駄目親父としっかり娘の珍道中
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第85話 後始末は自分の手でつけるのが世の中の鉄則 その4
前書き
今回は久しぶりに彼の登場ですww
道行く人々や過ぎゆく風景をその目に焼き付けながら、彼は物珍しそうに辺りに視線を向けていた。
余りにも場違いとも思えるその風貌や風景がとても物珍しく見えてしまっているようだ。
そのために、余りキョロキョロするなと言われても中々言われた通りに出来ないのが現状と言える。
彼の故郷では絶対に見る事がないだろう見慣れない衣服に奇妙な髪型。
これがこの地、江戸での基本的な服装と髪型なのだと言うそうだ。
因みに彼自身のツテで調査した結果、彼らが身に着けているのが『キモノ』と言うらしく、男性等がしている変わった髪型を『チョンマゲ』と言うらしい。
まぁ、彼の居た地ではまずお目に掛かれないのは確実だったりする。仮に彼の元居た場所であんな恰好をしていたら確実に変人扱いされる。
「そんなにキョロキョロしてどうしたんだ? 隣に居る僕も恥ずかしいんだけどさぁ」
「あ、ごめん・・・あんまりにも見慣れない服装をしてる人たちばっかりだったから」
確かに、彼の今身に着けている服装からして見れば、江戸町内の人たちの服装はさぞ珍しく映って仕方がないと言えるだろう。
しかし、それは物珍しく見渡している彼自身の服装もまた、江戸町内を歩く人たちからして見れば相当珍しく映っている事だろう。
「大体、江戸に来ると言うのにその恰好はどうかと思うんだけどなぁ。部族衣装にマントだなんて、如何にも異国の人間と言ってるようなものだぞ」
「そう言う君だって、その恰好は何だよ? バリアジャケットと同じ色の着物を着るなんて、君自身は相当江戸の空気にどっぷりと浸かってしまっているみたいだね」
言いながら彼こと『ユーノ・スクライア』は自分の衣服と道案内をしてくれているクロノの今着ている服装を見比べていた。
普段は執務官専用の仕事着に身を包んでいるクロノも此処では江戸特有の衣服とされる着物と言う衣服を身に着けている。
普段から常に気を張っていた彼とは思えない気の緩みようだ。
恐らくは、この江戸と呼ばれる地がそれだけ治安が良い場所なのかも知れない。或いは、この地に無用に干渉しない為の配慮ともとれるのだが、執務官が一々そんな事を気にしていたら仕事など出来る筈がない。
まぁ、何が言いたいのかと言えば・・・余りにも異世界の衣服を見事に着こなしているこの執務官にユーノは少なからず敗北感と言うか嫉妬感を抱いていた。
彼が今まで江戸に来てなかったのには理由がある。
まぁ、簡潔に言えば以前に起こったジュエルシード事件の後始末に追われて今の今まで自由に動けない時間が殆どだったからだ。
何しろ事件の発端とも言うべきロストロギアを発掘した張本人なのだから当然事情聴取だとかその他色々と面倒な目に合わされるのは必然的な事なのだからしょうがない。
別に作者個人が彼を出すのを忘れてた訳ではないのであしからず。
「そもそも、執務官である君がそんなのんびり構えてて良いのかい? 仮に事件とかがあったらどうするつもりなんだよ?」
「その時はこの世界に居る真選組の人たちが解決してくれるさ一応僕もそうする側の立場にると自覚はしているけど、此処はあくまで異世界。異なる世界の人間である僕が不必要に干渉すべきではないと思っているのさ」
「そう思っている割には妙に馴染んでるよな。江戸の世界満喫しまくってるみたいに見えるんだけど、僕の気のせいかな?」
「嫌、十分に満喫させて貰っているよ。特に資料でしか見た事のなかった江戸特有の料理また格別だったね。何て言ったかな、ウナギのかば焼きとか絶品だったよ」
「・・・君、もしかして僕に自慢してるのかい?」
「そうだけど。どうかしたかい?」
いっそひと思いにこいつの顔面殴ったろうか。その時ユーノは本気でそう思っていたそうだ。
しかし、其処はクールに立ち振る舞わなければならない。
今、こうして江戸の地にこれたのは此処に居るクロノのお陰なのだし、今下手に彼に喧嘩を売ればそれは管理局そのものに喧嘩を売る事になりかねない。
そうなれば自分を含め祖国に居る仲間達は一斉に御用とされてしまう。
まぁ、こいつに限ってはそんな事しないだろうけど万が一と言う言葉がある。
悔しいがそれをグッと堪える事にした。
「で、これから何処に向かうつもりなんだい?」
「そうだな、僕もまだ江戸の地理には詳しくないから、まずは銀さんの所に行ってそれから考えるとするかな」
銀さん・・・つまり坂田銀時の下へ行くと言う事。それはつまり、彼の娘にあたるなのはの下へ行く事にもつながる。
不意に、ユーノの胸の内がにわかに温かくなるのを感じた。
先の戦い以降全く会ってなかったから、もしかしたら自分の事を忘れてるかも知れない。
まぁ、今回に限ってはユーノの出番が著しく削られてしまったので仕方ないのだが。
それだとしても、彼女のあの屈託のない笑顔や明るい行動には何処か癒される感じがする。
これはもしかして好意と言うものなのだろうか?
