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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epica15-B局員狩り~Brother and sister showdown~

 
前書き
ティーダ・ランスター戦イメージBGM
龍が如く4 伝説を継ぐもの「For Face」
https://youtu.be/np-mCvcA0EI 

 
†††Sideスバル†††

話には聞いていたけど、ティアのお兄さんは確かにちゃんと生きてた。でもまさか、そのお兄さんと戦うことになるなんて。しかもプライソン戦役の頃みたくお母さんやノーヴェ達、メガーヌさんみたいに、記憶をイジられているみたい。

「出来るだけ墓地に被害を出さずに、2人を抑えないと・・・」

「う~ん、どうするティア? 結界魔法なんて張れないよ・・・?」

結界魔法って割りと難しいし、維持するのにも魔力が要る。さらに言えばあたしとティアは結界魔法が使えない。応援を呼ぼうにも到着するまでどれだけ掛かるか判らない。頭の中でぐるぐる考える中・・・

「安心してくれていい。ここは死者が安らかに眠り、遺された人たちが万感の思いに馳せる場所。そこを荒らすような真似は、僕たちはしない」

お兄さんがそう言って女性の仮面持ちをチラッと見ると、仮面持ちはポケットから小さなガラス球を取り出した。ソレを地面に落とすとガシャン!って音を立てて割れた。と同時、落とされた場所を中心に何かが地面を這うようにブワッと放射状に広がった。昼間だった世界が灰色の世界へ早変わり。

「「結界・・・!?」」

「そう。局や騎士団に魔力感知されず、一般人はもちろん魔導師にも見られることはない、特別な術式を持った結界魔法。これで誰にも邪魔されることはなくなる」

あたしやティアを逃さず、また応援も来られないようにするっていう、そんな特別な結界はドーム状に展開された。お兄さんは「同志テルコンタル。僕ひとりで戦います」って、女性仮面持ち・テルコンタルにそう言うと、足元に黄色に輝くミッド魔法陣を展開した。

「どうぞ。私は非戦闘員なので、元より戦うつもりはないですから」

「そうだったね。じゃあ君は見ていてくれ。・・・最後の大隊、アングマール行きます」

VS・―・―・―・―・―・―・―・
其は航空機動重爆撃砲台アングマール
・―・―・―・―・―・―・―・VS

「クロスファイア・・・!」

お兄さんの周囲に魔力スフィアが10基と展開された。ティアが「スバル! クロスシフトB!」って指示を出してくれた。Bは、ティアがかく乱担当で、ティアが相手の動きを阻害してるうちに、あたしが突っ込んで一撃必倒で仕留めるっていう陣形だ。

「うんっ!」

「クロスファイア・・・!」

ティアもまた魔力スフィアを10基と展開したところ、仮面や目出し帽越しでもお兄さんが息を呑んだのが判った。だからティアに「シューット!」先制を取られた。約20発の魔力弾が発射されて、遅れてお兄さんも「シュート!」と発射させた。ティアの先行を許したお兄さんは、至近距離でティアの魔力弾幕を迎撃したことで、「くぅ・・・!」その爆風に煽られた。

「マッハキャリバー!」

クラウチングスタートからのダッシュ。ティアは間髪入れずに「シュート!」って魔力弾を放ち続けて、お兄さんも「その魔法はどこで・・・!?」って驚きながらも、左脇に挟んでる三連大砲から「ブラストディセミネーター!」って、魔力弾を何十発と放射状に一斉発射。弾幕としての厚みは圧倒的にお兄さんに軍配が上がって、ティアの弾幕が一瞬にして押し返されて、あたしも射程範囲内に突っ込んでいたから急速後退。

「スバル!」

「大丈夫!」

お兄さんの周囲を疾走しながら攻撃のチャンスを窺う。お兄さんの周囲には未だに魔力スフィアが10基と設置されていて、うち5基から連射されてくる魔力弾を避け続ける。ティアも負けじと「シュート!」って魔力弾を撃ち続けてくれるんだけど・・・。

