英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇
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第50話
~オルキスタワー・36F~
「――――ようこそいらっしゃいました。」
「フウ……待ちくたびれていたぞ。まあ、俺よりもフランツとアメリアの方が待ちくたびれていたかもしれないがな。」
リィン達が部屋に入るとエイリークがリィン達に声をかけ、エフラムは溜息を吐いた後自分とエイリークの背後にそれぞれ控えているフランツと金髪の女性騎士に視線を向け
「アハハ、僕はそれ程でも。リィンとは先月再会したばかりですし。」
「全くもう、フランツったら薄情なんですよ?せっかく昔の仲間と再会できる機会があったのに、それを教えてくれなかったんですから。―――まあ、それはともかく。久しぶり、リィン!」
エフラムの言葉に苦笑しながら答えたフランツに視線を向けられた女性騎士は溜息を吐いてジト目でフランツを見つめた後笑顔を浮かべてリィンに近づいて手を差し出し
「ああ、久しぶりだな、アメリア。それとフランツとの婚約、おめでとう。」
リィンは差し出された女性騎士と握手をして懐かしそうな表情で女性騎士を見つめ
「フフ、それはお互い様だよ。エリゼさんも久しぶり!遅くなったけど、リィンとの婚約、おめでとう!」
見つめられた女性は微笑んだ後エリゼに視線を向けた。
「―――お久しぶりです。アメリアさんこそ、おめでとうございます。」
「リィンさんとエリゼはそちらの方とどういった関係なのでしょうか……?」
女性騎士の言葉にエリゼが会釈をするとアルフィンは不思議そうな表情でリィンとエリゼに訊ね
「彼女はアメリア・シルヴァ。訓練兵時代の俺やステラの同期で、フランツの婚約者だ。」
「―――初めまして。あたしはアメリア!よろしくね、リィンの仲間達に教え子達!」
リィンに紹介された女性騎士―――アメリアはユウナ達を見回して挨拶をした。
「ふふっ、アメリア。久しぶりの再会で浮かれるのも無理はないけど、殿下達をお待たせするのはさすがに注意せざるをえないわよ。」
「あ………すみません、セシリア教官!エイリーク様達も失礼をしてしまい、大変申し訳ございません!」
「フフ、私達の事は気にしないで下さい。旧知の戦友との再会を嬉しく思っている貴女の気持ちも理解しています。」
「―――皆さん、まずはソファーにおかげください。」
「――――失礼します。」
セシリアの指摘に我に返ったアメリアの謝罪にエイリークは優し気な微笑みを浮かべて答え、サフィナに促されたリィンは会釈をした後ユウナ達と共にソファーに座った。
「――――改めてになりますがお久しぶりです、エフラム皇子殿下、エイリーク皇女殿下。お礼を述べるのが遅くなりましたが、内戦の間ユミルを守って頂き、本当にありがとうございました。」
「御二方の采配のお陰で、父様達やユミルの民達は内戦中でも安心して過ごす事ができました。本当にありがとうございました。」
「フフ、気にしないでください。私達はメンフィル皇族として当然の義務を果たしたまでです。」
「それにシュバルツァー家は元は他国の貴族でありながらも、メンフィル帝国に忠実であり、更にはリィンとエリゼという素晴らしい人材まで輩出してくれたのだから、その恩に報いたまでだ。」
リィンとエリゼに感謝の言葉を述べられた二人はそれぞれ謙遜した様子で答え
「うふふ、”聖炎の勇槍”と称えられているエフラムお兄様にとっては物足りない戦じゃなかったのかしら?ひたすら攻めてくる雑魚ばかりを追い払う防衛戦だけだったのだから。」
「ざ、”雑魚”ってもしかしてエレボニアの……」
「”貴族連合軍”の事かと。」
「レ、レン教官……何もそんな言い方をしなくても………」
「……………………」
意味ありげな笑みを浮かべたレンの指摘に表情を引き攣らせたユウナにアルティナは静かな表情で指摘し、セレーネは複雑そうな表情で黙り込んでいるアルフィンを気にしながらレンに指摘した。
「フウ………レン、士官学院の教官でありながら領土を守護する為の戦である”防衛戦”を軽く見るような発言は問題があると思いますよ?」
