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東方果実鎧『紅』

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2.紅魔館と錠前

 真っ赤な館の門に一人たたずんでいる。いや、もたれかかっている。ていうか寝てる。
「おーい。嬢ちゃんや。おーきーてーくーれー」
 寝ている門番の頬を叩いたり脳天にチョップをかましたりしてるとやっと起きた。
「う~ん。…………Σ( ゚д゚)ハッ!!ささささささささ咲夜さん!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!もう寝ないんでナイフだけはやめてくださいお願いしますぅ!」
「…………とりあえず。人違いだから。顔を上げてくれ」
 なんかこの門番が可哀そうに見えてきた。何?ここの職場は寝てたらナイフ飛んでくるの?こわっ。
「へ?あ、何かすみません」
「…………」
「…………」
 沈黙がつらい。そして雰囲気が気まずい。
「えっと。でどちら様なんでしょうか?」
「あ、はい。んん!俺は葛葉智幸。元人間。今は宇宙の神様だ」
 訝しげなものを見る目を向けられているが、何とも、いや来るものがあるな。
「で、俺ここの土地勘があんま無いから途方に暮れちゃってさ。泊めてくれそうなとこを探し回ってたんだ。できればここの主に取り次いでもらえないか?」
「…………わかりました。少々お待ちください」





 十分後。




 さっきの門番のように門にもたれかかってボーとしていると。突如人の気配がした。
「うお!?ビビった~」
 まるで、時を止めたかのように目の前に現れた。
「美鈴から話はお伺いしております」
「で、主殿はなんと?」
「ぜひ泊まっていけ、と」
「そうか。ぜひお礼を言わないとな。俺は葛葉智幸。嬢ちゃんは?」
「咲夜、十六夜咲夜と申します」
 では、案内しますのでついてきてください。といわれ彼女の後ろを追随する。
 しばらく、歩くも一向に部屋へ着かない。
「どこへ向かってるんだ」
「この館の主。レミリアお嬢様のところへ。ぜひ、お会いしたいと」
 はぁ~ん。なるほどねぇ。礼は言いたいしありがたい話ではある。明日になると忘れそうだから。
「ここが、お嬢様のいる部屋になります。くれぐれも粗相のないように」
「委細承知した」
 目の前にある重厚な扉へ手をかける。扉を開けたその先には幼女と言っても差し支えないような女の子がいた。が、見た目に騙されてはいけないのがここ、幻想郷だということを俺は知っている。
「君がここの主、でいいんだよな?」
「ええ。私がここの主レミリア・スカーレットよ。今宵はこの紅魔館へようこそ」
 口角を上げ嗤い、笑みを浮かべるレミリアちゃんをそしていつの間にかそばに控えた咲夜ちゃんを俺は見る、観る。
「咲夜、さっそくお客様を「まあまあ、レミリアここは建前はなしにしよう」……どういう意味かしら?」
「ここは幻想郷。忘れられし者たちの楽園。人間から空想上の生き物が跋扈する場所だ」
「何が言いたい?」
「俺を出し抜いて喰らおうなんて二十世紀早いってことさ。―――――――吸血鬼さん?」
 今度は俺の番と言わんばかりに不敵な笑みを浮かべると、レミリアちゃんは控えていた咲夜ちゃんの名前を呼び指示を出す。
 一回の瞬き。俺の視界からは咲夜の姿が消えていた。まただ。いきなり消えた。だが、
「―――――『時間を操る程度の能力』と言ったところか。敵の前では能力を使いすぎないことだな。お嬢ちゃん」
 種が割れればこっちのものだ。俺は力を使う。すると俺の後ろから無数の蔦が生え始め真後ろで今まさにナイフを振りかぶっている咲夜を拘束する。
 このような敵のすることはたかが知れている。不干渉時間を利用した死角からの攻撃だ。
「っ!」
「駄目だぜ。俺の前で二回も能力を使っちゃ。種明かしをしている手品と同じだ」
「…………いつから。気づいていた」
「この館からこびりついた血の匂いがプンプンしてるからな。それと、牙と羽隠せてないぞ」
「…………人間にしては中々面白い奴だ」
「いや、だから宇宙の神様だって」
「ククク。いつまでその減らず口を叩けるかな?」
 後ろから凄まじい殺気を感じた。とっさに回避すると空気がブレた。何かが通過して空気がブレて震えた。一発もらったらやばかったな。流石吸血鬼。
「フラン。起きてたのね」
「うん!美鈴が新しいお人形が来た!って」
「ありがとうございます。妹様」
 って、咲夜ちゃんまで助けられてやんの。門番さんまで来てるし。四対一か、厄介な。
「あれは、中々に生きのいい人間よ。あれの実験にはちょうどいいわ」
「あれをお使いになるのですか?」
「ええ、みんな。存分に使いなさい」
 そういうとどこからバックルを取り出し腰にかざすとベルトへ変化した。さらに果物の意匠が施された錠前『ロックシード』を取り出す。
「ロックシードはともかく、なんで戦極ドライバーが!?」
『ブドウ!』
『イチゴ!』
『マンゴー!』
『バナナ!』
 四人は錠前を開けバックルにセットし再びロックし、小刀『カッティングブレード』を落とす。
『Look on!』
『ハイ~!』
『ソイヤッ!』
『『カマン!』』
『ブドウアームズ!龍・砲!ハッハッハッ!』
『イチゴアームズ!シュシュッとスパーク!』
『マンゴーアームズ!Fight of Hammer!』
『バナナアームズ!Knight of Spear!』
 開いた口が塞がらないとはこのことだろう。最悪のシチュエーションだ。まさか、インベスゲームがここまで進んでいるのか。
「さあ、せいぜい死なないように苦しみもがきなさい!」
 四人の戦士が一斉にかかってくる。やるしかない!
「ハァ!」
「甘い!」
 咲夜から放たれたイチゴクナイ二本を掴み一本を咲夜に投げ返す。そしてもう一本をブドウの門番さんに投げて牽制する。
「潰れちゃえ!」
 マンゴーの子がカッティングブレードを二回下す。やべ!
『マンゴースカッシュ!』
「チィッ!」
 蔦を発生させ手足を縛り必殺技の初動を消す。
「ハァ!」
「っ!ッラァ!」
 バナスピアーの振り下ろしをスウェイでかわし、懐に飛び込み渾身の右ストレートをかます。流石にたまらなかったのか後ずさる。
「ロックシードを使うのは俺のポリシーに反するんだが仕方ねえ」
 懐から戦極ドライバーを装着し、自分のロックシードのカギを開ける。






『ミラクルフルーツ!』
 


 
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