――ブラストディセミネーター――

お兄さんの張る弾幕の前には焼け石に水状態。とにかく、懐に飛び込まないことにはジリ貧になっちゃうよね。だから「ティア! クロスシフトA!」って提案した。AはBとは逆で、あたしがかく乱で、ティアが本命の一撃を撃つ陣形だ。

「馬鹿! いくらあんたでも、あの火力の前じゃ・・・!」

「大丈夫! 防御の堅さは、なのはさんやヴィータ副隊長のお墨付きだから!」

ティアにそう返しながら、“リボルバーナックル”のカートリッジを3発ロード。魔力を全部防御に回すためだ。まずは「うおおおおおお!」地面を殴りつける。土煙を上げられるかどうか不安だったけど、ちゃんと地面としてそこに存在していてくれたおかげで、ブワッと土煙を巻き上げることが出来た。あたしはすぐにその場から離れる。せっかくの目晦ましも、その場に残ってたら何の意味もない。

――ヴェロシティレイド――

「っく・・・!」

土煙を穿って来る黄色い魔力の砲撃。あたしの横2mくらいを通過して行ったから、もしかして位置がバレてる?って思ったけど、今度は違う方角に砲撃が放たれたみたいだから、お兄さんもあたしを見失ってるって判った。

(お兄さんを出来るだけ傷つけずに撃破するには・・・やっぱりアレしかないよね!)

あたしのサイボーグとしてのスキル・振動破砕。全力のなのはさんのバリア系防御魔法すら一撃で破壊できるほどの威力だ。お兄さんのデバイスを破壊してしまえば、その脅威度はグッと下がるはず。

「ウイングロード!」

“リボルバーナックル”を地面に打ち込んで、ウイングロードを無軌道に展開させると、ウイングロードが宙を走るに勢いによって土煙も晴れていく。その前にあたしは砲撃の発射地点、つまりお兄さんへ向かって疾走開始。スキルを発動した右腕の“リボルバーナックル”を構えて距離をどんどん詰めてく中、一瞬晴れた土煙越しにお兄さんと目がバッチリ合った。

「そこかい!」

――ブラストディセミネーター――

「マッハキャリバー!」

≪Protection EX≫

目の前に放たれた散弾。あたしは前面にバリアを展開して、そのまま弾幕の中に突っ込む。至近距離での爆発に「ぅく・・・!」全身が軋むけど、バリアとこの機械の体のおかげで意識を失わないで済んだ。

「うおおおおおおおおおおおッ!!」

さらに速度を上げて、次弾が発射される前に懐へと入り込もうとする。お兄さんは拳銃型デバイスの銃口をあたしに向けたからまたバリアを張ろうとしたけど、お兄さんは撃つことなくトンッと地面を蹴って空に上がった。

「(あ・・・! お兄さんって空戦魔導師だったっけ・・・!)でも、逃がさない!」

ウイングロードの先端をお兄さんの背後へ来るように延ばして、蓋を閉めるように上昇を食い止める。ドンッと背中からウイングロードの裏面にぶつかったお兄さんが、少し背後をチラッと見た。あたしから視線が逸れたこのチャンスはしっかりものにしないと。グッと両膝を曲げて、疾走のスピードを利用して大ジャンプ。

「っ・・・!」

「振! 動! 拳!」

突き出てる砲塔デバイスへと右拳を打ち込もうと繰り出すと、お兄さんは前面にラウンドシールドを展開した。お兄さんの防御力がなのはさん以上だったらまずいけど・・・。ちょっと不安のまま、あたしの拳がシールドにヒット。抵抗は・・・なかった。あっさりシールドを粉砕して、そのままデバイスへと拳を伸ばした。

「デバイス破壊を狙ってきたか・・・! 悪くない考えだと思うよ」

――クロスファイアーシュート――

直後、視界の外から魔力弾3発が飛んで来て、あたしの右腕――“リボルバーナックル”を真上から連続で撃った。威力が高いというより重いって言うのかな、右腕がガクッと強制的に下に向けられちゃった。突進の勢いも無くなって落下し始める中、お兄さんが拳銃の方の銃口をあたしに向けた。

