英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇
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第47話
~オルキスタワー・36F~
「お兄様、お姉様……!」
「ふふ、ようこそいらっしゃいました。」
リィン達が部屋に入るとソファーに座っていたリーゼアリアが立ち会ってリィン達に声をかけ、ソファーに座っているリーゼロッテ皇女も続くようにリィン達に声をかけた。
「お久しぶりです、リーゼロッテ殿下。それにリーゼアリアも。」
「………こうして直に顔を合わすのは14年ぶりになるわね。」
「はい……ようやくまたお二人とお会いできて本当によかったです……!」
「フフ、よかったわね、アリア。―――――わたくしの方は年始以来になりますね。それとアルフィン義姉様もお久しぶりです。」
「ええ、リーゼロッテも元気そうで何よりだわ。」
(この人達がもう一人のエレボニアの皇女殿下と教官とエリゼさんの従妹さん……)
(ハア、お二人とも夢みたいに綺麗でステキっていうか……)
リィン達がリーゼロッテ皇女達とそれぞれ再会の挨拶の言葉を交わしている中ユウナは呆けた表情で、ティータは憧れの表情でリーゼロッテ皇女達を見つめた。
「―――フッ、よく来てくれたね。リィン君達。」
するとその時窓際にいたオリヴァルト皇子がリィン達に近づいて声をかけた。
「お兄様もお久しぶりですわね。」
「ああ、年始以来になるね。―――リィン君達との仲も相変わらず良好で何よりだよ。それと第Ⅱへの就任、ありがとう。リィン君、エリゼ君、セレーネ君、そしてレン君――――遅くなったが第Ⅱへの就任、感謝するよ。」
「ふふっ、勿体無いお言葉ですわ。」
「ま、貴重な経験になって結構楽しませてもらっているわ。」
「私も貴重な経験をさせて頂き、そのような機会を設けて頂いた殿下に感謝しています。」
「自分達の方こそ殿下に感謝しています。トヴァルさんと合わせて色々と配慮してくださって……この場にいない仲間達と合わせて改めてお礼を言わせてください。」
アルフィンと言葉を交わしたオリヴァルト皇子に感謝の言葉をかけられたセレーネ達がそれぞれ答えている中軽く頭を下げたリィンはオリヴァルト皇子を見つめた。
「ハハ、そっちは裏技だからあまり気にしないでくれたまえ。」
(……なんか旧Ⅶ組絡みで色々あるみたいだけど……さすがはエレボニアの皇子様だけあって気取った人みたいね。)
(うん……それでいて親しみもある人だから、エレボニアの人達もオリヴァルト皇子が自分達の国の皇子である事が自慢なんでしょうね……)
(い、いや………)
オリヴァルト皇子の印象についてそれぞれ小声で口にしたユウナとゲルドの言葉を聞いたクルトは”本性”をさらけ出した時のオリヴァルト皇子を知っているため表情を引き攣らせて言葉を濁した。
「フフ、そしてそちらが新Ⅶ組とかつての小さな戦友どの……クルトも久しぶりだが、ティータ君は3年ぶりになるかな?」
そしてユウナ達とティータに視線を向けたオリヴァルト皇子は突如リュートを取り出し
「フッ、まずは出会いと再会を祝して一曲贈らせてもらうとしようか♪」
「はは、いえ……あまり時間もないでしょうし。」
「あはは……全然変わりなくて安心しましたっ。」
「……ご無沙汰しています。1年ぶりくらいでしょうか。」
その場で一曲弾こうとしているオリヴァルト皇子の様子に冷や汗をかいて脱力したリィンとティータ、クルトは苦笑しながら答えた。
「え、え……?」
「……噂には聞いていましたがこういう方みたいですね。」
「むしろ噂以上だと思うわよ♪」
「……まあ、リフィアと比べればオリヴァルト殿下の方がまだ”マシ”かと。」
「エ、エリゼお姉様……お二人に対して失礼ですわよ……」
(”リフィア”……確かお義父さんの孫娘で、メンフィル帝国の王様の跡継ぎの皇女よね……?あれ……?という事はもしかして私、お義父さんの娘になった時点で”叔母”にもなっているのかしら……?)
