レーヴァティン
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第五十三話 水の都にてその六
「出会ってそしてな」
「一緒になっていくのか」
「そうだよ」
こう言うのだった、正は。
「偶然とか運じゃなくてな」
「人と人は神様に導かれて出会って一緒になって」
「それで何かを為していくものなんだよ」
「そんなものか」
「不思議な出会いが多過ぎるだろ」
「そう言われるとな」
久志も否定出来なかった。
「どうもな」
「人と人の出会いはな」
「偶然じゃないか」
「運命によるものだ、いい運命もあればな」
「悪い運命もあるか」
「碌でもない奴に会うのも運命だ」
こちらの出会いについてもだ、正は久志に話した。
「そしてその運命にどう向かうかだ」
「碌でもない奴に対してもか」
「まあそんな奴とは会ってもな」
「付き合わない方がいいな」
「屑と付き合っていいことはないだろ」
それこそとだ、正は久志に冷めた声で言った。
「そうだろ」
「同じクラスにいてもな」
「いるだろ、そんな奴も」
「そんな奴とは付き合わなかったさ」
久志は正に目を怒らせて素っ気ない顔で返した。
「底意地の悪い奴にしても屑にしてもな」
「碌でもない奴と会ってもな」
「仕方ないな」
「ああ、悪影響受けて自分がそのレベルになったらな」
それこそとだ、久志に答えた。
「どうしようもないからな」
「だから悪い出会いに遭った時はな」
その時も話した正だった。
「離れることだな」
「そうするのも大事か」
「運命って言っても変えられるからな」
それは決まったことではない、正はこうも話した。
「悪い出会いをするのも運命にしてもな」
「そんな奴には影響を受けない様にして離れてか」
「逃れるといいさ、悪い道に入っていいことはないさ」
「成程な」
「それでいい出会いを大事にするんだよ」
「そちらの運命はか」
「大事にしてな」
そうしと話す正だった。
「やっていくべきなんだよ」
「そういうことか」
「ああ、そして今回の出会いはな」
その運命はというと。
「かなり大事だよ」
「そうした出会いか」
「この世界ではな、仲間の可能性が高いからな」
「そうだよな、しかし考えてみるとな」
ゴンドラの揺れで少し自分も揺れてからだ、久志は言った。座っているがそれでも揺れるものは揺れるのだ。
「俺達の仲間で女の子ってな」
「いなかったな」
「これまでな、けれどな」
「男だけっていうのもね」
剛が笑って話した。
「それもね」
「ああ、色気がないっていうかな」
「味気ないよな」
「だからね」
それでというのだった。
「女の子がいてもね、むしろね」
「いる方がね」
「いいよ」
そうだというのだ。
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