レーヴァティン
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第五十六話 ミラノの街その十一
「だからでござるな」
「まあ流石に私達が起きている時のプロ野球のコミッショナーよりましだけれど。気が弱いうえに今重病だし」
「だから言えないでござるか」
「何もね」
「それでそうなっているでござるな」
「困ったことにね」
「確かな支配人を置いて財政改革をすべきでござる」
進太はミラノの歌劇場の健全化の為にやるべきことを話した。
「そうすべきでござる」
「わかっていてもね」
「それでもでござるな」
「支配人さんがそうした状況だから」
「改革は出来ないでござるか」
「何とかしたいけれど」
それがというのだ。
「何しろ支配人さん幾つも重病患ってるし」
「一つではないでござるか」
「癌と痛風、糖尿病に心臓病に肝臓病に腎臓病ってね」
「多いでござるな」
「贅沢好きな人だったから。もう甘いものやらお酒やら糖分高いものばかり食べて」
そうしてというのだ。
「お歳になってね」
「成人病の塊でござるか」
「血圧も高いし」
こちらも問題だというのだ。
「それでね」
「お座敷の者達が余計にでござるか」
「やりたい放題なんだ。本当にこのままいったら」
「歌劇場の質の低下をでござるな」
「招くね」
歌劇場にとっての最悪の事態、それをというのだ。
「私もそう見ているよ」
「文化でもそんな話あるんだな」
久志もここで言った。
「そっちの話でも」
「何処でもあるんだね」
剛も久志と共に言った。
「そうしたお話は」
「そうだよな」
「嫌なことだね」
「そうだよな、政治でもな」
「嫌な部分だね」
「裏のな、けれどな」
それでもとだ、また言った久志だった。
「何でも表と裏があるしな」
「政治の世界もね」
「人間の世界だったらな」
それならばというのだ。
「何処でもあるな」
「こうしたことはね」
「ドロドロしたものもな」
「というかドロドロしたものこそね」
剛は表情を消して言った、このことを達観してのことだろうか。
「人間でね」
「政治だってな」
「歌劇場だってね」
「ドロドロしていてか」
「うん、それでね」
「そうしたこともあるか」
「そうなんだよ」
まさにというのだ。
「結局はね」
「ああ、しかしな」
「それでもだね」
「ああ、この歌劇場みたいなことは何処でもあってな」
政治、この島全体のそれでもというのだ。
「そこを何とかするのもな」
「この島のことを考えると」
「俺達がしないといけないな、むしろな」
久志はここでこうも言った。
「そうしたな」
「しがらみについてはね」
「俺達の方が何とかしやすいか」
「そう、ここは夢の世界じゃない」
剛はあえてこのことを話した、こちらの世界が自分達の世界にとってどういった世界かということを。
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