あまり動じていない様子でオリヴァルト皇子と接しているリィン達を見たユウナは戸惑い、ジト目で呟いたアルティナにレンと共に指摘したエリゼの言葉を聞いたセレーネが冷や汗をかいている中、ある事が気になったゲルドは考え込んでいた。
「クスクス……」
「もうお兄様、初めての方が引いていらっしゃいますわ。」
「ふふ、どうぞ遠慮なくおかけになってくださいね。
一方その様子を見守っていたリーゼアリアは微笑み、アルフィンは呆れ、リーゼロッテ皇女はリィン達にソファーに座るように促した。
「―――いやはや、懐かしいねぇ。ティータ君とはリベールの異変、いや、”影の国”以来になるかな?」
「あはは、あの時は大変でしたねぇ。でもオリビ―――オリヴァルト皇子が元気そうで安心しましたっ。」
「フッ、君の方こそ素敵なお嬢さんになったものだ。アガット君も、君の成長ぶりにさぞヤキモキしてることだろう。」
「そ、そんなことは………えへへ。」
「クスクス、嬉しさを隠しきれていないわよ、ティータ♪」
オリヴァルト皇子の賛辞に恥ずかしそうに笑った後嬉しそうな表情をしているティータにレンはからかいの表情で指摘し、その様子を見守っていたリィン達は冷や汗をかいて脱力した。
「そう言えばアガット君とはサザ―ラントで会ったそうだが……―――前回の演習の話は聞いている。リウイ陛下達の要請、本当にお疲れだった。」
「いえ、旧Ⅶ組やステラ達、アガットさんが助けてくれたのもありますし……クルト、ユウナ、アルティナを始め、第Ⅱの全員が力を貸してくれました。」
「教官………」
オリヴァルト皇子の言葉に答えたリィンの話を聞いたクルトは驚いた表情をした。
「ふふ、クルトさんがⅦ組に入ったとは聞いていましたが、これも何かの縁みたいですね。………まさかセドリックがあんな事をするとは思いませんでしたけど。」
「あ…………」
「…………」
「……ロッテ。」
複雑そうな表情をしたリーゼロッテ皇女の言葉にセドリック皇太子が機甲兵教練に乗り込んできた時の事を思い出したクルトは呆けた声を出し、アルフィンとリーゼアリアは複雑そうな表情をした。
「お耳に入っていましたか。」
「そう言えば、あの偉そうな皇太子の義姉にあたるんでしたっけ―――」
セドリック皇太子の事を思い出した表情を厳しくしてセドリック皇太子についてあまりよく思っていない様子のユウナの発言を聞いたリィン達はユウナに注目した。
「……流石に不敬かと。」
リィン達に注目されたユウナが我に返って慌てている所をアルティナがリィン達を代表して指摘した。
「いや、返す言葉もないかな。リィン君に対してもそうだが……」
「特にクルトさんは、ご実家も含めて本当に申し訳ないことを……この通り、お詫びいたします。」
「そんな……どうかお気になさらないでください!父も兄も、叔父だって既に納得している話ですし!」
「……………………」
(……?一体なにが……)
オリヴァルト皇子の言葉に続くように謝罪したリーゼロッテ皇女の言葉を聞いたクルトは謙遜した様子で答え、その様子を見守っていたリィンは目を伏せて黙り込み、ユウナは不思議そうな表情で首を傾げた。
「自分に対する配慮も不要です。どちらかというと、殿下の見違える成長ぶりに戸惑いの方が大きいといいますか……」
「そうですわよね……?わたくし達がセドリック殿下とお会いした回数は指で数えられる程度ですが、それでもまるで”人が変わったかのような”成長ぶりですわよね……?」
「……お兄様、リーゼロッテ。セドリックは一体いつから、あんな風になったのかしら……?」
リィンの意見に頷いたセレーネは戸惑いの表情をし、アルフィンは不安そうな表情でオリヴァルト皇子達に訊ねた。
「……去年の夏くらいかな。体調不良で夏至祭を休んだ後、別人のように変わった印象となった。」
「急に背も伸びて、逞しくなって……それだけならよかったのですが強引なところが目立つようになって……お義母様も気にしていましたが、”あの方”が原因に違いありません。」
「”あの方”ねぇ?まあ、皇太子の今の性格を考えたら誰に似てきたのかは明白よね。」
「レン教官、それは………」
(………体調不良で身体を休んだ後に、別人のように変わった話も気になるわね………多分、セドリック皇太子に”何か”があってそんな事になったのだと思うのだけど……)
オリヴァルト皇子の後に答えたリーゼロッテ皇女の話を聞いて意味ありげな笑みを浮かべているレンの言葉を聞いたエリゼは複雑そうな表情をし、ゲルドは静かな表情でセドリック皇太子の変貌について考え込んでいた。
