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おぢばにおかえり

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73部分:第十一話 おてふりその六


第十一話 おてふりその六

「それのせいかしら」
「だと思うけれどそれだけじゃないんじゃないの?
 彼女はまた私に言ってきました。
「おぢばにいたら奇麗になるとか?」
「そうかも」
 何故かそれに納得できました。
「実際に奇麗な人多いしね」
「そうよね。おみち通っている人もね」
 彼女はまた言いました。
「おばあさんでも奇麗な人多いじゃない」
「あっ、それわかるわ」
 ここで彼女の言葉に頷くことができました。
「わかるって?」
「あれなのよ。うちの前大教会長さんのお姉さんだけれどね」
「奥華のね」
「そうなの。今はある教会の会長さんの奥さんなんだけれど」
「その人が奇麗とか?」
「そうなのよ」
 それを彼女に言います。
「七十近いのにとても。優しい人だし」
「優しいからかしら」
 彼女はここでまたふとした感じで言ってきました。
「やっぱり」
「優しさとかってやっぱり顔に出るのね」
「歳を重ねればそうらしいわよ」
 今度は私が教えられます。
「性格が顔に出て来るんだって」
「ふうん」
「だからいい生き方をしている人はね」
「奇麗な顔になるのね」
「勿論例外もあるけれどね」
 それはわかります。顔が怖くても優しい人はいますから。そりゃあっちの系列の方々になると顔も怖いけれど性格も怖くなりますけれど。
「そうなるものよ」
「じゃあいい生き方をするといいのね」
「そういうこと。まあそれにはおてふりもいいと思うわ」
「そうね」
 これはわかりました。それもよく。
「おてふりってやっていると何か落ち着くのよね」
「そうなのよね」
 彼女も私の言葉に頷いてくれました。
「少しずつね。けれど確実にね」
「覚えるのが大変だって言われているけれどね」
 それは私には実感がないんであれですが。どうしても家が教会なんで子供の頃からしていましたから。それでもそうじゃない人からよくこう言われます。
「そういうものよね」
「うんうん」
「けれどね」
 ここでまた私は言いました。
「ついつい油断してね。姿勢が」
「それなのよ」
 またそちらに話がいきました。
「注意しないとね」
「そういうこと」
 何かおてふりもいいですけれどそれがどうにも気になるのでした。それを寮に帰って長池先輩にお話すると先輩は笑ってこう言ってくれました。
「そうなのよね、だからおてふりの時間って」
「油断できないんですね」
「そういうこと。私もそうだったのよ」
「先輩もですか」
「皆大体そうよ」
 先輩はこう私に言ってくれました。
「ついつい気が抜けてね」
「なっちゃうんですか」
「ほら、寮じゃあれでしょ」
 ここでも寮の話が出ました。
「皆ラフになるから」
「女の子ばかりですからね」
「人間ってそうなっちゃうのよ」
 こう言って笑う先輩でした。
「男の子だけでもそうみたいだし」
「そうなんですかね」
「向こう側見てみればわかるわ」
 授業の時の向こう側というと男の子達です。こっちをチラチラと見てくる。
「かなり砕けているわよ」
「向こう側もですか」
「けれど向こうはズボンだからね」
 それがかなり大きいと思います。ズボンとスカートですとそれこそ天と地程の差があります。
「それが全然違うから」
「ですね。何かずるいですよ」
「仕方ないわよ、それは」
 私のずるいって言葉にくすりと笑う先輩でした。
 
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