しかも、『LIKE』のではなく『LOVE』の類に分類されるような奴なのではないだろうか。
そう感じても不思議じゃない。ユーノとて幼いとは言え男の子。
魅力的な女の子には思わず反応しちゃったりするものだ。
そんな彼女の下へこれから向かう事になる。考えただけでも頬の辺りが赤くなっていくのがなんとなくわかった。
「おやおや、顔が赤いねぇ。そんなになのはに会うのが楽しみかい?」
「べ、別に・・・ただ久しぶりに会うからちょっと緊張してるだけさ!」
「ま、そう言う事にしておいてあげるよ。せいぜい頑張りなよ。君、どうやらなのはの『お父さん』に別の意味で目をつけられてるみたいだしね」
クロノのその言葉を聞いた途端、ユーノの今までの高揚感はすっかり消え失せてしまい、代わりにどんと肩に重りが乗ったような感覚に見舞われた。
そうだった。すっかり忘れていた。
自分はなのはの父親である銀時に偉く嫌われているんだった。
理由は本人にも分からない。とにかく、自分がなのはに近づこうとするとまるで虫でも追っ払うかの如く激しいブロックを仕掛けて来る。
おまけに何故かユーノばっかり痛い思いをされたりいじりの対象にされたりする事がやたらと多い。
もしかしてあれだろうか?
原作で自分の姿が小動物なのを良い事に女の子の生着替えの場面に居合わせたりしたりとか温泉宿で堂々と女湯に入ったりした事等の行為がなんやかんやで知れ渡ったが為にブロックされているのではないのだろうか。
でも、それはあくまで原作の話であって此処ではそんな不埒な行為は一切行いません。
そりゃ、何故小動物に変身したかって聞かれたらまぁ『小動物の方が一緒について行く時楽だからそうした。他に他意はないよ。嫌、マジで! 決してやましい気持ちなんてこれっぽっちもありませんから』と断言するつもりだ。
まぁ、全然ないのかと聞かれたらそれは・・・恐らくNOとは言えないと思う自分が情けない。
「あれ? 二人ともこんなとこで会うなんて奇遇だね」
そんな時、二人を見て声を掛けて来たのに気づく。
声を聞いてそれが誰だかは安易に気づけた。
「お久しぶりです。新八さん」
「あれ、ユーノ君じゃないか。久しぶりだね。江戸には何時来たの?」
「ついさっきです。ようやく一仕事片付いたんで折角なので江戸の世界を見に来たんです」
「へぇ、道理で暫く見ないなと思ったら、結構大変だったんだね」
「まぁ、故意じゃないにしろ僕がジュエルシードなんて物を発掘しちゃったのが今回の事件の発端になっちゃってますし、一応できる限りの後始末はつけてきたつもりです」
まぁ、やってきた事と言えばジュエルシードを発掘した現場の調査だったり事件に関する事情聴取だったり他部族への情報交換だったりと他にも色々あるけど、とりあえず急ぎでやらねばならない事を優先して片付けたと言うのは事実なのでそう受け止めて欲しい。
「それで、これから銀さんの所へ行こうとしてたところなんですけど、新八さんは?」
「いやぁ、実は先日なのはちゃんが家に大量のトラップを設置しちゃってたから、それの撤去に時間が掛かっちゃって。今こうして向かってる最中なんだよね」
笑いながら言う新八だが、一つ聞き慣れないワードが浮上した。
え? トラップ? なのはが仕掛けた?
頭上を?マークが飛び交う。そもそもなのははトラップを駆使した事あったっけ?
