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駄目親父としっかり娘の珍道中

作者:sibugaki
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第85話 後始末は自分の手でつけるのが世の中の鉄則 その5

 
前書き
今回はちょっぴりアダルトな展開があります。
もし、そんな表現に違和感もしくは嫌悪感を感じる方は読むのをお控えする事を推奨いたします。
それでも構わないぜイエィ! って言う方は是非お読みになってください。
そして、彼の様な過ちを犯さないようにこれからの人生を気を付けて下さい。 

 
 目が覚めると、目の前には見慣れない天井が視界一杯に飛び込んできた。
 突然の出来事にまだ夢でも見ているのだろうかと思いかけたが、生憎思考はしっかりしている。
 これは夢ではなく紛れもない現実なのだと、この時のザッフィーは悟ったと言う。
 そのまま寝床から半身起き上がり、周りを見回しては見たのだが、これまた見慣れない風景ばかりが飛び込んできた。

 見慣れない壁、見慣れない装飾品、見慣れない展示物、見慣れない家具、この部屋にある何もかもが見慣れない物で埋め尽くされていた。

 おかしい、此処は一体どこなんだ?
 頭を疑念が支配するのを一旦抑え込みながら、ザッフィーは昨晩起こった事をもう一度鮮明に思い出してみようと記憶の本棚をあさって見た。

1.主はやての命を受け、迷惑を掛けたお詫びとして坂田銀時に飯と酒を奢る為に屋台のおでん屋で共に酒を呑んでいた。

 この辺りまでは鮮明に覚えている。何だったら最初に頼んだ具材も覚えている位覚えまくっているのでこの辺は問題ないだろう。
 では次―――

2.途中で主はやての友人でもあるフェイト・テスタロッサの使い魔と名乗るイヌ科のメスが匂いを嗅ぎ付けて入り込んできた為に三人で飲んで食ってをしていた。

 確かアルフと言ったか。主の友人の使い魔なので無碍には扱えないと思い、財布の痛みを考えず彼女の分も支払いをする事を決めたのは覚えている。
 しかし、この世界と言い自分達の世界と言い女と言うのは皆酒癖が悪いのだろうか。
 彼女も決して良いとは言い切れない。何せ飲んでる最中も散々絡まれ続けたので余り良い思い出とは言い切れない。
 とにかく、この記憶も問題なさそうなので次に行くとしよう。

3.アルフが酔い潰れて寝てしまった為にその場でお開きとし、勘定を置いて爆睡中のアルフを背負いながら屯所を目指す事にした。

 これも覚えている。あの時カウンターの上突っ伏すように倒れ込んで寝息を立てていたアルフを見て、このままでは寒空の下なので風邪を引いてしまいかねないと思い、仕方なくお開きにして、そのまま帰路につこうとした。
 問題ない。此処もちゃんと覚えている。ほっと安心した。
 では、その次を思い出してみるとしよう。

4.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 頭の中を支配したのは空白だった。
 何も映らないし何も聞こえてこない。
 要するに何も覚えていないと言う事になる。

(マジかぁぁぁ―――――!! よりにもよってこの俺が酔った勢いで記憶の大半をどっかに落としたと言うのかぁ! あの時銀時に散々格好つけて言い放った自分がこれってどうなんだよ? これじゃ盾の守護獣ならぬ酒の酒乱獣と改名させられるぅぅぅ! 思い出せ、思い出すんだザフィーラ! あの後俺はどうした? 俺はちゃんと無事に屯所に帰る事が出来たのか?)

 頭を抱えて記憶を模索していたのだが、今現在自分の居るこの空間を今一度凝視する限り、此処が屯所とはどうしても考えにくい。
 まぁ、万が一もしくは億が一の確率ではあるが、寝てる間に屯所がリフォームされたと言うならば話は別だろうが、それは絶対に有り得ない。

 ここ最近で屯所のリフォームの報せなど聞いた試しがないし、第一真選組内でそんな事をしている余裕など有る筈がない。無論資金もない。
 それに、幾ら酔っぱらってて爆睡こいていたとしても夜中に工事なんかすれば普通に目が覚めると言うものだ。

 だとするならば、此処は屯所とは違う別の場所だと言う線が妥当だと言えるだろう。
 だが、だとしたら此処は一体どこなのだろうか?