「ただ、エフラム皇子殿下にとっては物足りない戦である事に関しては反論できませんね。エフラム皇子殿下は戦場で常に最前線で槍を振るって武功を挙げてきたメンフィル帝国の”勇将”の一人であられるのですから。」
「別に俺はレン達のように戦を楽しむ趣味はないんだがな…………絶対に民達を戦火に巻き込まない事や戦時中の民達が感じている不安等本国では知ることができない事を知れて、俺にとっても色々と学べる戦だったさ、1年半前の内戦は。―――すまないな。相手が賊軍だったとはいえ、祖国の兵達の命を奪った話なんてエレボニア出身の二人にとってはあまり聞きたくなかった話を聞かせてしまって。」
サフィナは呆れた表情で溜息を吐いてレンに指摘し、セシリアは苦笑しながらレンの意見に同意し、エフラムは困った表情で答えた後表情を引き締めて話を続けた後アルフィンとクルトに視線を向けて謝罪の言葉をかけた。
「いえ………元はといえば、貴族連合軍の愚行が原因で殿下達がゼムリア大陸のメンフィル帝国の民達を貴族連合軍の魔の手から守る為に派遣され、”七日戦役”が終結したにも関わらず貴国に逆恨みをして襲撃をした貴族連合軍は自業自得だと思っていますから、謝罪は不要ですわ。」
「自分もアルフィン殿下と同じ考えですので、自分への気遣いも無用です。」
エフラムに謝罪されたアルフィンとクルトは謙遜した様子で答え
(同じ双子の皇子でもあの偉そうな皇太子とは大違いね……そう言えば、メンフィル帝国の跡継ぎってエリゼさんが仕えている皇女様―――リフィア皇女殿下だったっけ?その人って、どんな人なのかしら?)
(まあ、”偉そう”という意味ではリフィア殿下も同じではありますが、印象はセドリック殿下とは異なりますね。)
エフラム達の様子を見ていたユウナはセドリック皇太子とエフラムを比べてジト目になった後アルティナに小声で訊ね、訊ねられたアルティナは静かな表情で答えた。
「そう言えば、貴女がリウイ祖父上の話にあった新たに私達の”妹”になったゲルドさんでしたね。改めてになりますが、よろしくお願いしますね。」
「リウイお義父さんとセシルお義母さんの養女にしてもらったゲルド・フレデリック・リヒター・パリエです。えっと、エイリーク皇女もそうだけどエフラム皇子達もお義父さんの”家族”でいいのかしら?」
「ええ、そうなりますね。―――とは言ってもマーシルン皇家は”少々特殊な皇族かつ家族”ですから、我々への呼び方はゲルドさんの自由にして頂いて構いませんよ。」
エイリークに微笑まれたゲルドは軽く会釈をした後質問をし、ゲルドの質問にサフィナは苦笑しながら答え
「まあ、そうよね。例えばサフィナお姉様の養女になっているセレーネやツーヤ、それにセシルお姉さんの養女になっているゲルドとシズクはレンにとっては”姪”になるから、セレーネ達のレンへの正確な呼び方が”叔母様”になっちゃうもの。この年で、”叔母”なんて普通は呼ばれたくないし、事情を知らない人達も混乱しちゃうでしょう?」
「い、言われてみればレンちゃんとツーヤちゃん達って遠い親戚同士になるから、正確な呼び方はそうなっちゃうよね……」
「ア、アハハ………それはともかく、どうして今回の交流会にエフラム殿下達がゼムリア大陸に派遣されたのでしょうか?”西ゼムリア通商会議”の例を考えると、リフィア殿下が派遣されると思っていたのですが………」
呆れ半分の様子で説明をしたレンの問いかけにリィン達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中リィン達同様ティータは表情を引き攣らせて呟き、苦笑していたセレーネは表情を戻してエフラム達に訊ねた。
「……色々と理由はありますが、我々が派遣された一番の理由は”黒の工房”への対応について、クロスベルと話し合う為です。」
「”黒の工房”………確かアルティナを貴族連合軍に派遣したという結社と同じ”裏”の組織の………」
「―――はい。そしてその拠点の一つは”七日戦役”の際にメンフィル帝国軍によって制圧されています。」
「アルティナ………」