余り関わった事がないから明確には言えないけど、少なくとも其処までの技能や知能はなかった気がする。
だが、子供の成長は早い。
きっと、出会わなかった間に幾つか新技術を身に着けたのだろう。
そう思っておく事にした。下手にあれこれ考えても答えなんて出てこないのだし。
「そう言う事だったら一緒に行こうよ。僕も今から行く所だったとこだし」
「こちらこそ、断る理由もないですしご一緒しますよ」
そんな訳で新八を加えた三人は雑談を交えながら万事屋への道を歩いた。
その間話した事と言えば、ユーノが居ない間江戸内で起こった新しいイベントや事件についての事だ。
八神はやてと言う海鳴市からやってきた少女と彼女を主と称する守護騎士達の登場。
林流山博士の開発したからくりメイド達が起こした大規模テロ事件『からくりメイド事件』等についてだ。
新八は、其処で高杉晋助や紅桜事件に関しては敢えて黙っていた。
それは余りにも凄惨で余りにも辛い事件だったからと、この事件については銀時に口止めされていたからだ。
「成程、僕の居ない間にそんな事が起こっていたなんて」
「僕も実際に見た時には驚いたよ。何しろ歴史の教科書でしか見た事がなかった古代ベルカ式の術を使う魔導士と共闘したんだからね」
「それもそうだけど、異世界でありながら僕達の世界の技術を使えるこの江戸って言う世界の科学技術の高さには驚かされるよ。もし、この技術が僕達の世界に流れ込んだりしたら大変な事になるんじゃ」
「無いとは言い切れない話なのは承知している。だけど、現状の僕達の権限じゃ余り派手に動く事は出来ないのが現状なんだ」
一応、戦艦一隻を任されているとは言え、クロノも彼の所属するアースラ隊も言ってしまえば管理局傘下の一部隊に過ぎない。
故に、余り身勝手な行動をとる事は出来ないのが組織に属する者達の欠点ともいえる。
もし、余りに身勝手な行動をしてそれが上層部の耳に留まるなんて事になったらそれこそアースラも隊の権限もはく奪されてしまいかねない。
故に、結果的には何時も後手後手に回らざるを得ないのが現状と言える。
組織に属すると言うのはそんな感じで面倒な事がやたらと多いのが難点でもあった。
「何だか、湿っぽい話になっちゃったね」
「全く、一体誰のせいでこうなったのやら」
「悪かったよ。元を正せば僕が色々と聞いちゃったのが原因なんだし」
「理解しているか。偉いぞユーノ君」
「なぁ、一度で良いから君の右頬殴って良いかい? 出来れば全力全開のグーパンチで」
右こぶしをフルフル震わせながら懇願するユーノをクロノは軽くあしらう。
何とも微笑ましいと言うべきか遊ばれてるなぁと見るべきか。対応に困る新八が一人苦笑いを浮かべる。
「おい、聞いたか?」
「あぁ、喧嘩だってよ!」
ふと、三人の近くにそんな野次が飛び込んできた。
喧嘩。別にこの江戸の町ではそれほど珍しいイベントではない。
喧嘩と祭りは江戸の華と言われてる通りしょっちゅう街中では喧嘩が絶えず行われている事が多い。
なので、こうした喧嘩が行われる度に大勢の見物人たちが押し寄せる事もあると言えばある。
中にはどちらが勝つか賭けの対象にしたり近くに店を構えだす者までいたりする。
本当、商魂たくましいと言うべきか意地汚いと言うべきか。
「喧嘩だって!? すぐに止めに行かないと」
「あぁ、別に気にしなくても良いよユーノ君。江戸で喧嘩なんて日常茶飯事なんだし」
「そ、そうなんですか?」
「まぁね。喧嘩と祭りは江戸の華なんて言われてる位だから。下手に仲介に入ると逆に怪我するかも知れないから基本的には放置しておくのが安全なんだよ」
とは言うが、それは只の殴り合いだの口論だので済む喧嘩での場合のみでの話になる。
中には喧嘩がエスカレートしだして互いに武器を持ちだしたり周囲に被害が出る程過激な喧嘩に発展してしまう事もある。
そうなった場合は流石に仲介に入らざるをえないのだがそう言う時こそ国家権力の出番となる。
「そう言えば、此処に国家権力が居たねぇ。異世界とは言え喧嘩をほっといていいのかなぁ?」
