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駄目親父としっかり娘の珍道中

作者:sibugaki
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第85話 後始末は自分の手でつけるのが世の中の鉄則 その3

 
前書き
今回は皆大好き巨大ロボが登場します。えぇ、登場しますよ。はい、登場します(登場するだけです) 

 
「あぁ!? お前らん所の犬二匹が帰って来てないだぁ!?」

 フェイトとはやての証言を纏めると、昨晩銀時と飲みに行った後、それからザフィーラが屯所に帰って来ていないと言うのだそうだ。
 それだけでなく、どうやらフェイトの使い魔であるアルフもまた昨晩こっそり外出してから同じく戻って来ていないのだと言う。
 それで心配になった二人が藁にもすがる思いで此処に来た・・・と、言うのもあるだろうが恐らく本当の目的は依頼はついででなのはとイチャつくのが本来の目的なのかも知れない。
 はた迷惑にも程がある。

「どうせどっかで二人仲良くしけこんでんじゃねぇの? そう言う時ぁ黙って赤飯の用意でもしてやりゃぁ良いんだよ。あいつら二匹共大人だろうし、自己責任で良いんだよそう言うのはよ」

 正直言って向こうの世界の人間であるこいつら絡みの件は何かと面倒になるケースが多い。
 特にフェイトに至っては事ある毎に銀時の命を狙って来る。
 それに、今この二人となのは(シュテル)を長時間接触させるのは好ましくない。
 一応今は何とか誤魔化せてはいるがいずれボロが出る危険性がある。
 側から見ててもシュテルの演技は違和感しか感じられない。
 現になのはらしからぬ言動を繰り返しているんだから仕方ないと言えば仕方ないのだが―――

「ですが、これは列記とした『依頼』と言うものではないのですか? 私達万事屋としては依頼を受けた以上それを遂行する義務があると思われます」
「一々面倒な言い回しすんじゃねぇよ。大体なぁ、仕事を受けるか受けないかはオーナーである俺の一任で決まるんだ。つまり、俺が受けないと言ったらその仕事は受けない! これが此処万事屋銀ちゃんの掟だからな。お前らもそこらへんをちゃんと理解しておくように」

 相変わらず滅茶苦茶な言い回しに聞こえるが、実際滅茶苦茶なので問題ない。
 何でも請け負うと看板に掲げておきながら当の本人は全くのやる気ゼロなのだから矛盾も良い所だ。
 しかし、働かざる者食うべからず。何時の世も生きていく為には額に汗を流さなければならない。
 しかしそれでも、嫌なものは嫌。社会の波に流されず我が道を行く。そんな逞しい男で生きたいんだぃ。
 そう言いたかったんだけど『ちょっぴり恥ずかしかったからちょい悪風に言ってみましたテヘペロ』的なノリだと思って貰いたい今日この頃だったりする。

「それで、お二人の向かう場所に心当たりなどは御座いますか?」
「「う~~~ん」」

 面倒臭がるオーナーは無視して、シュテルは黙々と万事屋の仕事を開始し始める。
 まずは主である二人にアルフとザフィーラの向かうであろう場所を粗方聞き出し、それを元に二人が何処へ向かったかを絞り出すと言うこれまた刑事ドラマで良くやりそうな手法を用いていた。
 実際ドラマで見る分には緊迫感溢れるシーンなのだが実際にやるとこれがかなり面倒くさい。
 
 現に、なのは(シュテル)がボードに江戸マップを張り付け、其処に二人の進言を元にあちこちペンでマーキングしたり書き加えたりしていく。

「ふむ・・・これはもしや!!」
「何か分かったの? なのは!」
「はい、これはもしかしたら・・・二人は既に|寄生型知的生命体(イチゴ)に寄生されてしまっている可能性が高い事が伺えます」
「「・・・・・・は?」」

 突然何を言い出すのか。と言わんばかりにフェイトとはやては目を点にしてしまった。
 銀時に至っては盛大に頭からずっこけてしまう始末。
 そんな一同の反応など無視するかの様に話は続く。

「二人の進言や昨晩の行動から推測するに、二人は既にイチゴに寄生されてしまい彼らの操り人形と化して江戸を徘徊していると言う仮説が立てられます」
「そ、そうなの!?」
「この図をご覧ください。私が先ほど調べたイチゴと呼ばれる知的生命体に関するデータです」
「おい、いい加減そのネタから離れろよ。もう読者はそのネタ読み飽きてんだよ。何時までも同じネタ使うのは素人以下だって世の漫才師さん達は言ってるとこだぞ」

 銀時のツッコミなど右から左に聞き流し、なのは(シュテル)はまた先ほどのイチゴを貪る虫の写真を張り付ける。
 相変わらず大きく赤く美味そうなイチゴをこれまた美味そうに貪り食らう虫の写真だ。
 しかもそれを無駄に大きくしてる。何時の間に拡大コピーなんてしたんだこいつ。