 しつこい位に部屋の中を見回してみる。
 見れば見る程どれもこれも見覚えのない物ばかりがそこかしこに並べられている。
 しかも、どう言う訳かそのどれもが何処か淫靡と言うか艶めかしいと言うか、要するに大人の雰囲気。所謂アダルチックな雰囲気を醸し出していると言えばいいだろう。

 そんな風に見えた。まぁ、見えたと言っても個人的意見なんだから他の人が見たら別の感覚で見えるかも知れないのだろうがとりあえずそう言う風に見えたと解釈しておく。
 
(今自分置かれている立場を見る限り、此処は真選組の屯所と言う訳ではなさそうだな。かと言って万事屋ではなさそうだし、主の元居た世界に戻ったと言うのも・・・駄目だな、体内の魔力の低下を感じる限り此処は江戸と変わりないか・・・ならば此処は一体何処なんだ? まさか、酔って思考がまともじゃないのを狙って攘夷志士とやらに拉致されたのでは――――)
 
 一気に不安で頭が一杯になっていく。もしそうだったとして、ならば何故拘束されていない?―――

 普通拉致したと言うのなら逃げられないように拘束の一つ位はする筈だ。
 まさかと思い自分の今の状況を確認して改めて現状を知った。

「・・・・・・俺・・・・・・何で裸なんだ?」

 朝起きて、ベッドの上で素っ裸の状態で目を覚ます。普通に考えても有り得ない状況だった。
 気になってそっと掛布団の中を覗いてみたが、其処もやはり素っ裸だった。
 そんでもって、何故かザッフィーのザッフィーは何処かお疲れなご様子だったとこの時には思えた。

(記憶の大半が欠落してて、目が覚めたら素っ裸の状態で見知らぬ部屋のベッドの上で目を覚ます・・・これが夢じゃないとして・・・じゃ此処は一体何処なんだ?)

 益々疑念は膨れ上がっていく。普通じゃまず有り得ない現状が今現在置かれている現状なのだから悩んでしまうのも頷ける。
 頭を抱えて必死に過去の記憶を探り出そうと無謀な努力を繰り返してはみるのだが結果は同じ。

 幾ら頑張ったところで出て来ないものは出て来ない。そう言う徒労に終わるような事を世間では「無駄な努力」と言うのだから笑うに笑えない。

「うぅ・・・き、気持ち悪い・・・俺とした事が深酒した挙句二日酔いまでしてしまうとは・・・こんな醜態を主には曝せないな」

 仮にもしこんな惨状を主はやてに見られようものなら確実に折檻される事間違いないだろう。
 まぁ、主の折檻であれば守護騎士としてはご褒美とも捉えられない事もないのだが。

 嫌、最悪守護騎士の任を解かれた挙句闇の書の肥やしにされてしまうのでは―――
 そう考えると一気に顔色が青ざめていく。
 守護騎士にとって騎士の任を解かれるのは死刑と同義語に相当する。
 そんな事、考える事だって嫌だ。だが、目の前に置かれている現実は余りにも非情に物語っていた。

「まさか・・・俺の他に此処に誰か居るとかは―――」

 最早こうなれば一刻の猶予もない。急ぎこの見慣れぬ空間から抜け出し、早々に屯所へと戻り、かつ今宵起こった事を自身の胸の内にひっそりと仕舞い込まねばならない。
 
 そんな事守護騎士にあるまじき非道とか外道とか言われそうだが、今は己自身の身が大事。
 幸い誰にも見られていないから問題はない。無いと思いたい。そう思いたい今日この頃だったりする。

 とりあえず、今見える範囲に人の気配がないか視線を巡らせてみる。
 目の前にある高価そうな家具の類近辺には誰も居ない。
 同様に出口と思われる扉近辺にも人の気配は感じられない。
 トイレと風呂場を思わせる奥の間辺りにもそれらしき気配はなさそうだった。
 
 ほっと息を吐く。
 どうやらこの部屋俺しかいないみたいだ。
 安堵のため息を吐き、さっさと此処から出てしまおうとさっきまで頭を押さえていた右手を降ろすと、降ろしたその手が何かを掴んだ。

 球体状で柔らかく、それでいて温かみを帯びた何かを―――

「・・・ぁん・・・」
「・・・ゑ??・・・」

 その少し後で聞こえて来た何処となく艶のある色っぽい声。
 思わず男だったらもう一度聞きたいなぁと思えてしまう程の声だった。
 その声から当然分かるではあろうが、その声の主は当然女性の物だと言うのが察せられた。

(女の声・・・まさか、主? それともヴィータか? いや、まさかシグナムかシャマルか? だが、主はたまに潜り込んで来る事はあっただろうが、何故この時にあいつらが・・・)

