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レーヴァティン

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第六十二話 伊勢の巫女その一

               第六十二話  伊勢の巫女
 英雄は門前町でいきなり刀を抜いた、そうして猫をいじめて楽しんでいた悪辣な少年二人少女三人の足の腱を切ってから。
 それぞれ右腕、左腕、右足、左足と切断していき腹を裂いて最後に首を刎ねた。そうしてからであった。
 散らばっている骸を蹴飛ばして一つに集めてから術で燃え盛る炎を出して魂まで焼き尽くした。そのうえで惨劇を聞いて飛んで来た伊勢の役所の者達に造作もなく言った。
「生きていても仕方のない連中を成敗した」
「言うことはそれだけか!?」
「魂も消し去ってやった」
 そうして完全に殺したというのだ。
「猫をいじめて楽しんでいたからな」
「それだけでか」
「何か悪いか」
 英雄の返事の調子は変わらなかった。
「幼い子供から猫を奪って笑って嬲り殺そうとしていたのだ」
「子供から?」
「この子のな」
 英雄は自分の傍で傷だらけで血まで流している猫を泣きながら抱いている小さな子を指し示して役人達に話した。
「猫を奪ってな」
「それでか」
「泣いている子を抑え付けてそうしていた」
「だからあんたはか」
「屑共とわかったからだ」
 それ故にというのだ。
「生まれたことを後悔するまでに切り刻んで魂まで焼き尽くしてやった」
「一太刀じゃなくてか」
「屑には容赦しない」
 英雄の返事はこの時も同じ調子だった。
「俺はな」
「そうか、つまり狼藉者を切ったか」
「その親が出て来るなら呼んで来い」
 自分の前にというのだ。
「自分達の子供が何をしたのかじっくり話してやる」
「あんたがどうして殺したのかもか」
「それも話してやる」
 このこともというのだ。
「少なくとも俺は屑を成敗しただけだ」
「だから悪くないか」
「その俺を捕らえるならばな」 
 その時はとだ、英雄は伊勢の街中で役人を堂々と見据えて言った。
「罪を言え」
「殺しに決まってるだろ」
 役人も負けじと言い返した、英雄の鋭い目の光にも負けていない。
「それは」
「そうか」
「そうだよ、あんた五人も殺したんだぞ」
「伊勢の法では悪人を成敗しては駄目なのか」
「じゃあその悪事の証拠を言え」
「ああ、その連中ならな」
 ここで町人達が役人に話した、これまで英雄と役人のやり取りを黙って遠巻きに見ていたが言う者達が出て来たのだ。
「この辺りで有名な悪ガキ共だったよ」
「かっぱらいにかつあげに弱いものいじめにってな」
「色々悪いことやってた連中だよ」
「この辺りの厄介者達だったんだよ」
「近々わし等もお役人様達に言うつもりだったんだよ」
 こう役人に話した。
「だからわし等も黙って見てたんだよ」
「お侍さんが成敗するのをな」
「猫をいじめてるのもいい加減腹に据えかねてたがな」
「その時にお侍さんが出て来てくれたんだよ」
 英雄がというのだ。
「そしてだよ」
「五人を成敗してくれたんだよ」
「伊勢じゃならず者は仕置きしてよかったよな」
「あまりにも酷いと」
「むう、そうなのか」
 役人も町人達の話を聞いて唸った、見ればその恰好は町人と変わらないのでどうやら目明しらしい。役人と言っていいかもわからない位だ。
「あんたは別にか」
「捕まる様なことはしていないな」
「そうみたいだな」
「そうだな」
「ああ、しかしあんた随分容赦ないな」
 役人は聞いた英雄の悪人達の殺し方について彼自身に言った、伊勢の法では問題ないことだとわかっても。 
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