「何だい、もしかしてさっきの仕返しのつもりか? まぁ、せっかくだから君のその安い挑発に乗ってあげるとするよ」
「有難う。そしてそのまま喧嘩に巻き込まれて顔辺り殴られてしまえ」
「ははは、そうならないように努めるとするよ」
二人の痴話喧嘩にも似た光景を目の当たりにした新八は止めようとしたのだが、この際どちらについて止めるべきか悩んでしまっていたと後に便宜したそうだ。
「喧嘩って言うけどよぉ。一体誰と誰が喧嘩してんだ?」
「それがよぉ。なんでも犬みたいな尻尾と耳付けた男と女の天人みたいだぜ。しかも女の方は滅茶苦茶色っぺぇのなんのって」
「おいおい、要するにただの色恋沙汰の喧嘩って奴か?」
「かもな、喧嘩は色町で起こってるって言ってるし。俺達もその喧嘩見に行ってみるか」
「だな。その色っぺぇ姉ちゃんってのも気になるしな」
周りの野次を聞くに喧嘩の発信源は色町にあるようだ。
『色町?』と首を傾げるユーノにクロノは知っている限りの情報を包み隠すことなく教える。すると途端に顔を真っ赤にするユーノ。
まぁ、この年ならそんな反応をしても当然と言えるのかも知れない。
新八ですらたまにそんな反応とかするし。
「そ、それじゃ・・・その天人達が喧嘩してるっていう色町まで僕が案内するよ」
「よ、宜しくお願いします」
「・・・二人共顔が赤いけど熱でもあるのかい?」
こんな時でもクールフェイスを崩さないクロノ君。原作とは違っても君がKYと呼ばれるのは変わりない事なのかも知れないね。
***
そんなこんなで移動の場面やその他細かなイベントはこの際ばっさりカットしたってな訳で、今三人は現在喧嘩が行われているであろう現場に到着していた。
それで、その喧嘩と言うのがこれまたすさまじい規模で行われているらしく、近辺では喧嘩の余波で破壊された電柱やら車やら店の看板やらとにかくありとあらゆる何かが散乱していると言う悲惨な有様が其処にはあった。
余りの被害の有り様に思わず三人は言葉を亡くしていた。
嫌、言葉を亡くしていたのは正しくは喧嘩の被害云々ではない。その喧嘩をしている下手人達を見たからだった。
まず男の方だが、確かに犬っぽい耳と尻尾が生えている。それで銀色の短い髪に褐色の肌をしており、何故かパンツ一枚で居る。
それで、女の方はと言うとこれまた同じように犬っぽい耳と尻尾を持ち、オレンジ色の長い髪をしたまぁ、色っぽいと言うには確かに色っぽい年頃的に出るとこ出ててへこむとこへこんでると言うわがままボディを持った女がこれまた下着姿で暴れまわっていた。
「えっと・・・クロノ君・・・あれって・・・もしかして」
「はい・・・そうですね・・・もしかしなくてもそうですね・・・そうだね、ユーノ君」
「え? 其処で僕に振るの!?」
三人は言葉が出なかった。無理もないだろう。
何故なら、現在進行形で三人の目の前でフェイトの使い魔であるアルフとはやての守護獣であるザフィーラが真昼間の道のど真ん中で互いに下着姿のままで喧嘩をしているのだから。
まぁ、喧嘩と言ってはいるが状況的に見ても圧倒的にアルフが押しまくっている状況だ。
対するザフィーラは押されまくってて最早見てて痛々しい事この上なかったりする。
正直見てて居た堪れない気持ちになってきた。
ザフィーラに至っては完全に腰が引けてしまっており顔なんて真っ青になってる。対するアルフは怒りで我を忘れてるのか真っ赤な顔をして普通乗用車とか両手で持ち上げて投げ飛ばすとか言う荒業なんて見せてしまっている。
あ、また彼女が投げた乗用車がビルの壁に突っ込んで盛大に爆発が起こった。
「これ・・・身内としては止めるべきなんでしょうか?」
「止めるべきなんだろうね・・・出来れば止めたくないんだけど」
「ですよね。僕も後に妹になる子の使い魔が喧嘩しているのだから止めないといけないんですけど、正直このまま他人の振りして帰りたい気分です」
「それは僕も同じだね。幾ら顔見知りとは言ってもあんな痛々しい姿の喧嘩の間には入りたくないなぁ」
流石に下着姿で喧嘩する者の間になんて入りたくはない。