セシリアの説明を聞いたクルトに視線を向けられて淡々と話すアルティナの様子をリィンは心配そうな表情で見つめた。
「えっと……その”黒の工房”という所への対応についてヴァイスさん達と話し合うと仰っていますけど、具体的にはどんな対応をするつもりなんでしょうか……?」
「それは………」
「……簡単に言うとクロスベルと協力して各地に点在する”黒の工房”の”拠点”を”潰す”――――要するに”黒の工房”の施設、関係者達をこの世から葬り去る為の話し合いだ。」
ティータの質問にエイリークが複雑そうな表情で答えを濁しているとエフラムが静かな表情で答え
「な――――」
「ええっ!?」
「こ、”この世から葬り去る”って、まるで襲撃するみたいに聞こえますけど……」
エフラムの答えにクルト達が驚いている中リィンは絶句し、セレーネは驚きの声を上げ、ユウナは不安そうな表情で呟いた。
「まるでも何もその通りよ?メンフィル帝国並びにクロスベル帝国は”黒の工房”を完全に殲滅対象としているから、”黒の工房”の施設の破壊は当然として、関係者達も全員”殲滅”――――殺すつもりよ?かつて結社”身喰らう蛇”の”盟主”を含めた結社の多くの最高幹部の命を奪い、今もなお”残党”達の殲滅を目標としているようにね。」
「………どうしてメンフィル帝国とクロスベル帝国はその”黒の工房”?という所に対して、そこまで過激な対応をするのかしら?」
「……まあ、色々と理由はあるが最近になって今まで中々掴めなかった”黒の工房”の目的をようやく掴んだんだが……その目的の一つが一国どころか、世界中をも巻き込む混乱を引き起こす事だそうだ。そしてその目的を知った俺達は国家どころかゼムリア大陸にとって危険な組織である”黒の工房”の完全抹殺を決定したという訳だ。」
レンの説明を聞いて悲しそうな表情を浮かべたゲルドの疑問にエフラムは静かな表情で答えた。
「一国どころかゼムリア大陸全土を巻き込む混乱ですか………”黒の工房”とやらは一体何の為にそのような事を……」
「……………………しかし、どのようにしてメンフィル帝国とクロスベル帝国は今まで謎に満ちた”黒の工房”の目的を掴んだのでしょうか?それにそのような話し合いをするという事はわたしが知っていた拠点以外の”黒の工房”の本拠地を含めた拠点が判明したのでしょうか?」
「アルティナ………」
クルトが重々しい様子を纏って考え込んでいる中目を伏せて黙り込んでいたアルティナはエフラム達に質問し、アルティナの質問を聞いたリィンは心配そうな表情でアルティナを見つめた。
「申し訳ございませんが、情報元に関しては機密扱いの為、今この場で教える事ができません。――――ただ、メンフィル帝国は”黒の工房”の”本拠地”を含めた拠点は全て掴み、それらを一つも残さず”抹殺”為の準備を進めている事だけはこの場で確言できます。」
「ま、”抹殺………その、いつかその”黒の工房”という所を制圧する為にレンちゃん達もその作戦に参加するの……?」
サフィナの答えを聞いたティータは不安そうな表情を浮かべてレンに訊ね
「残念ながら、その件にレン達は関われないわ。ティータも知っての通り、今のレン達は第Ⅱ分校の教官を務めているのだから、その件に関われるような暇はないわよ。」
「あの………メンフィル帝国とクロスベル帝国による”黒の工房”という所を制圧する作戦がいずれ行われるとの事ですが、その作戦にエレボニア帝国を加えるつもりはないのでしょうか……?」
ティータの質問にレンが答えるとアルフィンが複雑そうな表情でエフラム達に訊ねた。
「………アルフィン夫人にとってはお辛い事を指摘するようで申し訳ありませんが………――――”黒の工房”と協力関係を結んでいる疑いのある人物がエレボニア帝国政府の上層部にいるのですから、政府内にそんな人物が上層部にいるエレボニア帝国と私達が”黒の工房”を抹殺する為の協力関係を結ぶとお思いですか?」
「そ、それは…………」
「アルフィン…………」
「………………」
「ちなみにその人物はオリビエお兄さん――――オリヴァルト皇子も知っているわよ。」
エイリークの指摘に辛そうな表情で顔を俯かせているアルフィンの様子をエリゼは心配そうな表情で見つめ、リィンは目を伏せて黙り込み、レンは意味ありげな笑みを浮かべて答え
