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英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇

作者:sorano
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第48話

~オルキスタワー・36F~



「―――ふふ、紹介が遅くなりましたが、私もご挨拶させていただきますね。リーゼアリア・クレール。リィンお兄様とエリゼお姉様の従妹になります。Ⅶ組の皆さんや、ティータさん達には日頃から従兄達がお世話になっております。」

話が一端途切れた事を確認したリーゼアリアは自己紹介をしたが

「って、お世話になっているのはこっちですってば……!ああいや、別にエリゼさんはともかく教官のことは尊敬しても嫌ってもいなくて……」

「???」

ユウナの様子を見ると不思議そうな表情で首を傾げた。

「やれやれ……―――こちらこそ、教官やエリゼさんには日頃から何くれとなくお世話になっています。」

「ふふ、わたしも授業や機甲兵関連もそうですが、寮生活でお世話になっています。」

「私も編入した時から、少しでもみんなに追いつけるように二人には色々とお世話になっているわ。」

「そうですか………二人ともそれぞれが就いている役職についてはまだ若輩の身、どうかよろしくお願いいたしますね。」

クルトやティータ、ゲルドの言葉を聞いて安堵の表情を浮かべたリーゼアリアはユウナ達を見つめて軽く会釈をした。



「参ったな………」

「フフ、会うのは14年ぶりだというのに、お兄様達の事を本当に大切に思っていらっしゃるのですね、リーゼアリアさんは……」

「……………」

その様子を見守っていたリィンは苦笑し、セレーネは微笑み、エリゼは目を伏せて黙り込んでいた。

「ふふ、澄ましちゃって。本当は二人の事を誰よりも尊敬して信頼しているのに♪」

「ロ、ロッテ……!―――コホン、それはともかく。―――リィンお兄様、エリゼお姉様。改めてになりますが、お久しぶりです。こうして再び顔をあわせる事ができて、本当によかったです。」

「ハハ、大げさだな、リーゼアリアは。叔父さん達にも俺達との交流を許してもらったんだから、これからも会って話す機会は何度もあるさ。」

「……そうですね。――――最も、叔父様達は私達と貴女が”14年前と違ってそれ以上の関係”になる事を望んでいらっしゃっているようですが。」

(”14年前と違ってそれ以上の関係になる事を望んでいる”……?)

(一体どういう意味だ……?)

「…………………」

「エリゼお姉様……」

嬉しそうな表情で自分達を見つめるリーゼアリアの言葉にリィンが苦笑しながら答えた後エリゼは静かな表情でリーゼアリアを見つめて答え、エリゼの話の中にあったある言葉が気になったゲルドとクルトは不思議そうな表情で首を傾げ、事情を知っているアルティナは静かな表情で黙って状況を見守り、セレーネは心配そうな表情でエリゼを見つめた。



「あ………」

「……エリゼ。」

「―――ごめんなさい。”あの件”は貴女も知らされていなかったそうだから、貴女にその件を持ち出すのは筋違いね。」

一方リーゼアリアが呆けた声を出して悲しそうな表情をしている中その様子を見たリィンは気まずそうな表情でエリゼに視線を向け、視線を向けられたエリゼは静かな表情でリーゼアリアに謝罪した。

「いえ………謝罪するのは私の方です。14年前の件といい、この前の件といい、私はお二人に本当の妹のように可愛がって頂いたのに、その恩を仇で返す事ばかりを……」

「アリア………」

悲しそうな表情を浮かべたリーゼアリアの言葉を聞いたリーゼロッテ皇女は心配そうな表情でアリアを見つめた。

「どちらの件もリーゼアリアの意志によるものではないだろう?……叔父さん達は”エレボニア帝国貴族”として当然の選択をしただけだ。」

「ですが……」

リィンの慰めの言葉を聞いてもリーゼアリアは申し訳なさそうな表情をしたが

「それに俺達にはこの言葉は俺の師匠の一人からの受け売りなんだが………。『人は様々なものに影響を受けながら生きていく存在だ。逆に生きているだけで様々なものに影響を与えていく。それこそが『縁』であり―――『縁』は深まれば『絆』となる。そして、一度結ばれた『絆』は決して途切れることがないものだ。遠く離れようと、立場を(たが)えようと何らかの形で存在し続ける……』、という教えを受けた。その教え通り、俺達とリーゼアリアも14年前に『絆』で結ばれて、色々あってお互い縁遠い存在になったがこうしてまた復縁する事ができたんだ。だから、そんな事は気にするな。」