 途端に頭の中がパニック状態になる。まさか、この状況で一番会いたくない者が間近に居た事に気づかなかったなんて。
 
 どうする、急いでこの場から立ち去るか?
 嫌、こうも距離がない状況では下手に動いて相手を起こせばそれでジ・エンド。
 此処は相手を起こさないようにそっと退出しなければならない。
 しかし、もし万が一隣に居るのが主だった場合、主をこんな見知らぬ場所に置いていく訳にはいかない。
 その為にも隣に誰が居るのか確かめねばならない。
 
 ゴクリと固唾を呑み込み、ザッフィーはそっとベッドのシーツを捲ってみた。

「・・・・・・」
「ZZZ・・・」

 ザッフィーの目の前に映ったのは一人の女性の気持ち良さそうに眠っている寝顔だった。
 もし、もし仮に今特に悩みとかなくて万事オッケーな状態であれば幾らでもこの気持ち良さそうに眠っている寝顔を眺めていたいと思えるのだが、生憎ザッフィーはこの女性に見覚えがあった。

(は? え? えぇぇぇ――――!!! 何で、何で俺がアルフと一緒に寝てるんだぁぁぁ―――!!! 有り得ない、絶対にありえないぞこれはぁぁぁ! 例え天地がひっくり返ったって太陽が西から登って東から沈む事があったってこんな事は断じて起こる筈がない! え? じゃぁ目の前で起こっているこれは何? 俺は何でこいつと同じベッドで寝てたんだ?)

 脳内がパニックの絶頂状態にあるのを何とか表に出さないように努める。
 それだけでもかなりの労力を使う事になるがこの際仕方ない。
 
 ふと、ザッフィーはそっと更にシーツを捲ってみた。
 何も身に着けていない。
 彼女もまた、ザッフィーと同じように生まれたままの姿で同じベッドで眠っていた。
 その光景を前にして、ザッフィーの顔は顔面蒼白を通り越して顔面白白状態になった。
 さっきまで滝のように流れていた汗がピタリと止まる。
 そして、同時に背筋を伝って来る不気味な悪寒。
 ザッフィーはその不気味な悪寒が何を示しているのか何となく理解出来た。

(や・・・やってしまった・・・まさか、まさか15禁の二次小説の中で寄りにもよって越えてはいけない一線を越えてしまったと言うのか? 確かに、俺達の居た作品は元を正せばエロゲーの類だろうが、だとしても今の俺達のあれは深夜枠とは言え健全なアニメの枠に当たる。その枠に当たるキャラの俺が越えてはいけない一線を越えてしまったぁぁぁ―――!!! 不味い、このままでは非常に不味い。もしこの失態が世に広まれば・・・俺は盾の守護獣ならぬ守護『淫』獣と呼ばれる事になってしまう。そうなればお仕舞だ―――)

 今まで以上に最悪な事態に直面した事に頭を抱え出すザッフィー。だが、何時まで此処でこうしていたって事態が好転する事なんて決して有り得ない。
 ならば、今出来得る最善の行動を取らなければならない。
 そう、隣で眠っているアルフが起きるよりも前にこの部屋から抜け出し、事の一部始終を闇に葬る。
 
 そうと決まれば善は急げ。慌てず、かつ急ぎ足で行動に移した。
 まずはベッドを揺らさず静かに其処から抜け出し、物音一つ立てずに其処から離れる。
 幸い身に着けていた一式は綺麗にテーブル上に取り揃えられていた。
 
 ザッフィーは思わずホッとした。どうやら衣服一式を探して部屋中を漁り回る事態にはならなくて済んだようだ。
 とりあえず何時までも真っ裸では不味いと、急いで下着のパンツを履く。
 その後に続いて衣服を身に着けようとしたザッフィーの手が何故かそこで止まった。
 彼の衣服のすぐ隣には、ベッドで静かに眠っているであろうアルフが身に着けていた衣服一式が綺麗に畳んで置かれていたのだ。
 しかも、何故か下着が一番上に置かれている状態で―――

「・・・・・・」

 この時、後にザッフィーは「あの時、自分は何であんな行動を取っ手しまったのか、自分でも未だに理解が出来ません」と会見で意見をすることになる。
 ザッフィーは、思いもよらぬ行動をとってしまった。
 アルフの衣服の一番上に置かれているであろうそれを己が手で摘まみ上げてしまったのだ。
 
 淡いピンク色の生地に素肌に優しい素材で作られた利便性を考慮しつつ見た目などをに気を付けて作られたそれを、彼は手に取って眺めていた。

(これは・・・主が普段身に着けているのとはまた違った柄だが、女子とは皆同じ形のを身に着けているのだな)

 この時、ザッフィーは己の置かれている状況を一時的にだが忘却してしまい、それをただ眺めてしまっていた。
 摘まんでいる手からも感じ取れる肌に優しい生地の触り心地。そして、鼻に漂って来る何とも言えぬ雌の香り。
 