――シューティングスター――

飛来するティアの魔力弾。その速度から、アリシアさん直伝の弾速重視の精密狙撃魔法、シューティングスターだ。正確に着弾した高速弾によって、お兄さんの右手から拳銃が弾き飛ばされた。お兄さんは即座に大砲を向け直してきた。

――ウイングロード――

トリガーが引かれるより早く足元にウイングロードを発動して、お兄さんの股下を潜り抜ける。そしてすぐにウイングロードの進行を上に変えてお兄さんの背後へと回ってしまえば、まだこちらに振り返り終えてないお兄さんの隙だらけな背中を捉えられることが出来る。

「でぇぇぇぇぇい!!」

勢いをつけたままの後転蹴りをお兄さんの左肩に打ち込んで、足の甲を肩に引っ掛けたままお兄さんを地面へ向かって蹴り飛ばす。

『スバル!』

『うんっ!』

ウイングロードを駆け上がりながら、あたしとお兄さんの対角線上に移動したティアを確認。あたしはカートリッジをロードして、ある魔法をスタンバイ。前面に練り上げた魔力をスフィア状に作り出して左手の平で保つ。飛行魔法によって宙で制止したばかりのお兄さんへと・・・

「ディバイン・・・バスタァァァァーーーーッッ!!」

――クロスファイア・バーストドライブ――

スフィアを殴ることで発動したあたしの砲撃と、ティアの砲撃がほぼ同時にお兄さんを前後から挟撃、そして着弾して大爆発を起こした。爆風に煽られながらもあたしは、足元にウイングロードを伸ばしてきて着地。砂煙も完全に晴れて、ティアの姿を確認。おーい、って手を振ると、「まだ気を緩めない!」って大声で怒られちゃった。

「そ、そうだよね・・・!」

白煙を引いて落下してくお兄さんを見下ろした後、もう1人の仮面持ち・テルコンタルって人に目を向ける。お兄さんが砲撃2発の直撃を受けて今まさに地面に激突しようかって言うのに、あの人は興味無さげに地面に横座りで座ったままだった。

†††Sideスバル⇒ティアナ†††

あたしとスバルの同時砲撃の直撃を受けたお兄ちゃんは、力なく地面へ向かって真っ逆さまに落ちていく。助けたい衝動に駆られるけど、正直いまの砲撃だけで撃墜できたなんて甘い考えは抱いてない。案の定お兄ちゃんは制動を掛けて宙に浮いて、「いや~、強いな~」って、ボロボロのマントを脱ぎ捨てた。

「でも、もう同じ手は通じないと思ってくれ」

そう言いながらお兄ちゃんは「ラストオーダー、セットアップ」と新しいデバイスを起動させた。それもまた脇に挟み込むことで、ようやく片手だけで携えられることが出来るほどの・・・巨大なスナイパーライフルだった。セレスさんから見せていただいた戦闘映像にも映ってたデバイスだ。

――ブラストディセミネーター――

左脇に挟みこんでる大砲から散弾から放射状に放たれる。狙いはスバルで、「うわっと!」あの子は慌ててウイングロード上を疾走して、その効果範囲内から逃れた。

――ブレイクチェンジャー――

そしてあたしにはスナイパーライフル型デバイス・“ラストオーダー”からの砲撃が1発。セレスさんの映像だと、あの砲撃は直射砲じゃなくて、砲線が曲がるっていう、ちょっとクセのあるものだったりする。グッと身構えて、どこへ逃げればいいかを僅かな時間で決める。運が悪ければ逃げた方に砲撃が曲がってくるかもしれない恐怖を飲み込んで・・・。

「下・・・!」

ウイングロード上から飛び降りて、下のウイングロードへと着地しようとしたところ、砲撃はあたしがさっきまで居た場所を通り過ぎていった。そして着地したその直後、「ティア!」ってスバルが叫んだ。何も考えることなく着地した体勢のまま、前へ向かってヘッドスライディング。落下中、頭上を砲撃が通り過ぎて行った後、霧散した。

(曲がる砲撃は1回しか軌道修正が出来ない・・・?)

