こんなチートでもありですかい?そうですかい。
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第16話。変人の夏休み。前編。
夏休み初日。
ピンポーン。ピンポーン。ピポピポ・・・・
「・・・・何よ。」
いつもの様に、不機嫌な口調でインターホンに出る凛ちゃん。
「遊びに来たで。」
「・・・・もう別にいいけど、インターホンで遊ばないでくれない?」
「無・理。」(キラッ☆)
凛曰く、凄い笑顔だったとのこと。
「で?何しに来たの?」
「遊びに来たんよ。」
「・・何しに?」
「遊びに。」
「・・・・質問が悪かったかしら。何して遊ぶの?」
「・・・・凛ちゃんで遊ぶって言ったらどうするよ?」
「殴ろうかしら。」
「凛ちゃん怖いわ―。」
グダグダである。
「ぶっちゃけると気分で来やした。」
ハァ―、っと溜息をつく凛ちゃん。
「なあなあ。凛ちゃん。」
「何よ。」
「ふと思ったんやけど、凛ちゃん生活費って何で稼いでるん?」
「・・・・稼いでない。」
マジか。家の雰囲気で親がいないって分かったけど、まさか稼ぎがないとは思わなかった。
「あれか。遺産的な奴か。」
「そうよ。悪い?」
「別に悪くないで。遠坂の金を遠坂の人間がつこうて何が悪いんじゃ。」
「・・・・ところで、衛宮はどうしてるの?」
「うち?うちは・・・・死徒ぬっ殺してお金貰った。」
あとで聞いた話だが、関東での依頼額は億いってたらしい。どんだけだ。
「死徒?」
「うん死徒。」
「死徒?」
「うん死徒。」
なんだこの会話・・・・
「あなたのお父さんってそんなに強かったの?」
「いや、親父は使えねぇ。」
「え?じゃあ誰が・・・・」
「俺や俺。」
「は?」
「It's me Shingo」
何故か首をかしげている凛ちゃん。目が「何を言ってるのかしらこの子?」と言っている。
「金の話は止めや止め。」
「・・・・そうね。やめましょ。」
説明が面倒臭いことになりそうだったので、触れないことにした。
「凛ちゃんは今、魔術のお師匠さんとかいるん?」
話題を変えてみる。ちなみに俺は全力で魔術の勉強から逃げています。だって面倒なのさ。
「今はいないけど、一応、父に教わっていたわ。」
「ふ―ん。ほなら今は教えてもらう人はいないんか。」
「魔術は一人で勉強中って所ね。」
「魔術は?他にも習ってるたりしてるん?」
「・・相変わらず変なところあざといのね。護身用として拳法習ってるの。すっごくいけ好かない奴にね・・」
「ほー。性格ねじ曲がってるんやな。」
「ねじ曲がるってもんじゃないわ。そうね・・なんて言うのかしら?」
「グニャーって感じ?」
「そうね・・グシャーって感じかしら?」
とりあえず壊滅的って言いたいのですね。わかります。
「そんなんに教わってるんか。大変だな凛ちゃん。」
「同情でも、気持ちは貰っておくわ。」
「拳法ってどんな感じなん?エイシャオラ!とかハイヤァア!!とか言うん?」
「どんな偏見よ・・・・」
「掛け声的な偏見よ。」
凛ちゃんがそんなことやってたらわりとシュールなんだが・・・・
「ところであなたは何か教わっているの?」
「ほ?俺?なんも。」
「・・・・ホントに?」
「あえて言えば、剣道の道場に連れてかれるぐらいかの?」
「へぇ、剣道なんてやるんだ。」
意外そうにつぶやく凛ちゃん。
「おう。始めてからなんだかんだで4年か?」
「強いの?」
「さぁ?真面目にはやってないけどな。」
「ハァー、あなたらしいって言えばそこまで何だけど・・・・」
まぁ、死徒を殺せるぐらいには強いんじゃない?
グダグダと凛ちゃんと話した日から数日後、シロちゃんの試合を姉ちゃんと一緒に見に行った。
親父?寝てます。舞弥姉ちゃんはバイトの時間。たいがーの紹介でコペンハーゲンって酒屋でバイトしている。
「おーい。シロちゃーん」
「シロー。」
「あっ、ニイさん。姉ちゃん。」
シロちゃんは俺のことを二イさんと呼ぶようになった癖に、姉ちゃんのことは姉ちゃんと呼ぶ。
ぐぐぐ・・・・ロリーでカワイイからって調子に乗るなよ!!
