とある3年4組の卑怯者
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161 告白
前書き
藤木は笹山をスケート場に連れて行き、全国大会で行った演技を披露する。一方、丸尾は各クラスの学級委員で組成された「学級委員隊」のメンバーを呼び集め、会議を始めた!!
学級委員隊の会議が続く。しかし、藤木を励ますための良案はなかなか出てこなかった。
「どうすればいいかな?俺も出てこないや」
本郷が沈黙を切らした。
「かと行って僕達がカナダへ易々と行って応援できるわけじゃないしね」
鹿沼も謂い意見が出てこなかった。
「でも藤木君は不幸の手紙の時に皆から嫌われて見返そうと思ってスケートの大会に出たんだよね?」
ひろ子が丸尾に聞いた。
「はい・・・」
「でもそのスケートで今藤木は皆から注目を浴びているじゃない。だからカナダまで応援に行けなくてもその気持ちで見送ればいいんじゃないかな?」
「というと?」
横須が聞いた。
「たとえば藤木君を見送る日にメッセージカードとか色紙を送ったりとか、なんか旗でも作って見送るとか・・・」
「橿田さん・・・。ズバリ、それは名案でしょう!ではそれについてどうするかこれからは決めましょう!」
こうして学級委員隊の定例会議は終了した。
藤木の演技に笹山はずっと見惚れていた。
(藤木君、やっぱり藤木君はスケートなら無敵だわ・・・)
藤木が迎えに来た。
「笹山さん」
「藤木君、凄かったわ。あんな凄い演技を大会で見せたの?」
「そうだよ。あの時も失敗しなかったし、今日も失敗しないで笹山さんに見せる事ができて良かったよ」
「私、やっぱり藤木君なら絶対負けないと思うわよ」
「あ、ありがとう。でもあの時は銀賞で東北の人に及ばなかったけどね」
「ううん、それでも藤木君は凄いよ。もし銅賞だったとしても私は凄いって褒めるもん。それだけ藤木君はスケート上手いんだから」
「笹山さん・・・」
「そうだ、私の家に連れてって。渡したいものがあるの」
「え?うん」
藤木は笹山を受付まで連れて行き、預けた車椅子を返してもらい、スケート場を出た。
笹山の家に行く途中、笹山はある事を質問する事を決めた。
「藤木君、堀さんがお見舞いに来た時ね、堀さんの友達も来てくれたの」
「堀さんの友達・・・。もしかして、吉川みどりちゃんって子かい?」
「そういえばそういう名前だったわね。堀さんも吉川さんって呼んでたわ」
「みどりちゃんがどうかしたのかい?」
「実はね、あの子藤木君が好きだって言ってたの」
「う・・・」
藤木は遂にみどりが自分を好きだって事を笹山に知られてしまった事にどうすればいいか途方に暮れた。藤木は笹山の車椅子を押す手が止まってしまった。
「藤木君って結構モテるのね」
「う、うん・・・。で、でも笹山さん」
「何?」
「もしかして僕がみどりちゃんを好きだと思ってるのかい?」
「いや、知りたいのは私の方よ。藤木君は私とリリィさんが好きって言ってたじゃない。そのみどりちゃんって子はどう思ってるの?」
「うん、確かにみどりちゃんは僕のスケート姿を見て惚れたってさくらから聞いたんだ。学校が違うのに・・・。でも僕は好きなのは君とリリィだよ。本当は、みどりちゃんは別に好きじゃないんだ・・・」
藤木の答えに笹山は複雑な気持ちだった。藤木がはっきりと言ったからだ。卑怯を治すと決めたからかもしれないが、その台詞をみどりの前で言ったら彼女は悲しくなるだろうとも思った。
「そう・・・」
「確かに君に誤解されるのも嫌だし、みどりちゃんの気持ちも迷惑だなって思ってるんだ。それをはっきりみどりちゃんに言わないのは卑怯だって思ってる。でも、そう言っちゃうとみどりちゃんを泣かせてそれで最低な男だって思われるのも怖いんだ・・・。それにみどりちゃんには不幸の手紙の時に堀さんと一緒に僕を助けようとしてくれたからね。その恩もあるから裏切れないんだ・・・。ごめんよ、卑怯を治すって約束しておきながらなかなか治らなくて・・」
「藤木君・・・」
しかし、笹山は藤木を責めなかった。藤木は自分とリリィどちらにするかで迷っていたのみならず、みどりとの事でも苦悩を重ねていたからである。どうしても藤木の気持ちを落ち着かせてやりたかった。
「大丈夫よ。そんなのは卑怯じゃないわ。みどりちゃんもきっとわかってくれるわよ。それに藤木君はみどりちゃんの気持ちも考えようとしてるから言うのを躊躇ってるんでしょ?藤木君が優しいからよ」
「笹山さん・・・」
「好きじゃなくてもこれからも友達として付き合ってあげたらみどりちゃんも喜ぶわ」
「う、うん・・・」
「だからみどりちゃんと一緒にいるからって私は藤木君から離れないから大丈夫よ」
「う、うん、ありがとう・・・」
藤木と笹山は笹山家に着いた。
「只今」
「お邪魔します」
「あら、かず子、お帰り。それに藤木君。どうしたの?」
「藤木君に持っていって欲しい物があってね。済んだらすぐ病院に戻るわ」
笹山は車椅子から降り、歩いて上がろうとした。しかし、杖がない事もあり、二、三歩歩いてすぐ転んでしまった。
「笹山さん、無理しなくていいよ。僕も一緒に行くよ」
「うん、ありがとう・・・」
藤木は笹山を彼女が使っている部屋まで連れていった。そして机の引き出しを開けた。
「はい、これ持っていって・・・」
「それは・・・」
それは藤木と遊園地に行った記念として笹山が購入した小鳥のストラップだった。
「私が藤木君と遊園地で楽しんだ記念のストラップよ。私はパスポートを持ってないから代わりにこれをカナダに持っていって・・・」
「笹山さん・・・。わかった。僕のストラップと一緒に持っていくよ」
「うん、ありがとう!それじゃそろそろ病院に戻るわ」
「うん」
藤木は笹山を車椅子に乗せ、病院へと押した。
「藤木君」
「何だい?」
「私、実はね・・・」
「あれれ~?そこにいるのは藤木君と笹山さんじゃないか!二人で何してるんだい?」
別の声がした。二人が振り向くとそこには山田がいた。
「や、山田君・・・」
「二人ともなかがいいね~」
笹山が顔を赤くした。
「そ、そうね、ははは・・・。ふ、藤木君、行こう!」
「う、うん」
二人は恥ずかしくなり、山田から離れようとした。しかし、山田はそれでもついて来る。
「ねえねえ、二人で一体何してたんだい?」
「た、ただ散歩してたんだよ!笹山さんだってずっと病室にいるばかりじゃ体に良くないと思ってさ!」
「そ、そうよ!」
「へえ~、顔が赤くなってるじょ~」
適当に誤魔化して二人は病院へと戻った。しかし、それでも山田は付いてきた。結局笹山と別れた後、藤木と山田の二人で帰る羽目となってしまった。
(はあ、本当に僕はツイてないな・・・)
藤木は相変わらず運が悪いと実感していた。
(それにしても笹山さん、何が言いたかったんだろう・・・?)
それは藤木には想像もつかぬ事であった。
後書き
次回:「来訪」
堀や美葡の友人である雪田みきえが清水へ訪れることになった。藤木は堀やみどりからみきえと会わないかと誘われる。一方、たかしは城ヶ崎からある事を頼まれる・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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