「エ、エレボニア帝国政府の上層部にその”黒の工房”と協力関係の疑いがある人物がいるって………!一体エレボニア帝国政府の誰がそんな所と協力関係を………というかオリヴァルト皇子殿下はその人の事を知っているのに何で、何もしないんですか………?」
(まさか…………)
ユウナは信じられない表情で呟いた後新たなる疑問を口にし、心当たりがあるクルトはある人物の顔を思い浮かべて真剣な表情を浮かべた。
「対処したくてもできないのです、今のオリヴァルト殿下の立場では。」
「オリヴァルト殿下は皇族ではありますが、政府内の発言力は皆無に等しいのです。」
「ま、”鉄血宰相”を始めとしたエレボニア帝国政府にとって自分達の意向に背く考えを持つオリビエお兄さんの存在は正直言って邪魔な存在だからね。今後の自分達の目的を邪魔させない為にも、オリビエお兄さんが持つ権限は1年半前の内戦勃発前と比べるとエレボニア帝国政府によって相当弱体化されているのよ。」
「さっき会った時はそんな所は全く見せていなかったけど………オリヴァルト皇子は辛い立場に立たされているのね………」
「オリビエさん………」
サフィナとセシリア、レンの説明を聞いたゲルドは静かな表情で呟き、ティータは心配そうな表情を浮かべた。
「………あの、先程エフラム殿下達は”黒の工房”の関係者全員を抹殺すると仰っていましたが、もしかしてその中には今もなお、”黒の工房”の拠点にいるかもしれない”わたしと同じ存在”も含まれているのでしょうか……?」
「あ……………」
(”アルと同じ存在”……?)
(一体どういう意味だ……?)
辛そうな表情で問いかけたアルティナの問いかけを聞いたセレーネは呆けた声を出して不安そうな表情をし、ユウナとクルトは不思議そうな表情で首を傾げていた。
「その件も含めて、今回の交流会で話し合うつもりだ。――――とは言っても、俺達メンフィルはその件に関しては”保護”をして、お前のようにその者達自身の未来を決めるまでは俺達で世話をするべきという考えだ。」
「それに恐らくその件に関してはクロスベル側――――ヴァイスハイト陛下達も同じ考えだと思いますよ。」
「まあ、女の子が大好きなヴァイスお兄さんが幾らクロスベルの為とはいえ、罪もない女の子達の命を奪うような事は絶対許さないでしょうしねぇ。―――まあ、ひょっとしたらリィンお兄さんみたいに保護した”アルティナと同じ存在”をハーレムに加えるかもしれないけどね♪」
「ちょっ、何でそこで俺が槍玉に上がるんですか!?何度も言っているように、アルティナをそんなつもりで引き取っていませんよ!?」
「ア、アハハ………さ、さすがに幾らヴァイスさんでもそこまではしないと思うけど………」
エフラムとサフィナはそれぞれ答え、サフィナの話を補足する説明をしたレンの答えにユウナ達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中リィンは慌てた様子で反論し、ティータは乾いた声で苦笑しながらレンに指摘し
「ふふっ、ですが確かに女性に優しいヴァイスハイト陛下の性格を考えれば、その点に関しては安心できますわね。」
「……そうですね。まあ、別の意味での心配が考えられますが。」
我に返ったセレーネは微笑み、アルティナはジト目で呟いた。
「………アルティナ、”黒の工房”が完全に制圧されて貴女と同じ存在がいて、その娘達が保護された後、もし貴女が希望するのだったら、その娘達も貴女のようにシュバルツァー家の使用人として引き取っても構わないわ。幸い、シュバルツァー家は”公爵”に陞爵する事が内定していながら、未だ使用人は貴女しかいないのだから、貴女以外の使用人もいずれ増やすべきだと思っていたもの。」
「そうだな……シュバルツァー家の使用人はアルティナだけなんだから、いずれシュバルツァー家が公爵になった後は大勢の使用人達を雇った時昔からずっとシュバルツァー家に仕えているアルティナがシュバルツァー家の使用人達の長――――”侍女長”になる可能性が高いんだから、できればアルティナと同年代かそれよりも下の年代の使用人達の方が、お互いにとってもやりやすいと思うしな。」
