レーヴァティン
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第六十話 召喚士その一
第六十話 召喚士
幕が開けると舞台に白い、袴までそうである神主の礼装を着た女がいた。黒髪を腰まで伸ばし切れ長の睫毛の長い目に細く切れ長の眉と白い面長で顎の先が尖った顔立ちに紅の小さな唇を持っている。
その女を見てだ、英雄はこう言った。
「俺達の顔だな」
「日本人の顔ですね」
「そうだな」
こう峰夫に答えた、背は一六四程でありすらりとした身体つきだが神主の服でもわかる位に大きな胸だ。
「鼻の形といいな」
「高いお鼻ですが」
「西洋人の様に高くない」
見れば鼻は適度な丸さもある。
「完全にこちらの顔だ」
「はい、ですが」
「この島では皆同じだ」
この顔立ちはというのだ。
「アジア系の顔立ちはな」
「そうであります」
峰夫もその通りだと応えた。
「どうしましても」
「顔ではわからない」
「わかることといえば」
「力だ」
それでとだ、英雄は答えた。
「まさにな」
「それでわかるでありますな」
「そうだ、だからだ」
「これからですね」
「力を見る」
召喚士のそれをというのだ。
「そうする」
「わかったであります」
「ではな」
「これから見ましょう」
「それではな」
英雄は峰夫の言葉に頷いた、そうしてだった。
一行は召喚士の術を観ることにした、他の客達はそれがはじまるのを今か今かと楽しみにしていた。だがそれは見せものとしてである。
英雄達は違っていた、召喚士が召喚した召喚神を見てだった。良太が目を瞠って言った。
「あれは本来の召喚術にはないです」
「そうなのか」
「はい、あの召喚神は風神と雷神ですね」
「そういえば」
英雄もここでわかった、その可能英徳の画そのままの姿である彼等を見つつ。
「召喚術の書も読んだが」
「そうでしたね」
「使えずともな」
召喚術を使う敵と戦う場合を想定してだ、英雄達はそうした書も読んでいたのだ。
「読んだがな」
「風神と雷神はですね」
「八段階の召喚術にはいなかった」
こう良太に話した。
「全くな」
「はい、しかしです」
「あの女はどちらも読んでいるな」
「それも同時に」
「召喚神の召喚は一体ずつだったな」
「そうです、しかし」
「あの女は二体読んだな」
「同時に、こうしたことは」
良太は驚きを隠せない顔で話した。
「本来は有り得ないです」
「二体同時に呼ぶことはだな」
「しかも風神雷神といえば」
「召喚術にはない」
「それだけに非常に強力な召喚神です」
「それを同時に召喚するとなると」
「はい、使役はしていませんが」
それでもというのだ。
「それだけでもです」
「相当な力の持ち主だな」
「そう思っていいです」
良太は英雄に話した、そして客達も口々に言っていた。
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