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レーヴァティン

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第五十六話 ミラノの街その九

「物凄く美味しいよ」
「甘くて発泡性のか」
「うん、凄く美味しいワインなんだ」
「それでそのワインがか」
「こっちの世界のミラノじゃかなり飲めるんだ」
「成程な」
「じゃあね、カルボナーラとかを食べながら」
 留奈は久志に笑顔のままさらに話した。
「ワインを楽しんで、そしてね」
「歌劇もだよな」
「観ようね」
「さて、どういった歌劇かしら」
 吟遊詩人の清音がここでその歌劇に興味を見せて話した。
「観たいわね」
「バード、歌に携わる仕事だからかな」
「それもあるけれど歌劇自体にね」
 清音は微笑み自分より十数センチ低い留奈の横に来て話した、二人並ぶと背丈の違いがはっきりわかる。
「興味があって」
「それでなんだ」
「観たいわ」
「こっちの歌劇は凄いよ」
 ミラノのそれはとだ、留奈は笑顔で話した。
「その分いい席は高いけれどね」
「ロイヤルボックスとかも」
「そうそう、お座敷の人達の場所はね」
「高いの」
「ヴェネツィアとか他の街の歌劇場の席よりもね」
「高いのね」
「あと結構お座敷の人達五月蠅いから」 
 留奈はこのことは顔を顰めさせて清音に話した。
「注意してね」
「変な歌だったらブーイングするの」
「そうそう、気に入らないことがあったらすぐに怒ってね」
「ブーイングとかもして」
「指揮者や歌手も追い出したことがあるから」
 歌劇場、そこからというのだ。
「いい技量を持っていてもね」
「気に入らないとなの」
「そうするのよ、もう支配人さんも逆らえないから」
「歌劇場の」
「そこまで力あるのよ、お座敷の席は高いしね」
「高いお金を払って来てくれている人達で」
「寄付も凄いから」
 歌劇場へのそれもというのだ。
「支配人さんも全く何も言えないの」
「辛いことね、それは」
「日本でも歌舞伎とかお相撲でお座敷の人達っているけれど」
「日本だとね」
「そこまでいかないでしょ」
「まだ日本人は大人しいってことかしら」
「そうだよ」
 実際にとだ、留奈も答えた。
「ずっとね」
「ここの人達に比べたら」
「私達が起きている世界の日本の人達はね」
「お金を出しても」
「ブーイングしたり気に入らない人を追い出したりしないよね」
「それは無粋とね」
 清音はここでこの言葉を出した、仲間達と共にミラノの街の中を歩きその賑わいを目で見て楽しみながら。
「思われるし」
「お金出してもね」
「やりたい放題は」
「よくないって思われるから」
 そうしたことをする輩もいるにはいるがだ。
「だからね」
「そうよね」
「というかマナーは守れ」
 芳直がここでこう言った。 
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