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とある3年4組の卑怯者

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162 来訪

 
前書き
 今回からはまたまたたかしくんをより目立たせる・・・つもりですが、様々な人達が交わる混沌とした展開になります。そして「あの設定」が存在していたのを知らなかったのでそれも反映させたいと思います。 

 
 山梨県笛吹市に住む少女・雪田みきえは友人の桂川美葡の家に行っていた。そこで美葡の父がスケートの全国大会で録画していた美葡の演技の映像を見せて貰っていた。
「美葡ちゃんの演技凄いね」
「ありがとう」
 そして美葡は次に一人の男子の映像をみきえに見せた。
「あれは?」
「あれが藤木君よ。こずえちゃんが仲良くなった友達だって」
「へえ、あれが。凄い演技だね!今度こずえに会いに清水に行くつもりだけどあの藤木君にも会ってみたいな」
「電話でお願いしてみたらどうかな?」
「うん、そうするよ」


 たかしは城ヶ崎と一緒に下校していた。たかしは一緒に帰る事になりやや照れていた。
「西村君、ある事お願いしてもいいかしら?」
「ある事って何だい?」
「私、前にピアノのコンクールで仲良くなった島根県に住む子の家に遊びに行く予定ができてね、その時、西村君の家でうちのベスを預かって欲しいんだけどいいかしら?」
「ベスを?うん、いいよ!タロも喜ぶよ」
 たかしの犬のタロは城ヶ崎の犬・ベスと仲良くなっていた。他にも花輪のミス・ビクトリアやみぎわのアマリリスなど犬の友達が増えていた。犬好きのたかしやその飼い犬にとっても是非引き受けたい頼み事であろう。
「ありがとうっ!」
「それにしてもどうして僕を頼ったんだい?花輪クンならお金持ちだからベスも困らないんじゃないかな?」
 たかしはやや謙虚に聞いた。
「それは花輪クンはもしかしたら藤木の応援でカナダに行ってるかもしれないし、確かにお手伝いさんがやってくれるかもしれないけど、西村君ならタロの気持ちをよくわかってるからベスの事も任せられるかなって思ってね」
「え?そうかな」
「だって寂しくならないように時々タロのお母さん犬に会わせてあげてるんでしょ?」
「うん、そうだよ」
「だからよ」
「うん、分かったよ。絶対に怪我とかさせないように気を付けるよ!」

 一方、藤木家では藤木は相変わらず一人でいた。共働きの両親は家にはもちろんいないのでいつものように留守番だ。みどりからの返事を読んでいた。

 藤木さん

 全国大会銀賞、おめでとうございます。藤木さんならきっと世界大会に行けると信じていました。世界大会で世界一頑張ってください!私はずっと藤木さんを応援しています。

 みどり

(みどりちゃん、ありがとう。それにしても堀さんの返事はないな・・・。どうしたんだろう?忙しいのかな?)
 その時、電話が鳴った。
「もしもし、藤木です」
『あの、藤木君、久しぶり。堀です』
「堀さん!?」
『手紙読んだわ。全国大会お疲れ様。銀賞なんて凄いわ』
「ありがとう」
『こっちは笹山さんのお見舞いに吉川さんと行ったけど、笹山さんはその事で何か言ってた?』
「あ、その・・・、みどりちゃんが僕を好きだって言うのを知って『藤木君って結構モテるのね』って言ってたんだ」
『そう・・・。藤木君のスケートなら誰だってかっこよく見えるわよ』
「あ、うん・・・・」
 藤木は堀の言葉に一瞬動揺した。
「あ、そうそう美葡ちゃんを紹介してくれてありがとう。美葡ちゃんとも仲良くなれたよ」
『よかった。ところでそろそろ本題に入るけど』
「何だい?」
『今度ね、山梨にいる私や美葡ちゃんの友達が清水(こっち)に来てね、藤木君にも会ってみたいって言ってるの。良かったらその友達と今度の日曜に一緒にスケートしに行かない?』
「え?うん、いいね!楽しみだよ!!」
『ありがとう、じゃあ、私の家に来てね!一度行ってるけどもし忘れてるならスケート場で待ち合わせて迎えに行くわ』
「あ、大丈夫だよ。道は覚えてるよ」
『わかったわ。ごめんね。返事出さなくて。この事をすぐに伝えたくて電話にしたの』
「大丈夫だよ。電話でも十分嬉しいよ」
『ありがとう。それじゃあね。私も楽しみにしてるわ』
「うん」
 お互い電話を切った。
(堀さんや美葡ちゃんの友達か・・・。なんだかリリィの友達のメイベルが来た時と似たような気持ちだな・・・)


 翌日、みどりは学校で堀から声を掛けられた。
「吉川さん」
「何でしょうか?」
「前に笛吹行った時、私の友達のみきえに会ったの覚えてる?」
「ああ、みきえさんですか。よく覚えてます!」
「そのみきえが今週末ウチに来るの。日曜に私や藤木君と一緒にスケートしに行ったりして遊ぼうと思うんだけど吉川さんもどう?」
「え?」
 みどりは藤木もいると聞いてさらに嬉しくなった。
「藤木さんも・・・。はい、是非お供いたします!」
(ああ、日曜はあの藤木さんと一緒に・・・)
 みどりはとても楽しみでたまらなかった。
(そうだわ!世界大会に行くんですから何か励ましのお言葉を添えなければ・・・!!)


 みきえは単身で清水へ向かっていた。中央線で甲府へ行き、そこで静岡行きの急行列車に乗り換えた。一人で向かうにはやや心細いが、堀や彼女の学校の友達のみどり、そして美葡と共に世界大会へと進む男子に会うと思うと胸を踊らせていた。

 たかしは母親に城ヶ崎の犬を預かる事を相談していた。
「城ヶ崎さんの犬を預かるの?」
「うん、城ヶ崎さんも僕に頼んできたんだ」
「たかしは犬が好きし、タロの気持ちも分かってるからね。きっと城ヶ崎さんもたかしを信用してるのね。いいわ。タロと同様に大切にするのよ」
「うん!」
 たかしは安堵した。

 みどりは堀と共に清水駅でみきえが乗っているという列車が到着するを待っていた。
「それにしても藤木さんもお迎えに行けばよかったのに残念でしたね」
「仕方ないわ、英語の勉強があるって言ってたから」
「でも英語の勉強って誰から教わってるのでしょうか?」
「さあ、そう言えば藤木君やまるちゃんの学校のクラスにイギリス人の子がいたよね?」
「ああ、リリィさんですか」
「もしかしたらそのリリィさんって子が教えてるのかもね」
「そうかもしれませんね」
 そして、列車が到着する音がした。降車した客が改札から出てくるそしてその中に・・・。
「あ、みきえ!」
 堀は嘗ての親友を見つけると呼んだ。
「こずえ、吉川さん!久しぶりだね」
「みきえさん、私の事も覚えておいででしたか」
「そりゃ、こずえの友達を忘れるわけないじゃん」
「あ、ありがとうございます!」
「お父さんが車を出してくれたから乗ってって」
「ありがとう」
 みきえは堀の家に泊まる事になっていた。みどりは途中で自分の家で降ろして貰った。
「では堀さん、みきえさん、また明日宜しくお願い致します」
「うん、じゃあね」
 堀の父が運転する車は走り去った。みどりは明日を楽しみに自分の家へと帰るのであった。 
 

 
後書き
次回:「恋心」
 堀の家に向かった藤木はみきえと出会い、美葡から借りたというビデオの映像を見て、その後四人でスケート場へ行くことになる。一方、たかしはタロの散歩中、城ヶ崎と出会い、二人と共に散歩をするが・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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