おぢばにおかえり
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75部分:第十二話 制服その一
第十二話 制服その一
制服
天理高校の制服はあまり派手ではありません。男の子は黒の詰襟で女の子は濃紺のブレザーとスカートです。首のところのリボンとベストが特徴です。
「そういえばこの前ね」
「何?」
制服の話をクラスメイトとしていると急にその娘が言ってきました。
「長い金髪でベストの男の人見たわ」
「外国の人?」
「そうみたい。手袋してね、かなり格好よかったわ」
「ふうん」
おぢばには外国の人もよく帰って来られます。白人の人だけではなくて黒人の方もおられます。一番多いのは多分韓国の方だと思います。奥華大教会もアメリカに教会があります。それで詰所には日系アメリカ人の方もおられます。
「何をしている人かしら」
「俳優さんじゃないでしょうね」
何となくそう思いました。
「多分だけれど」
「どうしてそう思えるの?」
「その人って背が高くなかった?」
「ええ」
私の今の問いに答えてきました。
「結構ね。それに眼光が鋭かったし」
「それで筋肉質よね」
「よくわかるわね」
彼女はまた私の言葉に頷いてきました。
「その通りだけれど。それがどうかしたの?」
「その人にあまり近付かない方がいいわよ」
私はそこまで聞いて彼女に忠告しました。
「どうして?」
「その人そっちの筋の人だから」
それを忠告しました。
「アメリカの方の。いいわね」
「そっちの筋の人なんだ」
「間違いないわ」
その外見を聞いてわかりました。かなり危ないです。
「その人はね」
「よくわかるわね、そんなこと」
「っていうか龍虎とか餓狼とか」
私はそれを彼女に言います。
「そんな格好じゃない。確実に危ないわ」
「そうなんだ」
「どうしておぢばに帰っているのかわからないけれど。周りに黒い服の男の人いたでしょ」
「ええ、二人よ」
こうも言ってきます。話はどんどん怖い方向にいっています。
「それもわかっているのね」
「そのうちその人ビルから落ちたりするけれど何度も蘇るから」
「しぶとい人なのね」
「不死身かも。それにしても」
私はその人のベストについて考えました。
「ベストってのはお洒落としてはポイント高いわね」
「そうよね」
彼女も私の言葉に頷いてくれました。
「やっぱりね。ベストって決まるのよね」
「衣替えの間にも着られるしね」
実はこれも結構高ポイントです。
「意外とこれ重要よね」
「そうそう」
「その間ってかなり寒いしね」
「そういうこと」
寒かったり暑かったりしますから。それでベストが大事になります。私も結構寒いのが苦手なんでいつも重宝しています。お洒落にもなるし。
「あと私好きなのは」
「何?」
「このリボンよ」
にこりと笑って彼女に言います。青い紐状のリボンです。私はこれが好きなんです。
「これ、よくない?」
「よくないっていうか可愛い?」
彼女もまた私の言葉に頷いてくれました。
「ワンポイントでね」
「そうよね。可愛く見えるような」
「スカートの丈が長くないと駄目だけれどね」
「別にそれは」
私はそれにはあまり賛成できませんでした。私にしてはあまり脚は見せたくないんで。よく皆から奇麗な脚をしてるって言ってもらいますけれど。
「あまりね」
「別にいいのね」
「スカートはロングでもいいわよ」
私ははっきり言いました。
「くるぶしまであっても別にね」
「それはかえって駄目でしょ」
何か私の言葉に突っ込んでくれました。
「大昔の不良じゃない、それって」
「二十年か三十年前の不良じゃないの、それ」
そういえば古本屋の漫画で見たことがありました。超長ランの不良とか。こんなの知ってる私もかなりのものだと思いますけれど。
「それは幾ら何でも」
「そうでしょ?だからそれは駄目よ」
こう彼女に言われました。
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