【完結】猫娘と化した緑谷出久
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猫娘と期末試験編
NO.057 期末試験 三回戦目
前書き
更新します。
今からパワーローダーと飯田・尾白ペアによる演習試験が始まろうとしていた。
まだゴングの音が鳴る前に飯田は尾白へと話しかける。
「尾白君、今回はステージも相まってスピード勝負が決め手だと思うが、どうだろうか……?」
「そうだね。うん、それで間違いないと思う」
二人が見る先には一面掘削地帯ですでにパワーローダーの専売特許な場所であった。
パワーローダーの個性は『鉄爪』。
つまりモグラのように地中を掘り進むことが出来る個性だ。
さらにはパワーローダーのその身体を覆う重機がまるで獣の形をしているようなヒーロースーツを身に纏って今か今かと腕を鳴らしていた。
「くけけ。さーて……お二人さん、俺はかなりガチ目でいくぜ? せいぜい足場を崩して埋まらないように注意するんだな?」
「「よろしくお願いします!」」
そう話すパワーローダーに二人は真面目か!と言わんばかりの大声を上げて返事をした。
そして、
『第三回戦目、スターーーート!!』
開始のゴングが鳴り響いた。
「くけけ……そんじゃ、いくぜ!!」
重機の音がやかましくも響きを鳴らせてパワーローダーは一気に地面に穴を開けて掘り進めていき、地上から姿を消した。
「尾白くん、正面突破だ!」
「よしきた!」
二人は同時に走り出した。
個性の関係もあってか、やはり尾白の方がスピードに欠ける部分はあれど、それでも常日頃から鍛えているために飯田のレシプロを発動していない状態ならばなんとか付いていけているところだ。
そしてさっそく、目の前の地面が陥没をして二人は急停止を止む無くすることになるのだが、
「立ち止まるな!!」
「おう!!」
すぐさま軌道修正を行い、穴を避けながらもスピードを落とさずに走り込んでいく。
「くけけ。いいねぇ……正面突破で尚且つ俺の攻撃は完全に避けていくスタイルか。まぁいいけどな……だが! 掘るだけが取り柄じゃねーんだよ!」
と、言いつつもパワーローダーは二人が今走っている地面の真下をすごいスピードで突き進んでいき、その影響かどんどんと地面が盛り下がっていく。
「ぬおお!! どんどん地面が下がっていくぅ!!」
「尾白君、跳ぶぞ!!」
飯田は尾白の腕を掴んでまだ陥没していない地面へと飛び跳ねていた。
それでなんとかうまく着地は出来たものの休む暇もなく、
「また穴がどんどんと出来上がっていってるぞ!」
「体力を削りに行く作戦と見た……! 持久力の勝負か!」
二人はなんとかまだ残っている足場の良い場所だけを勘だけで走っていき、時には人一人が通れるような足場も通っていくという神経をすり減らしていく行動を繰り返していた。
一度嵌まってしまったらそこで登るのに時間を取られてタイムオーバーになる事は分かり切った事。
ゆえに、絶対に穴に落ちてはダメだ!という考えに至っていた。
だが、そこで穴からわざわざパワーローダーがものすごいスピードで這い上がってきて、
「くけけ。逃げの選択はいいな……でもな、俺もそう簡単に逃がしはしないぜ?」
ジャキン!ジャキン!と腕の鉄爪を鳴らせて二人に襲い掛かってくる。
個性が個性だ。
あんなものが掠りでもしたら即削られてお陀仏である。
「パワーローダー先生、その攻撃を受けるわけにはいきません!」
そう言って尾白に合わせていたスピードを一段階加速させて飯田はその鉄爪を逃れる事に成功する。
「ヒットアンドアウェイ!!」
飯田に攻撃していたために背後ががら空きになっていたので尾白は尻尾による攻撃をかましてパワーローダーの動きをわずかに鈍らせる。
そしてそのまますぐ離脱を図ってまた走り出す。
「やるねぇ……やっぱ格闘戦だとあいつらの方に分があるか。やっぱ俺の得意分野に徹するのが一番か」
それでまた穴を掘って潜っていくパワーローダー。
……そして何度も陥没していく地面を掻い潜りながらも二人の目線にはゴールの出口が見えたために、