たぶんそれだけでも重要な情報だと思う。でもま、お兄ちゃんは今日この場で捕まるから、この情報もすぐに役に立たなくなると思うけど。次のウイングロードへと落ちる中、あたしは「クロスファイアシューット!」と、展開した魔力スフィアから10発と魔力弾を一斉発射。

「射砲撃戦で僕に勝とうとするのは諦めた方がいい。君らの確保を僕の任務とするが、何も撃墜してから、というわけじゃないんだ。大人しく投降してくれれば、僕としてはとても助かるんだ」

――ブラストディセミネーター――

あたしの弾幕を散弾で迎撃するお兄ちゃんは、“ラストオーダー”の砲門をスバルへと向けて・・・

――スパークジャベリン――

その砲門から「電気変換・・・!?」された直射砲が発射された。落雷のような大きな轟音を発しながら発射された電撃砲をスバルは「うわっ!?」とウイングロード上を疾走して躱すけど、ウイングロードが撃ち抜かれて、しかも「きゃうん!?」スバルがビクンと大きく痙攣した。

「スバル!?」

ぐらっと体が傾いていって、ウイングロードから落ちそうになった。お兄ちゃんへの攻撃を中断したあたしはウイングロード上を全力で走っては下を走るウイングロードに飛び降りて、スバルの元へと向かう。あたしがスバルの元へとたどり着くより早く、デバイスの両方を手放した「お兄ちゃん・・・!?」がスバルを受け止めて、そのまま地面に降り立った。

「言ったろ。君たちを撃墜するのが目的じゃないって」

お兄ちゃんがそう言いながらスバルを地面に下ろした瞬間、スバルが「せいっ!」とブレイクダンスの技の1つ、ウィンドルだっけ?みたいな動きをして、お兄ちゃんの両足を蹴り払った。そして両手を使って跳ね起きながらスバルは「でぇーい!」と両足による突き蹴りを食らわした。

「ぐあああ! お、お礼ではなくこの仕打ち・・・!」

「た、助けてもらったのは感謝ですけど、やっぱりあなたは敵さんなので!」

――リボルバーキャノン――

――ハイプロテクション――

「ぐぅぅ・・・!」

容赦なくお兄ちゃんに“リボルバーナックル”の一撃を打ち付けるスバル。お兄ちゃんはとっさにバリアを前方に展開して直撃は防げたけど、その衝撃には踏ん張りきれずに吹っ飛ばされた。

「ティア!」

「え・・・ええ!」

――クロスファイアシュート――

背中から地面に叩き付けられたお兄ちゃんへと魔力弾30発を撃ち込んでく。今のお兄ちゃんは、確認できている4つのデバイスの内3つをそこら辺に転がしてるから無手だ。だからお兄ちゃんは半球状のバリアを張って、あたしの爆撃を防御。これがまたかなり頑強でなかなか突破できない。

『ティア、あたしがやってみる!』

『あんた、かなり強烈な電撃食らったでしょ。大丈夫なの?』

『ちょっと意識飛んだけど、もう大丈夫!』

あたしが降らせる弾幕爆撃の中を疾走するスバル。あの子に当たらないように軌道修正しつつ、お兄ちゃんが張り続けるバリアへと撃ち込み続ける。

「うおおおおおおおおおおおッ!!」

着弾時の爆発音を上回る大声で叫ぶスバルが右腕を振り被りながらバリアに突っ込むのを見届けつつ、左手に持つ“クロスミラージュ”をモード3・ブレイザー形態へ変形させて、砲撃魔法をスタンバイする。