「……はい、オズボーン宰相です。最近、セドリックが随分、懇意にしているみたいで……」
「……………」
(お兄様……)
(兄様……)
「あ、あの方が………」
「”鉄血宰相”なんて呼ばれている方でしたっけ……?」
「それに、”西ゼムリア通商会議”の時に自分を狙うテロリストとそのテロリストを殲滅する為に雇った猟兵達――――”赤い星座”を利用して、クロスベル併合の第一段階を築き上げようとしたけど、ヴァイスハイト陛下達の反撃によって痛手を受けたって言われてる……」
リーゼロッテ皇女の答えを聞いたその場にいる多くの者達が血相を変えている中真剣な表情で黙り込んでいるリィンに気づいたセレーネとエリゼは心配そうな表情をし、クルトは驚き、ティータは不思議そうな表情で訊ね、ユウナは表情を厳しくした。
「……元々、宰相の豪腕ぶりに憧れていた子ではあったからね。元気を取り戻し、逞しく成長したきっかけに宰相が一役買っているのなら、個人的には感謝したいくらいさ。今の強引さも、いずれセドリック自身、その是非に気づくと私は信じている。」
「相変わらずオリビエお兄さんは肝心な事に限って、判断が鈍いわよねぇ。――――1年半前せっかくレンが”革新派”の”力”を一時的に著しく衰退させてあげたのに、それを利用せずむざむざと”鉄血宰相”の復権を許したんだから。パパも指摘したでしょうけど、”鉄血宰相”は宰相の癖に内戦終結に何も貢献していないのだから、それを口実に”鉄血宰相”をエレボニアから排除できたでしょうに。」
「レ、レンちゃん………」
オリヴァルト皇子の話を聞いて呆れた表情で指摘したレンの言葉を聞いたティータは複雑そうな表情をし
「耳が痛い話だ。だけど例え私がその為に動いたとしても、父上が宰相殿の続投を望んでいたから宰相殿の排除は無理だったと思うよ。」
「―――だったら、ユーゲント皇帝の皇位も剥奪して、自分が”皇”になればいいだけの話じゃない。ユーゲント皇帝は内戦勃発時真っ先に貴族連合軍に囚われて、結局レン達が救出するまで内戦終結の為に何もしてこなかったのだから。内戦や七日戦役の件に加えてエレボニアの若き英雄―――”灰色の騎士”と結ばれた事でエレボニアの民達に大人気なアルフィン夫人と組めば、ユーゲント皇帝から皇位を簒奪する事も結構簡単だったと思うわよ?幸いオリビエお兄さんもアルフィン夫人程じゃないけど内戦終結に貢献していたのだし。」
「「………………」」
「レ、レンちゃん……さすがに今の言葉はわたしも不味いと思うんだけど……」
「レ、レン教官!お言葉ですが、それはさすがにユーゲント陛下にもですが、オリヴァルト殿下に対しても不敬かつ危険な発言ですわよ……!」
オリヴァルト皇子に対して痛烈な指摘をしたレンの指摘にリィンとアルフィンがそれぞれ複雑そうな表情で黙り込んでいる中、ティータは不安そうな表情で呟き、セレーネは慌てた様子でレンに注意をした。
「ハハ、そう言う厳しい意見や危ない意見を躊躇いもなく口にできるところも相変わらずだね………しかも今のエレボニアの状況を考えると、レン君の意見通りにエレボニアの為にアルノール家の一員として”非情”な手段を取った方がよかったかもしれないと思えるのが洒落にならない所だね……」
「お義兄様………」
疲れた表情で呟いたオリヴァルト皇子の様子をリーゼロッテ皇女は心配そうな表情で見つめ
「クスクス、いっそ”他国との交流を深める為という名目”でパパやヴァイスお兄さんに”皇家”に関する心構えやその他諸々について学んだらどうかしら?ミュラーお兄さんあたりなら、『ちょうどいい機会だから、ついでにそのふざけた性根を叩き直してもらってこい』とでも言って賛成すると思うわよ?」
(兄上なら本当に言いそうで冗談になっていないな……)
「ハハ、その光景が目に浮かぶよ。―――話は逸れたが、クルト、リィン君も。今はセドリックの事は見守ってやって欲しい。」
「お兄様……」
小悪魔な笑みを浮かべたレンの話にその場にいる多くの者達が冷や汗をかいている中兄のオリヴァルト皇子に対する普段の接し方を思い浮かべたクルトは表情を引き攣らせ、オリヴァルト皇子は苦笑した後表情を引き締めてクルトとリィンに声をかけ、その様子をアルフィンは静かな表情で見守っていた。
「………はい。」
「勿論です、殿下。」
(……色々と複雑な事情があるみたいですけど……)
(ふふ、でもちょっと見直したかも。弟さんを気遣う良いご兄妹っていうか。)
(うん……オリヴァルト皇子にとって、リーゼロッテ皇女にとって、そしてアルフィンにとってセドリック皇太子が大切な”家族”である証拠ね……)