「尾白君、ラストスパートだ!」
「任せてくれ!」
それでまた加速をする二人。
だが、パワーローダーもそう簡単に行かすわけもなく、
「ならこれでどうだ……?」
その言葉とともに突如として今までの陥没とは一線を凌駕した大穴が出来上がる。
二人はそれを目にして、
「あれじゃ迂回も出来ない! していたら時間切れになっちまう!」
「尾白君、考えがある!」
「なんの―――……!?」
尾白が答える前に飯田は尾白の腕を掴んで急激な速度を出しながら走り出していた。
そして抱えるように―――……そう、例えて言えば人間大砲。
「まさか……?」
「そのまさかさ! 君だけでも脱出するんだ! 説明している暇があったらもうレシプロしたいんでね!!」
飯田の考えが読めた、読めてしまった尾白はもう諦めの表情をしながらも、
「ああ、もうわかったよ! さっさとしてくれ!」
「了解! 行くぞ!!」
いまだ加速を続けている飯田はついに切り札を展開した。
「レシプロ……バーストォ!!」
超加速からのさらにブーストを掛けて、一気に大穴の上をジャンプする飯田。
そこから、
「このスピードのまま投げる!! うまく潜り抜けてくれよ!!」
「わかった!!」
飯田は跳んでいる最中で腰を思いっきり捻って、尾白をゴールの方まで投げ飛ばした。
投げ飛ばされた尾白はパワーローダーの掘り進める穴を無視しながらも一気にゴールを潜り抜けていった。
その代わりに飯田はそのまま穴の中に落ちていったのだが……。
「尾白君が俺が落ち切る前にゴールを通過するのは見えた。これで合格だろうか……?」
『パスッパスッ……』と足から煙を上げさせながらも飯田はそうごちる。
そして、
『飯田・尾白ペア、条件達成!』
と言うアナウンスが流れたために、
「よかった……」
「いや、よくねーから」
そこにパワーローダーが穴を掘り進んできて飯田の前へとやってきた。
「パワーローダー先生……」
「まぁこれで合格って言えば合格だが、自己犠牲も過ぎると悲惨だぜ? これが本番だったらお前ひとり穴の底で取り残されてるからな? くけけ……」
「はい。ですが突破口は出来たと思いますので今後もっとうまくできるように頑張りたいと思います」
「まぁ、自己分析もできてんならまぁいいけどよ……話は聞こえていたけど、お前尾白に相談せずに判断したろ? 今後はもっと二人で相談して決めるこったな」
「わかりました」
そんな感じでパワーローダーに地上まで案内されていって飯田もゴールを潜ると、
「飯田ー……もっと先に相談しといてくれよ?」
「すまない。現状はあれが最善手だと思ったんでね。今度からしっかりと相談をする事にする」
「頼むよマジで」
とにもかくにも二人もこれで合格であった。
それをモニターで見ていた一同はと言うと、
「飯田君のとっさの判断も良かったけど、下手したらゴールとは違う場所に尾白君は飛んでいたね……」
「ええ。ですが状況的にも結構切羽詰まっていましたからあれもあながち間違いではないと思いますわね」
「最適解は一つじゃないからね。今回はうまくいったが、もっとうまく行かせれるように努力が必要だね」
と、出久、八百万、リカバリーガールが話し合っている中で、
「八百万、次は俺達だ。そろそろ行くぞ……?」
「あ、分かりましたわ轟さん。では皆さん、行ってまいりますわ」
「行ってくる……」
四回戦は相澤との戦いである。
これに関しては八百万は多少の自信の無さから来る不安を感じながらも、
「(緑谷さんの事を考えれば、こんなところで挫けているわけにはいきませんわ!)」
と、すでにやる気を出している八百万であった。
後書き
今回はちょっとオリジナル風味を出してみました。
というのも、原作でもちょっとしか描写されず、アニメも二期はHDから消してしまったためにうろ覚えな部分が目立ちますのでほとんどセリフもオリジナルとなりました。
次回は原作よりも前向きな八百万を描写できたらいいなと。
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