「リボルバー・・・キャノン!!」

ガキン!と派手な音が響き渡る。スバルはバリアに拳を打ち込んだまま前進を続けてながら、左手に魔力スフィアを1基生成した。そして前進を中断して僅かに後退し、スフィアを体の前に持ってきた。

「ディバイィィン・・・バスタァァァァーーーーッ!」

砲撃をバリアに撃ち込んだ。一際大きな爆発が起きて、ゼロ距離だったこともあってスバルとお兄ちゃんが爆煙に飲み込まれて見えなくなる。そのすぐ後にスバルが高速で後退してきた。

――スナイプレールガンVersion1.0――

派手な爆音と一緒に何かが煙を突き破った。直感に従ったおかげかスバルは真横にヘッドスライディングすることで回避。あたしはお兄ちゃんが徐々に晴れていく煙から歩き出で来たたところで、砲撃魔法の「ファントムブレイザー!」を撃った。

「すまない、ちょっと待ってくれ。非殺傷設定の出来るデバイスをまずは取らせてくれ」

あたしの砲撃を走って避けたお兄ちゃんは、局員時代から使われてた拳銃型デバイス・“ピースメイカー”の元へと駆け出した。スバルがそんなお兄ちゃんに接近戦を挑む。“マッハキャリバー”の機動力を活かしてのヒットアンドウェイ。頑強な体と防御力、一撃の重さと攻撃力は、スバルは正しく重戦車。お兄ちゃんは邪魔そうな“ラストオーダー”をスバルの攻撃を防ぐ盾、そして振り回しての棍棒扱い。

「(今のお兄ちゃんなら・・・!)クロスミラージュ、ツインダガーモード!」

両手の“クロスミラージュ”をダガーモードへ変えて、あたしは「足止めをお願い!」とスバルにお願いして、お兄ちゃんのデバイスを破壊するために動き出す。スバルは「判った!」と、お兄ちゃんへの攻撃を絶え間なく行ってくれる。

(まずは一番近い大砲から・・・!)

あたしの目的が何なのかを察したお兄ちゃんが「やめなさい! それ1機でどれだけのコストが!」なんて、心配する事がちょっとズレてることを言い出した。あたしはそれに構わず展開している魔力刃を物理破壊設定へと変える。封印じゃ奪還された際のリスクがあるけど、破壊さえしてしまえば、リカバリーされない限りは使用不可だ。

「させないよ・・・!」

――クロスファイアシュート――

スバルの蹴りをレールガンで受け止め、蹴り飛ばされながらも発射してきた魔力弾、およそ50発が、「まずい・・・!」あたしへと迫ってきた。あたしは後方に「ラウンドシールド!」を展開して、両手に持つ“クロスミラージュ”を頭上に高く放り投げる。

「借ります!」

そして大砲を拾い上げる。ものっすごい重かったんだけど、なんとか慣性コントロールで抱え上げることが出来た。あたしのシールドを回り抜けてきた残りに40発くらいへと砲門を向ける。

「いっっっけぇぇぇぇーーーーッ!」

――ブラストディセミネーター――

トリガーを引いた瞬間、「っ!?」全身から魔力が根こそぎ吸い取られたような脱力感が襲い掛かってきた。しかも発射の衝撃で数mと後ろに吹っ飛んじゃうし。でも3つの砲門から数十発の散弾は発射されて、迫り来ていたお兄ちゃんの魔力弾を全弾迎撃できた。

「ぅく・・・。お兄ちゃん、よくこんなモンスターデバイスを連射できて・・・」

あたしは1発撃っただけでもう疲労が。尻餅をついたことで痛むお尻を他所に大砲を地面に落として、近くの地面に刺さった“クロスミラージュ”を取りに行く。ひそかに考えてた、大砲を撃った後に落ちてきた“クロスミラージュ”を空中で掴み取り、地面に落とした大砲を突き刺して破壊、というちょっと格好つけた処理は出来なかったけど・・・。