「えと・・・なのはちゃん、これが一体何を意味しとるんや?」
「この写真を見て二人は何も気づきませんか?」
「へ? ただの虫がイチゴを食べてるんじゃないの?」
「確かに、側から見ればそうでしょう。ですが、実際にはこの|寄生型知的生命体(イチゴ)が新たな肉体を得る為の寄生行為に過ぎないのです!」
「な、なんやてぇぇ―――(棒」

 既にはやては疑りまくってる。フェイトに至っては半目になってその写真となのは(シュテル)の推測を聞き流してる始末だった。
 そりゃそうだろう。一体何処の誰がイチゴ=寄生型知的生命体等と思うのだろうか。
 断言しよう。誰もいない。
 そう、誰一人としてイチゴを寄生生物などとは到底思わない。
 だって、イチゴは『果物』なんだから。

「は、はやて・・・どうしよう・・・なのは・・・変な方向に話持って行っちゃってるみたいなんだけど」
「私もそう思ってたところや。そもそも何でイチゴが出て来るんや? 私らイチゴなんて一言も言ってへんのに」
「分かんない。でも、なのはってたまに何考えてるのか分かんない時があるし」
「せやなぁ。私も同じや。なのはちゃん良い子なんやけど時々私らには及びもつかない事考えてる事あるんやなぁ」

 二人の言い分は銀時も納得がいく。
 既になのは(シュテル)の言い分は半分暴走が入っていると言っても過言じゃない。
 が、その原因には銀時も絡んでいるのだけれど。

「おいなのは、イチゴに関しての議論はそのへんにしておいて、いい加減仕事の話に戻ろうや」
「はい、ではイチゴに関する論議は一旦保留にしておきます。それで、二人の行方についてですが―――」

 なのは(シュテル)は赤ペンで歌舞伎町内の一角を丸く囲む。
 其処に二人が居ると彼女は推測しているようだ。
 此処歌舞伎町の華とも呼べる色町に―――

「色町にあいつらが居るってのか?」
「私の予測が正しければ二人はきっとこの色町近辺で消息を絶っている筈です。なので、この近辺を捜索する事が事件解決の近道になると推測しました」
「因みに、何でそう思ったんだ?」
「寄生型知的生命体の次に取る行動は仲間を増やす事です。アルフ様は女性、それに対しザフィーラ様は男性。種子を増やすには絶好の素体と言えるでしょう」
「まだ引っ張ってたのかよそれ―――」

 いい加減うんざりし始めて来た。
 そろそろ本格的に叱った方が良いかな? そう思い始めていた時、なのは(シュテル)は突如として机上の操作パネルを弾きだした。
 突如として揺れ出す万事屋。この揺れは自然の揺れではない。
 人工的な揺れのそれだった。

「お、おい! 一体何したんだよおまえ」
「時間がありません! 皆さまは今すぐにこちらの椅子に掛けて下さい」
「えと・・・う、うん」
「わ、分かった」

 納得がいかないまま、言われるがままに四人は対面席に座る。

ガコンッ―――

 床下からそんな音がした。それと同時に座っていた椅子が床下へと降下していく。
 降下した先にはいつの間に作ったのか無数の機械で作られた隠し通路があった。
 まるでどっかのSF映画かひと昔前のロボットアニメのそれの類に近い。

「ちょ、ちょっと! これ一体何なの?」
「うひゃぁこら凄いわぁ。なのはちゃん家の地下にこんなんがあったなんてなぁ」
「って、ちょっと待てよ! 家二階だぞ! 一体どうやって繋げたんだよ?」

 万事屋銀ちゃんはそもそも二階に座している。それなのに一同は地下に向って突き進んでいる。
 一体どう言うからくりでこうなっていると言うのだろうか。

「その点に関してご説明したしましょうか?」
「いや、良い。お前の説明受けてたらそれだけで投稿スペースがなくなる」

 本当は聞きたかったし、読者層に説明をする都合上聞いておきたいと言う関係上もあった。
 だが、シュテルの説明は長すぎる上に論点からずれまくる危険性が高い。
 下手すると散々迷走した挙句体力だけ無駄に浪費したってのに答えに辿り着かないと言うケースに行きつきかねない。
 名残惜しいが仕方ない。この摩訶不思議空間や何時の間に用意したトンデモハイテクな光景についてはギャグマンガ的展開だからと思ってスルーして貰うしかない。
 そんな事を思っていると、一同は何やら狭い空間へと到達した。
 あちこちに設置されてる見慣れないボタンやレバーの類に、一目じゃ何を意味しているのか全く分からないコンソールの数々。
 恐らく此処は何かしらの操縦席になるのだろう。
 それで、シュテルがメインシートに座り、銀時がサブシート。フェイトとはやては後部座席ってな感じで操縦席に落ち着いた所だった。

