、いや……。うん。そうだな」
正直『ダチ? ……断る』と返そうとしたリュウキだったのだが、一応空気を読む事は出来た様だった。
『へ、へへ…… チクショウ 夕日が、眩しいぜ―――……』
と言い残してバックにいつの間にか登っていた夕日の光を浴びて、ヤンキー幽霊は消滅した。
そんな時に、レイナのスマホに着信があった様で光った。
それをスピーカーモードにしたうえで出てみると。
『成る程です。素手の対決…… つまり VR世界で言えば体術スキルの取得イベント等で使われるのと同じですね?』
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ふぇ……? ユイ、ちゃん??」
『はい。レイナお姉さん。リュウキお兄さんに、それにママからも頼まれました。私もお姉さんの事、しっかりフォローしていきますから、安心してくださいね?』
ファイト! と言っているかの様なユイの声が響く。
レイナの持つプローブからユイも現実世界の映像がハッキリ見える為、どういう感じになっているのかが分かるのだ。因みに、今はランとユウキは外に出ていた。ユウキは兎も角、ランはお化け屋敷苦手だった様で、サクサク進んでいく(お化け屋敷に入る)のはちょっとまだ無理だったとの事、である。
レイナはユイに励まされてしまっては 蹲るだけじゃ駄目、しっかりとやらなければならないだろう。とまた頑張った。頑張って歩きに歩く。AR仕様だから、限られたスペースしかない教室内も凄く広く感じられる。
そんな広いお化け屋敷で レイナが幽霊に憑りつかれたり、逆に落ち込んでいる幽霊のお願いを聞いてあげたり、暴漢幽霊に襲われている先生幽霊を助けたりと、色々と頑張りに頑張って、最後は全校集会? と言う面目で沢山の幽霊たちに囲まれて、学園校歌を歌って終了したのだった。
予想以上にお化け屋敷を楽しんだ様で、あっという間に時間が経っていて 文化祭終了の時間だった。
リズに色々とからかわれたけれど、返事を返すのも億劫になってるのがアスナとレイナ。
「うぅ…… お化けやだ……」
「お疲れさまだよ……レイ」
確かに面白おかしいコミカルなお化けたちに大歓迎されたんだけど、それでも耐性が極端に低い2人には大ダメージだった様で、その後の片づけの際に支障を来してしまったのは言うまでもないだろう。
……が、レイナとアスナの2人は、その大絶賛、大反響な料理で誰よりもクラスに貢献したから、と言う事で、理由を聞いたクラスメートたちが喜んで変わってあげたりした。
この辺りが日頃の行い~ と言えるのだろう。
「お疲れ様。レイナ」
「うー、お、お疲れ様だよ、リュウキ君。もー、とーぶんは行かないからねっ! 現実でも、ALOでもっ!」
「(当分……?)ははは。勿論だって。よく、頑張ったな」
「あ……、えへへ……」
怖かったのは事実。まだまだ目に焼き付いているのだが、リュウキの笑顔と褒めてくれて頭を撫でてくれる感触がとても気持ち良く……、正直 お化け屋敷に入ってから 暗雲が~ と思っていたんだけど、今はスッキリ晴れて青天の空。
「楽しかった? リュウキ君」
だから、そう聞く事が出来た。沢山笑顔に救われたから。
そして 生まれて初めての文化祭を経験したリュウキ。
リュウキは、笑顔のまま……レイナの問いに頷くのだった。
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