普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
239 そして…
前書き
ハリポタ編最終話です。
SIDE OTHER
1997年11月1日明朝。【日刊予言者新聞】より、号外としてイギリス魔法界全土へとんでもない朗報がもたらされた。
その朗報とは、簡潔に云えば〝≪闇の帝王≫、アニー・ポッターにより打倒〟であり、一面にでかでかと載ったその文と写真に〝予言者〟の読者達は大いに沸き立った。
しかも、良い報せと云うモノは意外にも続くのか、ついでとばかり掲載されていた〝魔法省の奪還〟〝ホグワーツ解放〟と云う記事も〝予言者〟の読者諸侯を大いに喜ばせた。
ヴォルデモート卿が死んで、ヴォルデモート卿に〝服従の呪い〟掛けられていたパイアス・シネックス以下多数名が意識を取り戻し、前もって〝どこからかのタレコミ〟があって推参したキングズリー・シャックルボルト、シリウス・ブラック、アーサー・ウィーズリー、アラスター・ムーディ、リーマス・ルーピン他により、魔法省を闊歩していた≪死喰い人≫達は、瞬く間に纏めてアズカバン送りとなった。
その魔法省の解放の後、一時間もしない内にマッド‐アイが〝ホグワーツ解放隊〟を結集し、掌握し直した〝煙突飛行ネットワーク〟にてホグワーツを急襲。結果は、上記の通り≪死喰い人≫を一人──セブルス・スネイプを除き、捕縛、或いは殺害に成功した。
真夜中の襲撃であったのが功を奏したのか、多少なりとも≪死喰い人≫から抵抗は受けたものの、その作戦時間自体は30分に満たないほどで、それは正しく電光石火であったと云う。
……ちなみに、セブルス・スネイプの件だが──彼は〝ホグワーツ解放隊〟がホグワーツを強襲した時点で姿を消していたらしい。……おそらくだが、きっと〝どこか〟から来た牝鹿の〝守護霊〟からのタレコミ〟でも在ったのだろう。
閑話休題。
〝ヴォルデモート卿死亡〟とな報には当然【ダイアゴン横丁】の人々も両手を挙げて喜んでいる。
……しかし、そんな喧騒にそぐわない雰囲気を纏った人物が〝とある建物〟──グリンゴッツのすぐ近くへと〝姿を現した〟。
あまり血色が良いとは言えない細腕に、血管が浮き出るほど力を籠めて本日の〝予言者〟を握りしめていてローブのフードを目深く被っている。〝姿を現した〟時、ローブから豊かな黒髪が姿を覗かせたので、その人物は女性であると推測出来る。
「……ちっ」
〝彼女〟──ベラトリックス・レストレンジは〝姿を現して〟、浮かれに浮かれている【ダイアゴン横丁】の雰囲気に舌打ちするも、その舌打ちは一秒もしない内に喧騒に掻き消される。……ベラトリックス・レストレンジは自称・≪≪闇の帝王≫の右腕≫であるので、本来なら〝ヴォルデモート卿討滅〟なんて荒唐無稽な情報ではまず動かない。
それなら、〝では、何故ベラトリックス・レストレンジが自ら動いているのか?〟──と云う、ご尤もな質問に行き着く事になるのだが、それは今日の号外の誌面の一面に載っていた〝≪闇の帝王≫、アニー・ポッターにより打倒〟と云う記事と一緒に掲載されている写真に起因している。
そもそもそれ以前に、なぜ今もこうして浮き足立っている民衆は〝予言者〟の情報だけでヴォルデモート卿の死亡を確信出来たのか。……その答えは単純明快。
〝その写真〟が〝アニー・ポッターがヴォルデモート卿の亡骸の横に立っている〟と云う──〝ヴォルデモート卿の死亡を決定的にするモノ〟であったからだ。
そこへ〝魔法省奪還〟やら〝ホグワーツ解放〟などと、歓ぶべきことが報せられたのだ。そうなれば、ベラトリックス・レストレンジとて〝ある事〟を確認するため、グリンゴッツを訪れる必要があった。
……〝敬愛しているわが君〟から預かっていた、〝わが君の命と同じくらい大切なモノ〟の安否を確認するためにグリンゴッツへ踏み入れる。
ここで少しだけ話が変わるが、〝この世界の闇の陣営〟にとって一番の〝邪魔〟は誰だったであろうか。……云うまでもなく、〝【ハリー・ポッター】シリーズの原作知識〟を持っているロナルド・ランスロー・ウィーズリーである。
〝原作知識〟と云うものは、酒に近いものだ。依存してしまったら正しく物事が理解出来なくなる猛毒になるだろうが、巧く扱えれば〝今〟の様に百薬の長ともなりうる。……その〝巧い扱い方〟の一つが、〝半確定未来を念頭に置いての多角的視点からの考察〟である。
……とどのつまり、何が言いたいかと云うと…
――“忘却せよ(オブリビエイト)”
ベラトリックス・レストレンジがグリンゴッツへ意気軒昂に入ろうとした瞬間、“透明マント”でその身を隠したロン・ウィーズリーによって、彼女は記憶の一切を喪ってしまう。……ロンからしたら、〝〝分霊箱〟を確認しに来る〟と、ベラトリックス・レストレンジの動向を予測する事なんて朝飯前であったのだ。
SIDE END
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー
「うーす、終わったぞー」
「お、もう終わったの?」
「……おかえりなさい」
【ダイアゴン横丁】にてベラトリックス・レストレンジに、本来ならネビルがやるべき事なのだが──〝お似合いの末路〟をくれてやってから昨晩から場所を移していて、〝明朝の忙しさ〟ゆえかまだ主人であるシリウスが帰っていないブラック邸に戻ってきてみればアニーから何ともない返事が──ハーマイオニーからは不機嫌さがまだ抜けていない返事が。
ハーマイオニーには〝お辞儀さん〟の決戦について隠し通しておけなくなり、すべて話す羽目になったのだ。……当然、俺とアニーはハーマイオニーに内緒で危ない真似をしたし、ハブられたと感じたハーマイオニーは俺とアニーに激怒した。
……今のハーマイオニーはこれでもまだ落ち着いている方で、俺とアニーが秘密にしていた事全てをぶっちゃけた当初は〝すわバーサーカーか?〟と思わされるくらい怒り猛ったが、幾分かハーマイオニーを発憤させてから謝罪する時の最終兵器である〝何でもする〟と云うおなじみの語句を言ったところで漸く落ち着いてくれた。
「あ、そういえば」
クリーチャーに淹れてもらったコーヒーを呑んでいると、アニーが何かを思い出した様に口にする。
「来てたよ、〝牝鹿の〝守護霊〟〟」
「何て?」
「〝〝言伝〟はホグワーツに在り〟──そして、〝これで君の母も浮かばれる〟だって」
「……そうか」
俺の知る限り、〝牝鹿〟を〝守護霊〟としているのはアニーともう一人しかいない。……つまり、〝もう一人〟──スネイプ先生は、今のところは少なくとも〝守護霊〟を送れるくらいには身の安全が保障されている状況にあるらしい。
……スネイプ先生は、〝お辞儀さん〟の信頼に15年以上も応えたフリをしつつ、〝お辞儀さん討滅〟と云うダンブルドア校長の本懐に見事応えた凄腕の蝙蝠だ。俺達が気を揉むまでも無くどこでも巧くやれるハズ。
(……後は──オリバンダーさんの事はどうにでもなるとして…)
オリバンダーさんは≪プロメテウス≫の召集で使用していた〝コイン〟でネビルなりを経由して、ドビーにお願いすれば救助は容易だろう。
そして、〝お辞儀さん〟の最右翼であったベラトリックス・レストレンジを無力化出来た今、〝他に見逃しは無いか?〟と自問自答してみる。
「あー…」
「どうしたのよ、いきなり?」
〝とりあえずは勝ったな〟と、そう確信した俺は、どれくらい振りになるだろうか──そこで漸く真に脱力する事が出来た。
「……なんか、やっと肩の荷が降りた気分だと思ってな」
「……あー、それあるかも」
「……ええ、確かにそうね」
クリーチャーのコーヒーのおかげなのか、少し怒りが抜けてきたハーマイオニーの問いに返せば、二人とも俺に追従するように安堵の息を洩らす。……漸く〝アニー・ポッター〟を〝予言〟と云う不可逆の軛から解放する事が出来たのだ。その達成感や喜びは一入だった。
ふと、窓の外を見れば【グリモールド・プレイス12番地】に燦然と朝日が降り注いでいて、〝明けない夜なんて無い〟のだと──至極当たり前な事を教えてくれている様であった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
後に通称される〝第二次魔法界大戦〟の終戦から一年以上が経過している1999年の8月1日。1998年9月1日にホグワーツへ復学した俺達は無事【ホグワーツ魔法魔術学校】を同期からしたら一年遅れでだが卒業出来た。
ホグワーツを卒業して一月程度しか経過していないが、俺、アニー、ハーマイオニーの3人はイギリス某所の上空で箒に跨がっていた。
いつぞやダンブルドア校長へ説明した通り、〝逆転時計〟で過去に飛んで、過去の俺に〝未来の知識〟を渡しに行く──フリをしなければならない。
……ちなみにアニーの〝知識〟はホグワーツを卒業した時点で解放してあり、〝主要の死亡メンバー〟がほとんど生存していると云う──おおよそ完全無欠なハッピーエンドに、アニーが〝あは、あはは、あはははは。なぁに、これぇ?〟と、乾いた笑みを浮かべていたのは記憶に新しい。
閑話休題。
スネイプ先生からの言伝通り、ホグワーツに戻ってダンブルドア校長からの言伝を〝呼び寄せ〟てみれば、そこには一行で全て書ききれそうなくらいの数列であったが、直ぐにそれが座標である事が判明。
そしてその地点に行ってみれば、そこには〝逆転時計〟が。……要は、その〝逆転時計〟は〝辻褄合わせをしろ〟と云う、ダンブルドア校長からのお達しなのだ。
……尤も、実際には俺の〝知識〟は〝未来知識〟と云うよりは〝原作知識〟なのだからそんな昔に飛ぶ必要はなく、〝1時間前〟にでも飛んで、どこか適当なところで服を着替え、それから二人に合流すれば良いだけの簡単な仕事だ。
「じゃあ11年後に」
俺はそうアニーとハーマイオニーに言い残し、〝1時間前〟に飛んだ。
SIDE END
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