 いかん、この香りは危険な香りだ。雄の本能に揺さぶりを掛け、かつ理性を削ぎ落す危険なそれだ。
 
 己自身にそう言い聞かせ、ザッフィーは己の中の本能と必死に格闘していた。
 己の中にある雄の本能と騎士としての理性。それらが渦を巻きとぐろを巻いて天を穿つ螺旋の頂きに到達しようとしている。
 気が付けば、さっきまで摘まんでいたと思っていたその手は力強くそれを握っていた。
 
 良かった、どうやら俺は己の本能に打ち勝ち、理性を取り戻したようだ。
 危なかった。危うく本能の赴くままに牙を剥くところだった。
 深い、とても深いため息を吐き出し、脱力した体全身に酸素を送り込む。
 ふと、安堵したザッフィーはそんな状態のままでベッドの方を向いて見た。
 ベッドの上では、既に目を覚まして半身起き上がっていたアルフがこちらを凝視していた。
 
 余りにも信じられない光景だったのだろうか、彼女の肩が小刻みに震えているのが見える。
 どうやら、目が覚めた際に自身が裸だと言う事に気づいたらしく、シーツで己の体をガードしているのだろうが、それがまた何と言うか、何処となくアダルトな雰囲気を醸し出している。
 
 が、今はそんな大人な演出を楽しんでいる場合じゃないのはザッフィー自身が一番理解していた。
 そう、今彼の手で握られているのは、紛れもなく彼女『パンツ』だったのだから―――

「い・・・・・いぃ・・・・・いぃぃ・・・・」
「い、いや・・・これは・・・・その―――」

 最早、どんな詭弁も言い訳も手遅れとしか言えなかった。それは、言葉が全く出て来ないザッフィーが一番理解しているのだろうから。
 そして、この後起こり得るであろう惨劇もまた、薄々とだが感じ取る事が出来た。

「いぃぃぃやああぁぁぁぁ――――――――!!!」

 彼女の口から発せられる甲高い悲鳴。そして投げ付けられる備え付けの家具の数々。
 中にはタンスや電気スタンドと言った割と高そうな代物がちらほらあったように思えるが、そんな事を一々気になどしてはいられなかった。
 投げつけられる家具から急所を庇いつつ、急いで部屋を飛び出し、内部構造が分からないままがむしゃらに家屋内を走り回り、階段を転げ落ちて外へと飛び出す。
 外では殆どの住人が活動を開始しだした時刻だったらしく、大勢の町人達が横道を歩いている。
 そんな場所にパンツ一丁の男が飛び出してきたのだから忽ち横道は大騒ぎとなる。
 だが、今のザッフィーには周囲の女子の悲鳴や男のざわめきなど耳に入りはしない。
 此処が何処なのか一刻も早く把握する為に、自分が出て来た建物を振り返って見上げた。

「・・・・ホテル・・・・『一夜の過ち』・・・」

 其処には何処となくアダルティックな文字でそう書かれた看板が掛けられていた。
 だが、そんなアダルティックな字面よりも、其処に書かれていた文字が何よりもザッフィーの胸には突き刺さった。
 一夜の過ち・・・あぁ、確かにその通りだ。
 思えば、あの時主の命とは言え銀時に酒を奢った時に過ちは起こったのだろう。
 嫌、もっと言えば新八の家に忍び込んだ事がそもそも過ちと言えるのかも知れない。
 そして、そのツケが今こうして自分の置かれている現状なのだと・・・

 ゾクリッ!! 背筋から不気味な気配が感じる。
 彼の本能が入り口を見る事を拒む中、彼の理性はそれを了承し、入り口から出て来るそれを見入った。

「・・・・・・・・・」

 出て来た時、彼女は無言だった。急いで支度したのだろう、その身には下着しか身に着けていない。だが、今の彼に彼女のその姿を見る余裕は欠片もない。
 まるで、外道を見るような冷めた視線でこちらを見る彼女のその威圧に、ザッフィーはもし、もし生きて再び主はやてに会えるのであれば、その時はもう二度とこんな過ちは犯すまいと、心の内にそう誓ったのだと言う。

「死ねやぁぁ、この淫獣がああぁぁぁぁ―――!!!」
「ぐわああぁぁぁぁ―――!!!」

 後に、この惨劇を目撃した人たちはこの事件を後世にこう伝えている。




『色町の悪夢』・・・と―――





     つづく 
 

 
後書き
以上、一夜の過ちから起こったとある盾の守護『淫』獣の惨劇でしたww 
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