「……ぁ…………」

優し気な微笑みを浮かべたリィンの言葉を聞くと呆けた声を出した。



「ふえっ?そ、その言葉って確かヨシュアお兄ちゃんがエステルお姉ちゃんと一緒に戻って来た時にカシウスさんがヨシュアお兄ちゃんに教えた………」

「フッ、彼もカシウスさんの”弟子”の一人でもあるから、カシウスさんから『絆』についての教えも受けているのさ。」

「カシウス………――――リベールの英雄――――”剣聖カシウス・ブライト”がそのような教えをリィン教官に……」

「ちなみにカシウス・ブライト少将は”風の剣聖”の兄弟子でもあります。」

「ええっ!?ア、アリオスさんの……!?」

『『縁』は深まれば『絆』となる。………遠く離れようと、立場を違えようと、一度結ばれた『絆』は決して途切れることがないもの』、か。フフ、いい言葉ね。」

一方リィンが口にした聞き覚えのある言葉に首を傾げたティータに静かな笑みを浮かべて答えたオリヴァルト皇子の説明を聞いたクルトは目を丸くし、オリヴァルト皇子の説明を補足したアルティナの話を聞いたユウナは驚き、ゲルドは優し気な微笑みを浮かべていた。

「幸い俺達には時間もあるんだ。また、以前のように手紙のやり取りやお互いの時間ができたら実際に会って交流を深めて行こう。」

「ぁ………―――はいっ!」

「…………………」

「うふふ、ここでも出たわね、リィンお兄さんお得意の”必殺笑顔で頭なでなで”が♪」

(ふふふ、もはやこれで今後”彼女がご主人様とどんな関係になるのか”はわかったも同然ですね。)

(うふふ、私達にはわかるわよ。次はその娘をハーレムの一員にするのでしょう?)

(予想はしていたけど、あの様子だとリーゼアリアもリィンの事を昔から慕っていたのでしょうね……)

そして立ち上がって近づいてきたリィンに頭を優しく撫でられて嬉しそうな表情で返事をしたリーゼアリアの様子をエリゼが静かな表情で見守っている中、ユウナ達は冷や汗をかいて脱力し、レンは小悪魔な笑みを浮かべ、リザイラは静かな笑みを浮かべ、ベルフェゴールはからかいの表情になり、アイドスは苦笑していた。

「フッ、ならば私達もリィン君達に負けずに同じ兄妹の間柄としてお互いの仲を深めようじゃないか!という訳でまずはアルフィン、まずは再会のハグをしようか♪」

「遠慮しますわ。わたくしはこれでも”人妻”ですから、例え相手がお兄様といえど、夫であるリィンさん以外の男性と抱きしめ合うのはさすがにどうかと思いますし。」

「ガーン!!」

「クスクス……」

「フフ………」

一方オリヴァルト皇子もリィンに続くように立ち上がってアルフィンを見つめて抱擁のポーズをしたが、アルフィンがあっさり断りの答えを口にするとショックを受けた様子で声を上げ、その様子を見ていたユウナ達が再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中ティータとリーゼロッテ皇女は微笑ましそうに見守っていた。



「うふふ、リィンお兄さんはそれでいいとして、エリゼお姉さんはどうかしらねぇ?」

「レ、レン教官……何もそこで水を差すような事を言わなくても……」

するとその時意味ありげな笑みを浮かべたレンはエリゼに視線を向け、レンの言葉を聞いたセレーネは不安そうな表情をしている中その場にいる全員はエリゼに注目し

「……………………」

注目されたエリゼは何も語らず目を伏せて黙り込んでいた。

「あの……エリゼお姉様……やはりエリゼお姉様はお父様達や私の事を今でもお怒りになられているのでしょうか……?」

「………叔父様達はともかく、貴女に関してはそれ程思う所はないわ。だけど一つだけ聞きたい事があるわ。――――――貴女はどうして”聖アストライア女学院”に入学してからも、私達に連絡を取らなかったのかしら?遠方から”聖アストライア女学院”に通っている女学生たちは女学院専用の”寮”で生活しているのだから、寮生活をしていた貴女なら叔父様達の目を盗んで私達に連絡を取る機会は幾らでもあったはずよ。」