オリヴァルト皇子の言葉に二人がそれぞれ答えている様子を見守っていたティータの小声に続くように呟いたユウナの言葉に頷いたゲルドは微笑ましそうな表情でオリヴァルト皇子達を見つめた。
「あの、義姉様。この前の手紙の件ですが……やはり考え直して頂けないでしょうか?」
「フウ……手紙にも書いたように、メンフィル帝国の許可もなしにそんな事はできないし、例え許可が出たとしても不規則な日数で女学院に通うなんて特別な扱いをしたら、生徒達に”示し”がつかないでしょう?」
リーゼロッテ皇女に話しかけられたアルフィンは疲れた表情で溜息を吐いて答え
「それでも、です。生徒達もそうですが教師の方々も皆、義姉様が女学院に戻ってくることを心から待ち望んでおります。その証拠に生徒達にアンケートを取った所、全員が例え不規則な日数でも義姉様と共に学びたいというありがたい回答を頂けましたし、学院長も義姉様の事は”退学”扱いではなく”休学”扱いにしてくださっていますし、義姉様の事情についても理解しておられ、義姉様を”特例”扱いする事も了承してくださっています。」
「もし、どうしても生徒として再び女学院に通う事が厳しいのでしたら、”講師”として女学院に来て下さることはどうでしょうか?」
アルフィンの答えを聞いたリーゼロッテ皇女はリーゼアリアと共に説明をした。
「”講師”って……わたくしが貴女達に何を教えろというのかしら?わたくしにはリィンさん達のように人にものを教える事ができるような知識はないわよ?」
「上流階級に嫁いだ女性の一人として、実際に嫁いだ家での生活や気をつける事等を教えて頂ければと。皇女殿下もご存知の通り聖アストライア女学院は将来上流階級に嫁ぐ淑女を育てる為の学術機関でもありますから、私達と同年代でありながら既にリィンお兄様の伴侶となった皇女殿下の夫婦生活は私達にとっても身近に感じて将来の勉強になると思います。」
「うふふ、アストライア女学院の生徒達がリィンお兄さんとアルフィン夫人の夫婦生活に興味がある事は嘘ではないでしょうけど……その興味がある夫婦生活の中には当然”夜の生活”も含まれているのでしょうね♪」
「ブッ!?」
「レ、レン教官!?」
「は、はわわわわわ……っ!?」
「夫婦関係での”夜の生活”……?――――あ、それってもしかして……」
「間違いなく”子作り”の事かと。」
「わー!わー!ふ、二人とも男がいる前でそんな事を堂々と口にしちゃダメよ!」
「ハア………」
「あの、レン教官……お言葉ですがそういう事はせめて本人達がいない所で聞くべきだと思うのですが……」
「ハッハッハッ、相変わらずクルトもミュラーのように真面目だね。私にとっても”甥”か”姪”ができるかもしれない他人事ではない話だから、是非アルフィンの講義を女生徒達と共に受けたいね♪」
「もう、お義兄様ったら………」
アルフィンの疑問に答えたリーゼアリアの答えに続くようにからかいの表情で指摘したレンの話を聞いたリィンは吹き出し、セレーネは驚き、ティータは顔を赤らめて慌て、首を傾げた後ある事に気づいたゲルドとジト目で呟いたアルティナの言葉を聞いたユウナは顔を真っ赤にして指摘し、困った表情でレンに指摘したクルトに対して呑気に笑って答えたオリヴァルト皇子の答えを聞いたその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中リーゼロッテ皇女は呆れた表情で溜息を吐いた。
「ふう………復学の件にしても講師の件にしても、まずはメンフィル帝国に話を通してからよ。お兄様の頼みでわたくしが宿舎の管理人を務めている事やわたくしがメンフィル帝国の許可も無しに勝手にそのような事ができるような立場ではない事は貴女達も知っているでしょう?」
「それは…………」
「………―――わかりました。幸い今回の交流会でメンフィル皇家の方々がいらっしゃっている上、その中にはシルヴァン皇帝陛下の側妃であられるセシリア将軍閣下もいらっしゃっているのですから、まずはセシリア将軍閣下達の説得から始めようと思います。」
「えっと……さっきから気になっていたけど、アルフィンがリーゼアリア達の学校に戻ってきて欲しいって、どういう事なのかしら?」
アルフィンの答えを聞いたリーゼアリアが複雑そうな表情で答えを濁している中リーゼロッテ皇女が静かな表情で答えるとゲルドが質問をした。