「シロちゃん頑張れよー。」
「頑張るだけじゃダメよ。シロウ。一番よ一番。分かった?」
「ははっ・・任せてよ姉ちゃん。」
むんっ。と力瘤をみせるシロちゃん。おおっ、自信が満ち溢れてるぜ。
ちなみに姉ちゃんは俺の膝の上に座っている。悲しいかな、背的に椅子に座りながらじゃ見えないのだよ。
俺の膝の上に座り、陸上トラックが見えるようになってご満悦の姉ちゃん。・・・・単純だのぉ。
side 衛宮 士郎
今日はニイさんたちが大会を見にきた。朝起きた時はなんか気が抜けてて、こんな緊張感で大丈夫かな?
って不安に思ったけど、ニイさん達がいると考えると少し緊張してきた。
よし!集中して始めの100m、頑張るぞ!!
「なぁ・・衛宮。スタンドに居るのってお前の・・・・」
「ゴメン。集中したいんだ。後でね。」
「お・・おう。」
そう言ってアップを開始する士郎。おいて行かれる部員。
「なんか衛宮の奴スゲぇ気合入ってるな。」
「聞いた話だと、衛宮って超ブラコンらしいぜ?兄貴来て気合でも入ったんじゃん?」
「マジで?でもあの天才なら分かる気がするかも・・」
「影の薄い変な奴だけど、5教科中間期末オール100だろ?兄じゃなくても尊敬できるぜ。」
「弟の方も勉強できるし、足くそ速えぇし、なにこの兄弟・・・・」
「衛宮はうちの一年で唯一共通で走るからな~。」
SIDE OUT
「シンゴ。この共通って何?」
姉ちゃんが今日の競技スケジュールを持って聞いてきた。
「中学生は1年生と2・3年生で体力とかが全然違うからの、それで分けてるんやけど、共通はその括りをなくすんじゃ。」
「へ~。でもシロウは共通でも走るのよね?」
「おう。シロちゃん速いからの。」
そう言うと、姉ちゃんは嬉しそうに胸をはる。どうだ。私の弟凄いだろ?と言ってるようである。
「シロウはいつ走るの?」
「待っとれ、今マーカーで印つけといてやるさかい。」
え~と1年100mだろ、共通200mだろ、共通400mだろ、共通4×100mリレーだろ。・・・・たくさん走るなシロちゃん。
「これだけ?」
「いや、姉ちゃん。普通1つ2つじゃないんか?」
「そうなの?」
「俺もそこまで陸上詳しくないからわからん。」
二人で話しながら待っているとシロちゃんの番になった。アナウンスでシロちゃんの名前が呼ばれ、応援の声が沸く。
「シロ~!!」
「シロちゃんガンバー!!」
シロちゃんはスタートが得意とのこと、見せてもらおうじゃないの。
「よ~い。」
審判の声で、選手たちはクラウチングスタートの姿勢を作り、独特の緊張感を生む。
バン!と言うピストルの音で一斉にスタート・・いや、士郎が体一つ抜き出ている。
余りにもスタートの速さに競技場に感嘆の声が上がり、イリヤは凄い凄いと興奮しっぱなし。晋吾は固唾をのんでジッと見守っている。
見る見るうちに後続を置いて行き、80mの地点で断トツのトップ。後ろを見て確認してから、ペースを少し落してゴールに駆け抜ける。
それでもタイムは11秒22。会場のほとんどの人が苦笑いしている。イリヤは膝の上で「シロウが一番だ」と飛び跳ねてる。危ない。
晋吾はイリヤのキャッチに集中している。前が見えない。
結局シロちゃんの大会の結果は、1年100m優勝。共通リレー2位。の成績を残した。200mと400mはまだまだとのこと。
しかし、100mでは全国大会の標準記録を突破。全国でもシロちゃんガンバ!!