下手に仲介して「あいつらあんなビッチ達と顔見知りなんだってよ」とか噂されたくないし。
「いや、そんな事言ってる場合じゃないだろ? 早く止めないととんでもない事になるじゃないか!」
「確かにそうなんだけど・・・君に言われると妙に悔しい」
「うっさい! 良いから早く仲裁に行く!」
何故かその場の指揮を執るユーノを筆頭に三人は一方的な喧嘩を展開しているアルフとザフィーラの下へと向かった。
半ば嫌々な感じで―――
「あのぉ・・・ちょっと良いですかぁ?」
「ぬがああぁぁぁぁ! 死ねぇぇぇこの腐れ外道がぁぁぁぁ!」
まずは軽いジャブ的な感じで軽めに声を掛けてみた。まぁ、案の定無視されて、しかもそのままマウントポジションを取ったアルフがザフィーラをボコボコに殴り倒している。
全く容赦がない。凄まじく痛々しい光景が其処にあった。
「ちょ、ちょっとアルフ! いい加減にその辺で止めないとその男の人死んじゃうよ!」
「殺す殺す殺す殺す! ブチ殺す嬲り殺す捻り殺す潰し殺すねじり殺す焼いて殺す殴って殺すとにかくぶっ殺す!!」
「恐ろしいんだけどぉぉ! 何この娘、恐ろしい事呟きながらゲーセンで格ゲーやってる中坊並の速さで拳を叩きつけてるんだけどぉ!」
ユーノと新八の目の前では最早喧嘩と言うよりはリンチに近い展開が其処にあった。
まるで何処かのバトル漫画宜しく両手が無数に見える程の凄まじいラッシュを目下にいるザフィーラに向けて連打連打連打連打―――しまくっている。
対するザフィーラはもう抵抗する気力も失せたのか微動だにしていない。
最早万事休すか―――二人がそう思った矢先だった。
「あ、フェイトだ!」
「え? 嘘! フェイト御免よぉっ! 悪さするつもりはなかった・・・あれ?」
クロノが明後日の方向を指差し彼女の主の名を呼んだのだ。
するとどうだろうか。さっきまで殺気と怒りで顔を真っ赤にしていたアルフは咄嗟に焦った顔で立ち上がり身振り手振りで無実を証明しようとしだした。
物凄い変わりようだった。
「って、誰かと思ったらむっつりな執務官と童貞眼鏡と・・・後小動物じゃん」
「その覚え方に悪意があると捉えても良いのかな?」
「クロノ君はまだ良いよ。僕なんて童貞眼鏡って言われたよ」
「僕に至っては小動物って・・・まぁ、確かにフェレットに変身はしてたけど・・・」
三人とも酷い覚えられ方をしていたようだ。その余りにも酷い覚えられ方にちょっぴりショックを受けてしまったのだが、それを隠すのも大人の強さって奴だよ。
「と、とりあえず二人とも・・・何でそんな恰好で喧嘩してたの? しかもこんな色町のど真ん中で」
何はともあれ情報収集が最優先。そう言う訳で新八は冷静を取り戻したアルフに事情を尋ねる事にした。
その途端だった。突如としてアルフは滝のように涙を流してその場に泣き崩れてしまったのだ。
「えぇぇぇ!? 何、一体何がどうなってんの?」
「ユーノ。君が何かしたんじゃないのか? 年頃の女性を泣かすなんて女泣かせもほどほどにしときなよ」
「何で僕なんだよ! 僕一言もしゃべってないじゃないか!」
完全にいじられキャラと化しているユーノはほっといて泣き崩れているアルフに事情を問う事にした。
そうしないと話進まないし。
「えと・・・一体どうしたの? 何でそんなに泣いてるのアルフさん」
「えぐ・・・ひぐ・・・実は・・・実はあたし・・・あたし・・・」
とぎれとぎれになりながらもアルフは話す。すぐ近くで大の字になって伸びているザフィーラを指さしながら。
「あたし・・・あいつに・・・あいつに・・・『初めて』を奪われたんだよおぉぉぉぉぉぉ――――――!!!」
そう言って大声で泣き崩れるアルフ。それを聞いた三人の冷たい視線が、一斉にザフィーラの方に向いたのは言うまでもなかった。
後書き
下着姿のアルフ・・・普段からそれっぽい恰好してるから違和感ないやww
でもザッフィーのパンイチ姿は・・・( ̄m ̄〃)ぷぷっ!
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