「……お恥ずかしい話、内戦が終結してから学費を払えなくなった生徒達が学院を去ってしまう事が続出している状況でして。その件に加えて内戦や七日戦役の件で女学院の生徒達は今後の自分達に不安や暗い思いを抱えて過ごしている状況で、その状況を少しでも良くする為に生徒達が今でも慕っているアルフィン皇女殿下が女学院に復学して頂けるように、ロッテが何度か手紙で嘆願している状況なんです。」
「聖アストライア女学院は現在そのような事になっているのですか………」
「内戦が終結してから学費を払えなくなった理由は………やはりエレボニア帝国政府の貴族達に対する締め付けの影響ですか?」
「………ああ。今はリーゼロッテやリーゼアリア君が手を尽くして、学費を払えなくなった生徒達に対する救済策を考えて、これ以上学費不足による退学者の続出を何とか食い止めている状況なんだ。」
リーゼアリアの話を聞いたクルトは重々しい様子を纏って呟き、真剣な表情を浮かべたリィンに訊ねられたオリヴァルト皇子は静かな表情で答えた。
「女学院か~……お姫様のアルフィンさんやリーゼロッテ皇女殿下、それに貴族のお嬢様のリーゼアリアさんが通うような所だから、あたしにとっては敷居が高すぎて、絶対縁がない所なんでしょうね~。」
ユウナは聖アストライア女学院を思い浮かべて呟いたが
「まあ、どの道ユウナさんの場合、座学の時点でついていけないかと。聖アストライア女学院の学力はエレボニアではトップクラスとの事ですし。」
「うぐっ………いつもノートを見せてもらっている身としては、反論できないわ……」
「ア、アハハ………」
アルティナの指摘を受けると唸り声をあげて疲れた表情になり、その様子を見守っていたリィン達が冷や汗をかいている中ティータは苦笑していた。
「フム……女学院の件は別にしても、せっかく帝都近郊の町に滞在しているのだから、たまに父上や義母上に顔を見せるついでに女学院のOGとして、女学院にも君の元気な様子を見せるくらいならメンフィル帝国の許可をわざわざ取る必要もないと思うが、そちらの方はどうかな?」
「そうですね……御二方とも口には出しませんが、アルフィン義姉様と中々会えない事を寂しく思っていると思いますよ?」
「それは………」
「えとえと……レンちゃん。アルフィンさんがリィン教官と結婚した”事情”は知っているけど………今オリヴァルト皇子が言った提案も、やっぱりリウイ陛下達に話を通さないとダメなのかな?」
オリヴァルト皇子とリーゼロッテ皇女の話にアルフィンが言葉を濁している中、ティータはレンに訊ね
「別にそのくらいだったらパパ達は何も言わないと思うわよ。そもそも、アルフィン夫人がリィンお兄さんに嫁いだ時点でアルフィン夫人は”シュバルツァー家の一員”なんだから、幾ら皇家とはいえ深い理由もなく”家庭の事情”に口出しするような暇な事はしないわよ。まあ、あまりにも頻繁だったら、さすがに口出しするかもしれないけどね。―――ああ、後わかっていると思うけど”夫”であるリィンお兄さんの許可は必要よ?」
「俺は当然許可します。事情があるとはいえ、ユーゲント陛下達は普通の親子達よりも早くアルフィンと離れて暮らす事になったのだから、せめてもの親孝行として、たまには元気な様子を見せに行くべきだと俺も思うぞ?」
「リィンさん……………わかりました。その件については前向きに考えておきますわ。」
「そうか………なんだったら、”夫婦揃って”父上達に顔見せに来てもいいんだよ?父上達も義理の息子になったリィン君と機会があればゆっくりと色々な事を話したいだろうしね。それとアルフィンの子供―――つまり私の甥か姪で、父上達にとっては孫をいつ作るつもりなのかも気になっているだろうしね♪」
レンとリィンの答えを聞いたアルフィンは目を丸くした後口元に笑みを浮かべて答え、オリヴァルト皇子は安堵の表情で溜息を吐いた後からかいの表情でリィンとアルフィンを見つめ、オリヴァルト皇子の発言にその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「お義兄様ったら……お客様の目の前でそんな事を言うなんて、お下品ですわよ。」
「あいた。」
「ふふっ、”その役割”もちゃんと受け継いでくれたのね、リーゼロッテは。」
「ア、アハハ………」
するとその時リーゼロッテ皇女は懐から取り出したハリセンでオリヴァルト皇子の頭を軽く叩き、その様子を見ていたリィン達が再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アルフィンとティータは苦笑していた。
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