「エリゼ様……リィン教官……………その………お二人が仰った提案をメンフィル帝国とクロスベル帝国は受け入れて頂けるのでしょうか……?」
エリゼとリィンの提案に驚いたアルティナはエフラム達に視線を向けた。
「フフ、私達はシュバルツァー家の方々がそれを望むのでしたら構わないと思いますよ。エリゼさん達も仰ったようにリィンさんがシュバルツァー家の跡を継いで、クロイツェン統括領主になった時リィンさん達シュバルツァー家を支える使用人はアルティナさんのようにシュバルツァー家に直接仕えている使用人が必要で、人数が多ければ多い程、新興の大貴族になったシュバルツァー家にとっては色々な意味で助かると思いますし。」
「そうだな……今回の交流会でも今の件も含めて話し合うつもりだ。」
「そう、ですか………………その、今すぐには決められないので、お二人の申し出については後で答えを出しても構わないでしょうか……?」
エイリークとエフラムの答えを聞いたアルティナは少しの間考え込んだ後リィンに訊ね
「ああ、考える時間はあるんだから、しっかり考えて答えを出してくれ。」
「……はい。」
リィンの答えを聞いたアルティナは静かな表情で頷いた。
「フウ………それにしても”黒の工房”についての話し合いの件はともかく、もうすぐ訪れる晩餐会に参加する事は正直気が滅入るな………あんな堅苦しくて、面倒なものに参加するくらいならリィン達と模擬戦をした方が俺にとってはよっぽど実りのある時間の使い方なんだがな。」
「兄上…………」
「貴方の気持ちはわからなくはないですが、それも皇族の”義務”ですよ。」
疲れた表情で溜息を吐いて呟いたエフラムの言葉を聞いたリィン達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中エイリークは呆れた表情で片手で頭を抱え、サフィナは呆れた表情で指摘した。
「ハハ………メンフィルの勇将の一人として有名なエフラム殿下の申し出は正直身に余る光栄ですが、自分達はエフラム殿下を含めた各国のVIPの方々の警備という重要な任務がありますので。」
「フフ、それにリィン達と手合わせをしたいのでしたら、交流会を終えた後、リアンヌ様に第Ⅱ分校の方々の補習の相手を申し出ればよいのでは?」
「うふふ、分校長なら間違いなくレン達の相手にエフラムお兄様をぶつける事もレン達にとって良い刺激になると判断して、エフラムお兄様の申し出も受け入れるでしょうね♪」
「洒落になっていませんわよ、レン教官………」
我に返ったリィンは苦笑しながら謙遜した答えを口にし、セシリアの提案に小悪魔な笑みを浮かべたレンの推測を聞いたセレーネは疲れた表情で指摘し
「クスクス……エフラム皇子殿下には失礼な言い方になるかもしれませんが、そう言った型破りな所はエステルお姉ちゃんに似ていますね。」
「そうか?残念ながら俺達は今までエステルと会う機会がなかったから何とも言えないが、俺達の祖母――――ラピス様も皇族として型破りな方だったとの事だから、”ファラ・サウリン”の名を継ぐ者達は型破りな性格が多いのかもしれないな。」
「兄上………その言い方ですと私や父様達まで、皇族として型破りな人物のように見られるのですが………まあ、その件はともかく。フランツ、アメリア。待たせてしまってごめんなさいね。私達の話は終わったから、二人も久しぶりに会ったリィンさんとの再会話をして構いませんよ。」
可笑しそうに笑いながら答えたティータの指摘に答えたエフラムの推測にエイリークは呆れた表情で指摘した後フランツとアメリアに視線を向けた。
「ありがとうございます。とは言っても、僕は先月再会したばかりですから、リィンと話したい事がたくさんあるのはアメリアの方だと思うのですが………」
「えへへ……改めてになるけど、久しぶり、リィン!”七日戦役”やエレボニアの内戦でのリィンの活躍はあたしも後で知って驚いたけど、何よりも驚いたのは恋に関してはとんでもない”唐変木”だったリィンがエリゼちゃんとステラの気持ちに気づいて応えてあげた所か、8人もの婚約者を作って、更に政略結婚とはいえ、既に結婚までした事の驚きの方が大きかったよ?」