「あのぉ・・・なのはさん。これは一体何ですか?」
「現状を推測するに、徒歩で現場に行っていたのでは到底間に合いません。致し方ありませんが私が暇つぶしがてら用意しておいた秘密兵器を使用します」
「ちょっと待て! 暇つぶしついでにあんな恐ろしい物作ったのか? ってか此処何処だよ! 何だよこの操縦席は?」
「メインエンジン始動、各部稼働状況チェック・・・問題なし、反重力制御装置稼働、プラズマリアクターアクティブ、セイフティリミッターON、全システム問題なし―――」
「おいぃぃぃぃぃぃ! 人の話聞けやこらぁぁぁ!」

 慌てふためく銀時の横で冷静に起動準備に取り掛かるなのは(シュテル)を後ろでただ眺める事しか出来なかったフェイトとはやては、『あれ、なのはってこんな事出来たっけ?』としきりに首をかしげる事しか出来なかったのだそうな。

「ゲート開放! 発進10秒前・・・10・・・9・・・」
「おい、これ一体何なんだよ? ってか何処へ行くつもりだ? 色町なんて歩いてすぐの場所だぞ?」
「・・・6・・・5・・・4・・・」
「おい、お前少しは人の話を聞く癖をつける事をだなぁ―――」
「・・・1・・・0・・・発進!!」

 カウントゼロと同時にペダルを踏みこみレバーを引く。その後すぐに強烈な重圧が一同に襲い掛かる。
 誰もがシートにのめり込む形で瞬き一つ出来ないまま晴天の空を突き抜けていく。

「うごぎぎぎおぎぎぎいごいぎいいいいいい」
「つつつつつ潰れるううううううううううう」
「うががあっがあああああああががああああ」

 余りにも強烈な重圧なせいか銀時、フェイト、はやての三人共普段ならば絶対に出さないような奇天烈な声を発している。
 そんな中、なのは(シュテル)はとても険しい表情で操縦かんを握り締めている。
 やがて、晴天の空を突き破り、成層圏を抜け、満天の星空が輝く漆黒の宇宙へとその光景は移り変わる。

プスン―――

 ふと、後ろの方で嫌な音がした。まるで何かが切れてしまったかの様な音だ。
 何だろう、背筋がゾワリとしだしてきた。
 こう言う時に限って碌でもない事が起こるのはギャグパートの常と言える。

「私としたことが・・・迂闊でした・・・」
「迂闊? 迂闊って・・・何が迂闊だったんだよ」
「この『試作型多目的運用型大型二足歩行ロボ』略して『パワーローダー試作一号機』またの名を『ゼフィランサス』の起動実験も兼ねて発進をしたまでは良かったのですが・・・どうやらこの機体は重力圏内でしか運用は出来ないようですね」
「うん、色々とツッコミたいところだらけなんだけど一つだけ言わせてくれ。『ゼフィランサス』って名前だけは止めろ。サン〇イズ辺りに作者が怒られるから」
「まぁ、無重力圏内での試験は後に行うとして、もう一つ問題がありまして―――」
「まだあんのかよ」
「別に大した問題ではありません。ただ【燃料が底をついた】だけです」
「ふ~ん・・・・・・ゑ!!」

 寧ろそっちの方が大問題ではないのか?
 こいつの問題の序列がいまいち分からない。

「お、おい・・・燃料が切れたって・・・この後どうなるんだよ?」
「ご心配なく。この『試作型多目的運用型大型二足歩行ロボ』には万一の事態に備えて技術の漏洩を防止する為に動力炉内に自爆装置を内蔵してあります。これでこのロボの技術が他に渡る事は決してありません。跡形もなく原子レベルで破壊されますので」
「あっそ・・・んで、俺達はどうやって地上に降りるんだ?」
「・・・・・・」

 銀時の問になのは(シュテル)はただ無言だった。
 おい、こいつまさか地上に戻る手段もないまま発進したってのか?

「なのはく~ん。君の事だからちゃんとこの後の事も考えてあるんだよねぇ? お父さんはお前の事を信じているんだぞぉ~」
「・・・・・・」
「なのはぁ? 何そっぽ向いてんだよ・・・あるんだろ? 緊急脱出装置的な何かがさぁ・・・」
「・・・・・・」
「えと・・・聞きたくないんだけどさぁ・・・・もしかして・・・・・・脱出装置的な類のって・・・・・・・積んでないの?」
「・・・・・・すみません」
「すみませんじゃねぇぇぇえええええええ―――!」

 銀時の怒号が放たれたのと巨大ロボの自爆はほぼ同時に起こった。
 突如として大気圏外で起こった大規模な爆発は、後の世でも未だに解明される事はなく、原因不明の謎の爆発現象『宇宙のすかしっ屁』と呼称され、以降数百年に渡り学者達の頭を悩ませる結果となる。
 尚、爆発に巻き込まれた四人であったが、爆発の影響で激しく吹き飛ばされ、そのまま万事屋前に落下したのだと言う。
 因みにこの時、四人共軽い火傷と打ち身程度で済んだのは不幸中の幸いと呼ぶに相応しい事だと思われる。 
 

 
後書き
正直、シュテルが頭良い子なのか頭おかしい子なのか疑問に思い始めて来た今日この頃です。 
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