「クロスミラージュ!」

≪Connect cable≫

“クロスミラージュ”のグリップ底から魔力ケーブルを生成して2挺を連結させる。左手に持つ“クロスミラージュ”を「せい!」と大砲へと向かって投擲。魔力刃が砲身の真ん中に突き立った。さらにあたし自身も大砲の元へ急ぎ、そして右手に持つ“クロスミラージュ”の魔力刃で直接大砲を切断して破壊した。

「ああああああ!」

お兄ちゃんの悲痛な叫び声。心苦しくはあるけどこんな物騒なデバイスは必要ありません。次に狙うはスナイパーライフル型の“ラストオーダー”。あたしの視線の先に“ラストオーダー”があることに気付いたお兄ちゃんは「もうこれ以上は許さないよ!」って怒った。

「このデバイスだけは使いたくはなかったけ――」

「キャリバー・・・!」

そんなお兄ちゃんの背中に入るスバルの強烈な蹴り。お兄ちゃんは「うごっ!?」とうめき声を上げながら反り返り、「ショット!」の掛け声と一緒に背中に打ち込まれた追撃の拳でお兄ちゃんは大きく殴り飛ばされて、ある1本の木に叩き付けられたこと止まった。

「あー・・・やりすぎた・・・?」

「・・・良いわよ。防護服を着ているし、たぶんこれくらいじゃないと止められなかったわ」

地面に倒れ伏してるお兄ちゃんの側へと歩み寄りながら、不安そうなスバルへとそう返す。お兄ちゃんまであと5m少しというところで、お兄ちゃんがむくりと起き上がり始めたから、あたしやスバルも構えなおす。

「王よ。無垢なる我らを楽園へ誘いたまえ・・・!」

「きゃあ!?」「うわああ!?」

お兄ちゃんがそう言った瞬間、お兄ちゃんが自爆した。爆炎と黒煙があたしとスバルを襲った。あたしは衝撃波をまともに受けて、体が宙に浮く感覚を得た。そして視界が炎と黒煙で覆われた後、「うぐっ・・・!」地面に叩き付けられてしまった。

「ぅ・・・う・・・お、お兄ちゃ・・・ん・・・、お兄ちゃん・・・! お兄ちゃん!」

痛みに悶えながら、「お兄ちゃん・・・!」と呼びかけ続ける。無駄だと判っている。目の前で自爆したのだから。自爆したということは、ううん、出来たということは、お兄ちゃんはサイボーグだったってことになる・・・。

「・・・ア・・・ティ・・・ティア・・・ティア・・・!」

スバルがあたしを呼んでる。でも応えられない。お兄ちゃんの死に様を直で目にした所為で、今のあたしは本当にダメだ・・・。黒煙もようやく晴れてきて、「ティア!」スバルがあたしの姿を確認して近付いてくる。

「大丈夫、ティア!?」

「スバル・・・、あたしは・・・」

スバルに抱き起こされたあたしは、お兄ちゃんが自爆した場所へと目を向けた。お兄ちゃんを構築していた機械部品が至るところに転がっている。視界が涙で滲み始めたその時・・・

――トランスファーゲート――

例の空間の歪みが出現して、「・・・!」目を疑う光景が広がった。お兄ちゃんの使っていた大砲や“ラストオーダー”をそれぞれ脇に挟むように構え、さらに恵比寿の仮面を付けた仮面持ちが3人、歪みから歩き出て来た。

「「「これより管理局員2名を確保する」」」

3人の口から発せられたその言葉はどれも間違いなく「お兄ちゃん・・・!?」の声だった。“スキュラ”のスペアボディを真っ先に思い出す。人格を完全コピーした、性能は落ちるけど戦闘能力は高レベルっていう・・・。お兄ちゃんにもスペアボディがある・・・かも知れないし、いま自爆したのもスペアかも知れない。でもそんな事、今は・・・。

(さすがにあたしとスバルでも、仮面持ち3人を同時に相手は出来ないわ・・・)

「「「クロスファイア・・・シュート」」」

そうしてあたしとスバルは、どれが本物か偽者かも判らないお兄ちゃんの前に敗れ去った。
 
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