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レーヴァティン

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第五十六話 ミラノの街その八

「こいつ等も全員な」
「処刑か」
「縛り首だよ」
 それにするというのだ。
「それになるさ」
「そうか、縛り首か」
「ああ、全員な」
「わかった、屑は生きていても仕方ないしな」
「だからそうなるさ」
「そういうことでな、それじゃあ街に入るよな」
「ああ、今からな」
 笑ってだ、久志は門番に応えた。
「街に入らせてもらうぜ」
「俺がこう言うのも何だがいい街だぜ」
 門番は久志ににこやかに笑ってこの街のことも話した。
「美味い食いものに酒も一杯あってな」
「歌劇場もだよな」
「最高のがあるぜ」
 こう久志に話した。
「この島でもな」
「ヴェネツィア以上にかい?」
「さらに上だよ」
 門番は久志に胸を張って言い切ってみせた。
「もっとな」
「そうか、じゃあな」
「今からだな」
「ミラノに入ってな」
 実際にというのだ。
「そうしてな」
「食って飲んでな」
「歌劇もだな」
「楽しませてもらうな」
「それじゃあな」
 是非にと話してだ、そしてだった。
 一行は門番が開けた、もう暫くの間は昼は閉じる必要がなくなったその門を潜ってそうしてだった。 
 ミラノの中に入った、すると城壁の中の街並みはヴェネツィアと違い水路は多くなかったが見事なものだった。
 それでだ、久志は笑ってこう言った。
「よさそうな街だな」
「いい街だよ」 
 住んでいた留奈が笑顔で応えた。
「実際にね」
「そうか、賑やかなだけじゃなくてか」
「美味しいものが一杯あってね」
「門番さんが言ってた通りにか」
「うん、しかもね」
 留奈はさらに話した。
「ワインも美味しいし」
「それでか」
「うん、ただ川や湖の幸はね」
「ヴェネツィアには負けるか」
「ここはどちらかというと陸の幸だよ」
 こちらが有名だというのだ。
「パスタにしてもね」
「じゃああっちはペスカトーレとかイカ墨だったけれどな」
 パスタと聞いてだ、久志は実際にヴェネツィアで目にしてきて食べてきたものを話に出して留奈に言った。
「こっちはカルボナーラとかか」
「あとモツァレラチーズとトマトだね」
「そういうのか」
「うん、そういうのが有名でね」
「美味いんだな」
「そうだよ、ワインは赤で甘くてね」
 そしてと言うのだった。
「発泡性のあるのが美味しいよ」
「そのワインは確か」
「ランブルスコだよ」
 そのワインの名前もだ、留奈は話した。
「起きた世界じゃモデナか何処かの産だったね」
「そうだったか?俺はそこまでは知らないけれどな」
「オペラ歌手のパヴァロッティの出身地でね」
 留奈はそのワインの話で二十世紀を代表するテノール歌手の一人の名前も出した、その高音で名を知られた歌手だ。 
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