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レーヴァティン

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第五十三話 水の都にてその五

「胡椒も頼むな」
「それは外せないな」
「胡椒がないとな、肉はな」
「塩もな」
「どっちもないとな」
「味が違うだろ」
「全然違うよ」
 それこそとだ、笑って話した久志だった。
「だからそっちも貰うな」
「それじゃあな」
 こうしてだ、久志は親父に情報提供のお礼と旅での必要性も兼ねてだ。それでだった。
 唐辛子に胡椒も買った、そうしてその話題の吟遊詩人の行く先を探した。親父もそこまでは知らなかったのだ。
 それでそのアジア系の顔立ちの吟遊詩人のことを聞くとだった、外見とそもそも噂からすぐに今何処にいるかわかった。
「この街の富豪の一つグリマルディ家にか」
「今は滞在しているとのことでござるな」
「ああ、じゃあ今からな」
「そのグリマルディ家にでござるな」
「行こうな」
 久志は進太に話した、今一行はゴンドラに乗って運河の道を進んでいる。左右には街の石の建物と橋、路が並んでいる。
 その景色を見つつだ、久志は仲間達に話していた。赤や白、茶色の建物達は運河の水面姿があった。
「ここからグリマルディ家の屋敷は近いよな」
「地図を見る限りでは」
 進太はヴェネツィアの街の地図を開いてまずは自分たちの現在地を確かめてそれから地図にあるそのグリマルディ家の場所を確かめて言った。
「そうでござるな」
「あと少しだよな」
「それではでござる」
「ああ、すぐにな」
「グリマルディ家にお邪魔して」
「吟遊詩人に会おうな」
 久志は確かな顔で言った。
「そうしような」
「それでは」
「是非な、しかしな」
「しかし?」
「いや、もう間違いないな」
 それこそとだ、ここでこうも言った久志だった。
「吟遊詩人はな」
「拙者達と同じでござるな」
「ああ、俺達が起きている世界から来てな」
「十二人のうちの一人でござるな」
「それは間違いないな」
 まさにというのだった。
「外見に能力にな」
「しかも持っているものが」
「オルフェウスの竪琴なんてな」
 それこそというのだった。
「もうな」
「そうでござる、どうして手に入れたかはわからないでござるが」
「手に入れただけじゃなくて使いこなすなんてな」
「まさにでござる」
「俺達の仲間である証拠だよ」
「その通りでござる、ではでござる」
「今から会ってな」
 そしてとだ、久志は確かな笑みで言った。
「誘いかけような」
「是非共でござるな」
「そうしような、しかし思わぬ形でまた一人入るな」
 ここではしみじみとして話した久志だった。
「運がいいか」
「運命だろ」
 久志が幸運を言うと正がこう言った。
「それだろ」
「運命か」
「ああ、こうした人と人の出会いはな」
「運命、神様の導きか」
「それでな」
 まさにというのだった。 
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