「!!そ、それは………」

エリゼの問いかけに目を見開いたリーゼアリアは言い辛そうな表情をし

「大方叔父様達の言いつけを律儀に守っていたか、何年も連絡を取っていないのだから今更連絡を取るのは気まずいと思っていたのでしょう?――――そして内戦が終結して兄様が内戦と七日戦役で活躍した事で有名になった事で叔父様達からのお許しが出て連絡を寄越した事からして………――――結局貴女の私達に対する絆は”親の許しがないと連絡すら自発的に寄越す事はしない程度”だったものなのでしょう?」

「ぁ………」

「エリゼ!さすがにはそれはリーゼアリアに対して言い過ぎじゃないか!?」

エリゼの正論に反論できないリーゼアリアは呆けた声を出して辛そうな表情で顔を俯かせ、リィンはエリゼに注意をした。



「………―――申し訳ございません。少々頭に血が上っていました。頭を冷やす為に私は先に失礼しますので、兄様達は私の事は気にせず殿下達との会談を続行してください。―――オリヴァルト殿下、リーゼロッテ殿下、それと皆様方。みっともない所をお見せしてしまい、大変失礼しました。―――それではお先に失礼します。」

するとエリゼは静かな表情で謝罪をした後立ち上がってリィン達を見回して頭を下げて謝罪をし、そして部屋から出て行き

「エリゼお姉様!?す、すみません!わたくしはエリゼお姉様を追いかけますでの、わたくしもお先に失礼しますわ!」

「ああ、エリゼの事は頼む!」

エリゼの行動に驚いたセレーネはリィンの言葉を背に受けてエリゼの後を追って部屋を出た。

「……………………」

「アリア…………」

一方二人が出て行った後辛そうな表情で顔を俯かせ続けているリーゼアリアの様子をリーゼロッテ皇女は心配そうな表情で見つめ

「え、えっと………」

「エリゼはリーゼアリアの一体何に対してあんなに怒っているのかしら?」

「ゲ、ゲルドさん。さすがに本人がいる目の前でそれを訊ねるのは……」

「……ちなみに君は何か事情を知っているのか?」

「……まあ、”それなり”には。」

リーゼアリアにかける言葉がないユウナは気まずそうな表情をし、ゲルドの質問を聞いたティータは冷や汗をかいて不安そうな表情でリーゼアリアに視線を向け、クルトに訊ねられたアルティナは静かな表情で答えた。



「……申し訳ございません、オリヴァルト殿下、リーゼロッテ殿下。自分達の家庭の事情に関係のない殿下達にまで、気分を悪くするような所を見せてしまって。」

「いや、エリゼ君がリーゼアリア君に対してあのような態度を取った元凶は間接的ではあるが私達”アルノール皇家”も関わっているのだから、むしろ謝罪するのは私達の方だ。」

「その……お義姉様、お義姉様はエリゼさんと親しい様子ですが……お義姉様はどのようにして”アルノール皇家やエレボニア帝国貴族を嫌っている”エリゼさんと親しくなれたのでしょうか?」

「へ…………”アルノール皇家やエレボニア帝国貴族”を嫌っているってどういう事ですか?エリゼさん、普段の寮生活でもエレボニア帝国貴族のゼシカやミュゼとかに対してもあたし達と同じ態度で接していますし、さっきもオリヴァルト殿下やリーゼロッテ殿下に対しても普通に接していましたけど……―――っていうか、エリゼさんも貴族のお嬢様ですよね?なのにどうして、貴族やエレボニア皇家を……」

リィンに謝罪されたオリヴァルト皇子は静かな表情で答え、リーゼロッテ皇女のアルフィンへの質問を聞いたユウナは困惑の表情をし

「ふふっ、別にエリゼはアルノール皇家やエレボニア帝国貴族全てを嫌っているという訳ではないわ。エリゼが嫌っているのはお父様と身分にうるさいエレボニア帝国貴族よ。」

「エレボニアの王様と身分にうるさい貴族達を……?」

「………もしかしてエリゼさんがリーゼアリアさんに対して先程のような態度を取った理由はエリゼさんとリィン教官の父君――――テオ・シュバルツァー男爵閣下がエレボニアの社交界から追放された件が関係しているのですか?」