エイリークに視線を向けられたフランツは会釈をした後アメリアに視線を向け、アメリアは無邪気な笑顔を浮かべてリィンを見つめた。
「と、”唐変木”って………さすがにそれは言い過ぎじゃないか?」
「いえ、アメリアさんの仰っている通りかと。」
「そうですわよね……わたくし達―――女性の方から行動しなければ、リィンさんは一生わたくし達の気持ちに気づいてくれなかったと思いますし……」
「そ、そう言えばわたくし達全員、自ら行動してお兄様にわたくし達の気持ちを知ってもらいましたわよね……?」
アメリアの言葉に対して表情を引き攣らせて否定したリィンだったがエリゼとアルフィン、セレーネの指摘を聞くと冷や汗をかき
「………教官?」
「その……”部外者”の僕達に指摘する”資格”があるかどうかわかりませんが、教官には多くの将来を共に決めた女性がいるにも関わらず、未だに女性達の方から動いてもらわなければ女性の気持ちに気づかないのは、さすがにどうかと思うのですが………」
「まあ、教官のその”唐変木”な性格は一生治らないと思いますから、指摘しても無駄な気はしますが。」
「う”っ。」
(という事は未来の私は自ら行動して、リィン教官に未来の私の気持ちを知ってもらったのかしら……?)
ジト目のユウナと困った表情を浮かべたクルト、静かな表情で呟いたアルティナの指摘にリィンが唸り声を上げて疲れた表情で肩を落としている中、ゲルドは首を傾げてリィンを見つめていた。
「クスクス………どうやらその様子だと、恋愛方面に関しては相変わらずみたいだね。」
「アハハ、むしろリィンが恋愛方面に鋭くなったら、リィンを知っている人達はみんな、天変地異が起こる前触れだと思うだろうね。」
「い、幾ら何でも天変地異の前触れはありえないだろう!?」
苦笑しながら答えたアメリアとフランツの話にその場にいる多くの者達が冷や汗をかいている中リィンは疲れた表情で指摘し
「そんな事を言われるくらい、鈍感って事よ、リィンは。確か……ベルフェゴール様だっけ?エリゼちゃんが積極的になったのも、多分睡魔族のベルフェゴール様との出会いが理由だったんでしょう?」
「そ、それは…………」
「………そうですね、アメリアさんの推測は概ね当たっていますね。」
「エ、エリゼお姉様……」
呆れた表情をしたアメリアの指摘に反論できないリィンが表情を引き攣らせている中、静かな表情で同意したエリゼの答えを聞いたセレーネは冷や汗をかき
(えっと……ベルフェゴールさん、今のアメリアさんの話は本当なのですか?)
(ええ、それについては話し始めたら長くなるから後で教えてあげるわ♪)
アメリアの話が気になっていたアルフィンはベルフェゴールと念話をしていた。
「アハハ……けど、そのお陰でリィンはエリゼちゃん達の気持ちに気づけたのだから、お互いにとってよかったと思うよ?」
「フフ、それらの件を考えればリィンのような男性は睡魔族のような積極的な性格をしている女性との知り合うべきかもしれないわね。」
「クスクス、何せ女性の方から”荒療治”をしてくれるものね♪」
「ううっ、セシリア教官まで………しかも実際に”荒療治”をされた側としては否定できない………」
苦笑しているフランツとセシリア、小悪魔な笑みを浮かべたレンの指摘にその場にいる全員が冷や汗をかいている中リィンは疲れた表情で肩を落とした。
その後ユウナ達はフランツ達からリィンの昔話を教えてもらって話に花を咲かせていると晩餐会の開始の時間が訪れた為、エフラム達に別れの挨拶をした後第Ⅱ分校に割り当てられている待機室へと向かい始めた――――
後書き
公式サイトでようやくリィンとクロウが登場しましたね。とりあえずリィンも普通にプレイアブルキャラとして使えるっぽいからホッとしましたww絆イベントとかどうなる事やら……というかクロウって、プレイアブルキャラだと銃と双刃剣、どっちを使うんでしょうね?そしてヴァリマールとオルディーネもプレイヤーが操作できるのやら……
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