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レーヴァティン

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第五十九話 名古屋の街その十四

「あの方もそうした輩と別れてでござる」
「よかったな」
「悪い選択だったでござるが」
「そして運命も悪くなったがだな」
「別れて正解だったでござる、何しろ実質何十年も養っていても」
 それでもというのだ。
「そのことに何の感謝もしない男だったでござる」
「養ってもらってもか」
「まことに」
「まるでダニだな」
 英雄はその男についてこうも言った。
「世話になってもそれだとな」
「だから恩知らずと言ったでござる」
「愛想を尽かされたのは自分にあってもだな」
「奥さんが家を出る時に爪切りまで持って行ったと言ったでござる」
「爪切り!?」
 当季が爪切りまでと聞いて思わず右目を顰めさせた顔で叫んだ。
「そんなものまでお世話になっちょったか」
「そうだったでござる」
「それで爪切りまで持っていったと言ったとは」
「左様でござる」
「いや、それはまっこと」
 当季もその男についてこう言った。
「恩知らず、そこまで世話になっている甲斐性なしも問題ぜよ」
「その通りですね」
「それを気にする器の小ささ、他人に言える無神経さ」
「最早でござるな」
「まっことどうしようもない男ぜよ」
「貴殿もそう思われるでござるな」
「もうそんな男捨てるしかないぜよ」
 どうしようもないというのだ。
「しかも世話になってた場所の悪口を言ってたぜよか」
「その組織の在り方等を重箱の隅を突く様に言って」
「それは白痴ぜよ」
 そこまで酷い男だというのだ。
「五十過ぎてというかもうそうなった時点でぜよ」
「どうしようもないですね」
「いや、わしもぜよ」
 そうした男はというのだ。
「見捨てるぜよ」
「それで長男だからと威張っていました」
「屑の中の屑ぜよ」
「それで誰からも見放されまして」
「今は行方知れずか」
「そうなりました、親戚の人のお葬式でも平気で上座に上がったり」
「亡くなった方のご家族でもないと」
 今度は謙二が眉を顰めさせた。
「上座には」
「上がりませんね」
「あまりにも無神経で無知な行動ですね」
「それを平気でしたでござる、お葬式の後のお食事で」
「まことに酷いですね」
「はい、そうした方だったので」
 だからだというのだ。
「誰からもです」
「見放されてですね」
「もう死んだかも知れません」
「野垂れ死にですか」
「おそらくは」
 その人間性故に誰からも見放されて以降はというのだ。
「そうなったでしょうか」
「そうですか」
「まあ拙者も嫌いだったので」
「そうなってもですね」
「いいです」
 こう謙二に話した。
「最早」
「そうですか」
「とかくあまりにも酷い人でした」
「そうした人を伴侶にしてですね」
「間違った選択でした、しかし」
「その選択をですね」
「選びなおしたので」
 それでというのだ。
「よかったでござる」
「まことにですね、それでは」
「これよりでござるな」
「もうそろそろです」
「召喚士の登場でござるな」
「噂の方です」
 一行が見よう会おうとしているだ、その人物が出る時だというのだ。そしてだった。
 幕が開いた、そしてそこから一人の黒髪を長く伸ばし白い神主の服を着た美女が姿を現わしたのだった。


第五十九話   完


                  2018・3・24 
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