「ふえ……?リィン教官達のお父さんがエレボニアの社交界から追放されたって、一体どういう事なんですか??」

リーゼロッテ皇女の疑問に苦笑しながら答えたアルフィンの話を聞いたゲルドが首を傾げている中察しがついたクルトのリィン達に対する確認の問いかけを聞いて首を傾げたティータはリィン達を見つめた。

「……そうだな。本当なら俺達の家庭の事情に君達を巻き込むつもりはなかったのだが、巻き込んでしまった以上説明をするべきだな―――――」

クルト達の問いかけに目を伏せて黙って考え込んでいたリィンは目を見開いてオリヴァルト皇子達と共にエリゼがリーゼアリアに対して厳しい態度を取る原因となった事情―――――14年前リィンとエリゼの父親であるテオ・シュバルツァー男爵が雪山に捨てられたリィンを拾って養子にした事でエレボニアの社交界のゴシップの的となり、それ以降エレボニア貴族達の煩わしい言葉に嫌気がさしたシュバルツァー男爵はエレボニアの社交界に姿を現す事はなくなり、またそのゴシップの件を機に今まで交流関係があったリーゼアリアの実家である”クレール子爵家”からも一方的に絶縁された事、そして内戦が終結して”貴族連合軍”が敗北したエレボニア貴族達の立場が弱くなった事で、将来を危ぶんだリーゼアリアの両親がリィンとリーゼアリアを”謝罪”という名目で婚約させようとし、その場に両親と共に同席していたエリゼが叔父夫婦に対して両親も初めてみるような凄まじい怒りを見せて叔父夫婦を追い返した話を説明した。



「14年前の件に加えてそのような事が………」

「だからエリゼは身分にうるさいエレボニア帝国の貴族達とエリゼのお父さんと親しい関係でありながら何もしてくれなかったアルフィンのお父さん――――エレボニアの王様を嫌っているのね………」

「はい……お恥ずかしい話、未だにエレボニア帝国貴族の多くは”尊き血”に拘っている家が多い状況なんです……」

「で、でもミュラーさんや先月の特別演習の時に助けてくれたラウラさん、それにゼシカさんやミュゼさんもエレボニア帝国の貴族の人達ですよね?わたしにはちょっと想像し辛いです……」

「まあ、ティータの場合、今まで出会ったエレボニアの上流階級の人達の中でも”稀な存在”ばかりだったから、ティータがそう思うのも無理はないわ。」

「ハハ、そうだね。後は身分制度を廃したリベール王国に住んでいるからというのもあるかもしれないが………」

「それらを踏まえるとティータさんは”運がよかった”からかと。」

事情を聞き終えたクルトは重々しい様子を纏って呟き、静かな表情で呟いたゲルドの言葉に頷いたリーゼロッテ皇女は悲しそうな表情をし、戸惑いの表情をしているティータの意見にレンとオリヴァルト皇子は苦笑しながら、アルティナは静かな表情で指摘した。

「う、うーん………クロスベルが自治州だった頃エレボニア帝国の貴族達も旧カルバード共和国の旅行者達のように貴族だからという理由でクロスベルで悪さをしておきながら、ハルトマン元議長達――――エレボニア帝国派の議員達にもみ消されたりした事もありますから、身分にうるさい貴族達を嫌うエリゼさんの気持ちも何となくわかるんですが………その件でリーゼアリアさんにまで厳しい態度を取る理由がわからないんですよね……リーゼアリアさんはリィン教官やエリゼさん達のように、平民のあたし達に対しても普通に接してくれますし……」