8月の第1週。一成の家である柳洞寺に泊まりに来た。
「1日ですがお世話になります。」
「いらっしゃい。よく来たね。」
一成の兄である零観さんが迎えてくれた。一成の父はここの住職なのだが、他山に修行に行っているため、彼が代理を務めている。
凄いガッテン系の外見である。兄貴殿と呼ばせてもらおう。
離れの一室を泊まる部屋として貸してくれるそうで、荷物を置き、着替える。
「・・・・なぜ和服に着替えてきたのだ?」
「ほ?お寺に泊まんのに洋服でうろつくよりも、和服で居た方が粋やろ?」
「粋って・・・・」
「ハッハッハ!一成が連れてきた友人は豪く『粋』な坊主だな!?」
「兄貴殿も粋な『坊主』だと思うで?」
「ハッハッハ!愉快愉快!!」
お寺ではすることは少なく、とりあえず周りを散歩することに。
「なんもなくてつまらんだろ?」
「そんなことあらへんよ。散歩好きやし、特になんもせーへんでも、のんびりした空気は好きやしの。それに・・友達と一緒の時間を過ごすことが一番重要さかい。」
「・・・・そうか。」
広い境内と立派な伽藍を見るだけでも楽しめるし、裏の深い林の中の裏参道を行くと、林の中に深山町屈指の面積の墓地がある。
さらに、そこには郊外の森を一望できる高台がある。絶景である。
「素晴しいの。」
「ああ。ここの風景は素直にいいと思うな。」
「一成。」
「ん?」
「中々楽しめるやんかお前んち。」
「・・そうだな。」
暗くなってくるまでのんびり景色を楽しんだ後、修行僧の方たちと一緒に夕飯を食べた。
完全に酒宴だったが、それでいいのかお寺の癖に・・・・
何故か一成の料理は質素だった。曰く、小坊主に食わせる贅沢は無い。と言われてるとか。
俺?お客様だからって結構豪華でした。美味しく頂きました。
一成。今度うちに招待するからそんなにちらちら俺の食事見んな。え?何?素直に嬉しい?
寝る前に一成と碁を打つことに。碁は強くもなく弱くもなくといったところ。途中で考えるの面倒になるんだよね?
テーブルゲームで真面目になるのは麻雀ぐらいです。
2、3局打って就寝。明日には帰る。ふむ、楽しかったの、心が穏やかになると言うか、また来ようって気になるぜ。
・・・・寺じゃなくて宿屋とかにすればいいのに。でも始めの長い石段のせいでダメか?残念だ。
そのころ、衛宮邸。
「ニイさん大丈夫かな?迷惑かけてないかな?」
「シンゴが迷惑かけない訳ないでしょ?」
「いやいや、晋吾はちゃんとした子だから大丈夫さ。」
兄を心配する弟、日頃迷惑をかけられることが多い義姉(小)、何気に子供達を良く見ている義父。
「心配するな士郎。晋吾はあれでも、ちゃんとするところはちゃんとする。」
なだめる義姉(大)。いつもの衛宮家である。が、普段騒がしい奴がいないでの静かである。
「しかし、静かね。」
「そうだね。晋吾がいないと静かだよね。」
「今日は藤ねぇもいないしね。」
「どうして大河は今日いないんだ?」
「今日は仕事の用事で遅くなるので実家で食べると電話がありました。」
「へ~先生頑張ってるんだ。」
今年から高校の先生になった大河。彼女が先生になると言った時の晋吾と士郎のうろたえっぷりは見ものであった。
「俺、藤ねぇが担任とか絶対やだな。」
「そうかな?いい先生になると思うけどな僕は。」
親父の前ではいい子ちゃんにしてるからな。と士郎は思った。
「授業中に『士郎!お姉ちゃんの言うこと聞きなさい!!』とか言われそう・・・・」
「いいそうね。」
「いいそうだな。」
「え~そうかな~?」
士郎は知らない。そう遠くない未来、彼女が担任の先生になることを・・・・
とりあえず、ガンバレ士郎。
後書き
凛の稼ぎについて。現在の凛のお金の入り処は、身元引受人の言峰から生活費、時代遅れ気味の父の魔術式の特許料。そして遠坂の遺産。以上。宝石や魔術書を購入するため非常にカツカツである。中学生なのでバイトも出来ない。貧乏ここに極まり。衛宮家は少し裕福。死徒狩りの報酬は多く、アインツベルンの援助も復活した。
晋吾と一成。若者の過ごし方じゃない。晋吾はともかく、それでいいのか一成。
ページ上へ戻る