「それはやはり、エリゼお姉様はお父様達の言いつけを守っていた私もお父様達と”同類”だと見ているからだと思います………」

「リーゼアリア……」

困惑の表情をしているユウナの疑問に辛そうな表情で答えたリーゼアリアの様子をリィンは心配そうな表情で見つめた。

「――――私はそれらの件が理由でエリゼはリーゼアリアに対して怒っているんじゃないと思う。」

「え………」

「あら、ゲルドはどうしてそう思ったのかしら?」

しかし意外な推測を口にしたゲルドの答えを聞いたリーゼアリアは呆け、レンは目を丸くしてゲルドに訊ねた。



「だって、本当にエリゼがリィン教官の件でリーゼアリアに対しても怒っていたら、再び始めたリーゼアリアとの文通をエリゼはしないでしょう?」

「それは………」

「言われてみればそうですね。」

「ああ……確かリーゼアリアとの文通の頻度は俺と同じくらいだったはずだ。―――そうだよな、リーゼアリア?」

「は、はい。お父様達が私にも話を通さずテオ叔父様達にお兄様と私との婚約を提案してからも、文通は止まっていません。」

「フム………――――レン君、君ならエリゼ君の考えもわかるんじゃないかい?」

ゲルドの説明を聞いたクルトとアルティナが目を丸くして同意している中、リィンに確認されたリーゼアリアの答えを聞いて考え込んだオリヴァルト皇子はレンに訊ねた。

「あら、そこでどうしてレンに聞くのかしら?」

「ハハ、1年半前君がクロスベルの件で新たに得た”能力”なら、エリゼ君の考えも読み取れるだろう?」

「そ、それは………」

「確かにレン教官なら可能かと。」

「ア、アハハ……」

(?一体何の事かしら……?)

レンが持つ異能の一つ――――”他人の記憶を読み取る能力”の事を知っていたリィンは表情を引き攣らせ、アルティナは静かな表情で答え、ティータは苦笑し、その様子をユウナは不思議そうな表情で見守っていた。



「そうね………………――――エリゼお姉さんがリーゼアリアお姉さんに対して怒っていた理由は簡単に言えばリーゼアリアさんのエリゼお姉さんやリィンお兄さんに対する”絆の薄さ”よ。」

「”絆の薄さ”………それは一体どういう意味なのでしょうか?」

その場で集中して自分の記憶の中のエリゼの記憶を読み取ったレンの答えを聞いたリーゼロッテ皇女は真剣な表情でレンに訊ねた。

「その言葉通りよ。リーゼアリアお姉さんも言っていたけど、リーゼアリアお姉さんは二人からは本当の妹のように可愛がってもらっていたのでしょう?なのに、幾ら両親の命令だからと言って、その命令を破らずに内戦終結まで連絡をしてこなかったリーゼアリアお姉さんと自分達との”絆の薄さ”に怒っているのよ。もし、本当にお互い大切な姉妹(きょうだい)であると認識していたら、親の言いつけなんて破ってでも連絡をするでしょう?――――ましてやリーゼアリアお姉さんはアストライア女学院に入学してからは親の目が届かない寮生活だったんだから。」

「……ぁ……………」

「エリゼ……………」

レンの答えを聞いたリーゼアリアは呆けた声を出し、リィンは複雑そうな表情をした。

「ティータならエステル達、ユウナならロイドお兄さん達、クルトならミュラーお兄さん、アルティナならリィンお兄さん、ゲルドならセシルお姉さん達と親の一方的な都合で連絡を取るなって両親に命令をされたら、従うかしら?」

「お、お母さん達はそんな事は言うような人達じゃないけど………もし、そんな事を言われてもわたしはお母さんたちの言う事を聞かないよ。エステルお姉ちゃん達もわたしにとってお母さんたちと同じくらい大切な人達だもの。」

「あたしだって同じです!ロイド先輩達はあたしにとって憧れの存在なんですから!」

「……自分も同じです。例えもしそのような事が起こったとしても納得のできる理由でなければ、兄上との連絡を父上達の目を盗んででもしていたと思います。」

「親が存在しないわたしにはイマイチ理解できませんが……それでもわたしはリィン教官を補佐する使用人としてリィン教官の意志によって引き取られたのですから、リィン教官以外の人達に指示をされてリィン教官と連絡を交わす事を禁じられる事は納得できません。」

「……私も。セシルお義母さん達は初めてできた私の”大切な家族”だもの。」

レンにそれぞれ例えを出されたティータ達はそれぞれ即答し

「―――ご覧の通り、ティータ達もそれぞれ親の言いつけなんて簡単に破れるようなそれぞれにとって大切な”絆”があるでしょう?エリゼお姉さんだって例え両親どころか主君であるリフィアお姉様に逆らってでも、リィンお兄さん達との絆を大切にしたでしょうね。―――つまりリーゼアリアお姉さんに足りなかったものは”親の言いつけ”という”呪縛”を自ら破る”勇気”よ。」

「……………結局は私の自業自得だったのですね………もし、寮生活に入ってから内戦が勃発するまでに私から兄様達に連絡を差し上げれば、エリゼお姉様は以前のように接してくれていたのですね…………」

「アリア………」

「………レン君。リーゼアリア君がエリゼ君の信頼を取り戻す方法で何かいい方法を教えてくれないだろうか?――――この通りだ。」

レンの指摘を聞いて辛そうな表情で顔を俯かせているリーゼアリアをリーゼロッテ皇女が心配そうな表情で見守っている中オリヴァルト皇子はレンを見つめて頭を下げた。



「わたくしからもお願いします。―――アリアは今まで14年前の件でずっと苦しみ、後悔し続けてきました。どうかこの娘を14年前の苦しみと後悔から解き放たれる方法を教えてあげてください。」

「殿下………」

リーゼロッテ皇女もオリヴァルト皇子に続くようにレンを見つめて頭を下げ、二人の行動を見たクルトは驚き

「そうは言っても一度失った信頼を取り戻す事はかなり難しいわよ?今は文通を続けているようだけど、文通に加えて実際に会って交流を深める事を地道に続けていくか………――――後はリィンお兄さんとエリゼお姉さんのピンチに駆けつけて助けたりしたら、エリゼお姉さんもリーゼアリアお姉さんの事を見直すでしょうね。」

「教官とエリゼさんのピンチに駆けつけるって………」

「二人の強さを考えるとそんな事になった場合、相当不味い状況だと思うのですが……」

「それ以前にベルフェゴール様達の守護がある教官達が危機的状況に発展するなんてありえないのですが。」

レンの答えを聞いたユウナは表情を引き攣らせ、クルトは困った表情をし、アルティナはジト目で指摘した。

「……………………貴重な意見をして頂き、本当にありがとうございます。それとアリアとオリヴァルト殿下も私の為にわざわざレン皇女殿下に嘆願して頂き、ありがとうございます。」

「フフ、気にしないで。貴女は私にとって大切な親友でもあるのだから。」

「それに君達がそんな事になってしまったのも元はといえばシュバルツァー家を庇わなかった私達”アルノール皇家”の怠慢でもあるのだから、失ったシュバルツァー家との絆を復活させる為なら幾らでも頭を下げるよ。」

「というかそれ以前にオリビエお兄さんの場合、今までもエステル達やシェラザードお姉さん達に何度も頭を下げているからありがたみが全くないわよねぇ?」

「レ、レンちゃ~ん………」

「全くもう………”素のお兄様”はおふざけが多すぎたお陰で、旧知の方々の信頼は下の方である事に身内として恥ずかしい話ですわ。」

レンに感謝の言葉を述べた後自分達にも感謝の言葉を述べたリーゼアリアに対してリーゼロッテ皇女と共にオリヴァルト皇子は静かな表情で答え、呆れた表情で指摘したレンの意見を聞いたリィン達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中ティータは疲れた表情で呟き、アルフィンは呆れた表情で溜息を吐いた。

「ハッハッハッ、何せ私は”放蕩皇子”だからねぇ。―――まだ他のVIPの方々と話していないのだろう?名残惜しいが今回の邂逅はこれで閉幕にしようじゃないか。」

「……そうですね。オリヴァルト殿下、リーゼロッテ殿下、それにリーゼアリア。俺達はこれで失礼します。………それと俺も時間をかけてエリゼを説得するつもりだから、レン教官がさっき言った提案の中にあった無茶をするような事をするなよ?」

「…………はい。お兄様、それに皆さんもお疲れ様でした。」

その後オリヴァルト皇子達がいる部屋から退室したリィン達は廊下で待っていたエリゼとセレーネと合流した後ユーディット達がいる部屋を訊ねた――――


 
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